◆企画展「四季の移ろい〜人と人物」開催


 平成22年8月2日(月)から8月30日(月)まで、大広間下の間展示室に於いて、企画展「四季の移ろい〜人と人物」を開催しました。

 料亭「菜香亭」が所蔵していた掛け軸のうち、四季をよく表している風景画と人物画を一同に会した展覧会です。
 古いものでは江戸時代元禄期頃のものから、昭和初期のものまで、全部で14点の作品を展示しました。うち、初公開作品も4点ありました。
 料亭主人が四季に応じて掛けていたお軸の数々、夏の涼しげな画もあり、来場者は、避暑に涼しい山口市菜香亭に来られてゆっくりと見られていました。

◎展示品一覧
東桃園「旭日昇天図」
大庭学僊「瀧図」
近藤清石「蓮図」
神保朋世・伊藤晴雨他「七夕美人図」
関根雲停「旭日桃鶴図」
草雲「鼓を持つ女図」
鷹羽洞a「猩々図」
長井一禾「烏図」
森直愛「薔薇図」
山縣伊三郎「蘭花図」双幅
山縣鶴江「鮎図」双幅
横山晴暉「明月図」
李輝仁「蟹蝦図」
作者不詳「羽根つき図」

◎企画展「四季の移ろい 人と風物」
 日本人は古来より季節の移り変わりにはきわめて敏感でした。こうした四季の移ろいを主題する絵画もまた、日本には古くから存在したといえます。四季そのものを描く四季絵(しきえ)、あるいは十二カ月の月ごとの風物を描く月次絵(つきなみえ)などはその典型といえるでしょう。また歴史的にその名を知られる名所旧蹟を描く名所絵(めいしょえ)も、そうした歴史的景観や情景を伝える目的があるものの、そこにはやはり強く季節というものが意識されていて、時には描かれる名所の正確な地誌的イメージよりも、そこに象徴される季節感そのものが主題となってしまっている名所絵も少なくないように思えます。こうした四季や名所を主題とする絵画は、もともとは日本の絵画が多く影響を受けた中国絵画にその源泉があって、日本の花鳥画、山水画、人物画など、すべてのジャンルの絵画もまたその源流は中国に求めることができるといえるのです。しかし、中国絵画がより直截に主題を花鳥や人物や山水に託すのに対して、日本の絵画はどこかしら、それら主題をさりげなく、あるいはあからさまにならないように画面の一隅や、目立たぬような位置などに意識的に隠してしまう傾向があるように思えるのです。
 このたびの展示作品のなかにも、たとえば羽根つきをする娘、七夕飾りをながめる女性などを描いても、そうした季節を感じさせる行事よりも、そこに目立つ若い娘の華やかさや、縁台で涼む女性の薫るような色気に主題が隠されるような形をとるようにみえるものもあります。また瀧を描いても、その流れ落ちる水のイメージが夏の涼しさを呼び、冬の枯木よりもそこに止まる烏の擬人化した表情に観者の関心が向くように描かれたり、鮎を描いても、その傍らに咲く桜や、風にゆらぐ柳に、より風情が感じ取られるというように、ダブルイメージやトリプルイメージのなかに重層的に季節にまつわるイメージが配されて、主題を目立たなくしている絵画もあります。こうしたある種、日本美術特有のさりげない表現を楽しみながら、ぜひこのたびの展示作品のなかに日本絵画における四季の移ろいの表現の多様性を感じ取っていただければと思います。
解説文執筆および監修:菊屋吉生(山口大学教授)



 また、玄関には今年も大内ちょうちんを飾っています。
 久しぶりに故郷に帰省される方々のためにもお盆まで飾っていますので、併せてご覧下さい。