植物ホルモンについて
植物ホルモンは組織培養の研究では必須の試薬といえます。根や葉の分化や成長に無くてはならないものですし、この物質の発見によって組織培養の研究が進んできたわけです。また、通常の栽培下でも、挿し木時の根の発育を促すオーキシン系の発根促進剤や脇芽誘発のベンジルアデニン製剤、種子の発芽を促すジベレリンがよく使われているのはご存じのとおりです。
ところで、食虫植物はドロセラのように葉挿しや根伏せで増殖できるものも多く、ホルモン無しでも葉組織や根の組織から増殖ができるわけで、組織培養には打ってつけの植物でしょう。蘭のように茎頂培養のためにごく小さな成長点を切り取るいわゆるメリクロンの手法をおこなわなくても良く、殺菌した葉や根を培地に置くだけで増殖してしまうのです。
まあ、それだけ下等な植物といえなくもありませんが、増殖に便利なことは確かです。例えばドロセラの組織培養や無菌播種を考えると植物ホルモンの必要はありません。もちろん、ネペンテスのように葉挿しや根伏せでは増殖できない種類も多く、これらは培地に植物ホルモンを加えた方が生育が良いということもあります。また、カルスや不定芽を作って大量増殖させようとすると、ドロセラといえどもやはり植物ホルモンのお世話にならなければならないのです。
さて、前置きが長くなりましたが、植物ホルモンは以下のようなものがあります。
1 オーキシン(Auxin)
オーキシンとは最初に発見された植物ホルモンであるインドール酢酸(IAA)およびこれと同等の生理作用を引き起こす化合物の総称で、細胞の伸長、発根促進、離層形成の遅延、単為結実の促進などを引き起こします。科学的に合成されたものも含め下記のような種類があります。
インドール酢酸
IAA
インドール酪酸
IBA
ナフタレン酢酸
NAA
2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 2,4-D
IAAは分解しやすいので通常使用されません。他の化合物は組織培養ではカルスの形成や維持、発根用として良く使用されます。
また、通常の栽培においても挿し木の発根促進用としてオキシベロン(IBA)、ルートン(NAA)がよく使用されます。
2 サイトカイニン(Cytokinin)
植物ホルモンのカイネチンおよびこれと同様の生理作用を引き起こす化合物の総称で、側芽の成長促進、種子の発芽と休眠打破、細胞分裂促進、細胞肥大、老化と離層形成の抑制などを引き起こします。科学的に合成されたものも含め下記のような種類があります。
カイネチン
ゼアチン
ベンジルアデニン
化学合成したベンジルアデニンが効果も高く安価なので最もよく使われます。組織培養では再分化用のホルモンとして良く使用されます。普通の栽培でも萌芽促進用としてビーエー液剤、塗布用ビーエー、塗布用ベアニン等が市販されています。また、着果効果や開花促進用としても使用しているようです。
3 ジベレリン
4 その他
アブシジン酸(発育阻害、休眠)、エチレン(休眠打破、開花促進、成熟促進)、ブラシノステロイド、フロリゲン(花芽誘因)等のホルモンがありますが、組織培養や食虫の栽培で使用したという話は殆ど聞きません。エチレンは果実から発散されるということで有名で、
