万葉集 巻第8

#[番号]08/1418
#[題詞]春雜歌 / 志貴皇子懽御歌一首
#[原文]石激 垂見之上乃 左和良妣乃 毛要出春尓 成来鴨
#[訓読]石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも
#[仮名],いはばしる,たるみのうへの,さわらびの,もえいづるはるに,なりにけるかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 激 [類] 灑
#[鄣W],春雑歌,作者:志貴皇子,喜び,植物
#[訓異]
#[大意]岩の上を走るように流れる瀧のほとりの早蕨の芽が出てくる春になったことである。
#{語釈]
#[説明]
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#[番号]08/1419
#[題詞]鏡王女歌一首
#[原文]神奈備乃 伊波瀬乃社之 喚子鳥 痛莫鳴 吾戀益
#[訓読]神なびの石瀬の社の呼子鳥いたくな鳴きそ我が恋まさる
#[仮名],かむなびの,いはせのもりの,よぶこどり,いたくななきそ,あがこひまさる
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:鏡王女,恋情,慕情,奈良,斑鳩町,地名,動物,枕詞
#[訓異]
#[大意]紙奈備の石瀬の杜の呼子鳥よ。ひどくは鳴くなよ。自分は恋い思うことがまさってくるから
#{語釈]
鏡王女 額田王の姉か。02/0092,0093 04/0489
石瀬の社 奈良県生駒郡斑鳩町 奈良県生駒郡三郷町立野 未詳

#[説明]
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#[番号]08/1420
#[題詞]駿河釆女歌一首
#[原文]沫雪香 薄太礼尓零登 見左右二 流倍散波 何物之花其毛
#[訓読]沫雪かはだれに降ると見るまでに流らへ散るは何の花ぞも
#[仮名],あわゆきか,はだれにふると,みるまでに,ながらへちるは,なにのはなぞも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:駿河釆女,雪
#[訓異]
#[大意]沫雪がはだれに降ると見るまでに流れてくるのは何の花なのだろうか。
#{語釈]
駿河釆女 駿河出身の采女

#[説明]
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#[番号]08/1421
#[題詞]尾張連歌二首 [名闕]
#[原文],春山之 開乃乎為<里>尓 春菜採 妹之白紐 見九四与四門
#[訓読]春山の咲きのををりに春菜摘む妹が白紐見らくしよしも
#[仮名],はるやまの,さきのををりに,はるなつむ,いもがしらひも,みらくしよしも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 黒 -> 里 [万葉考]
#[鄣W],春雑歌,作者:尾張連,野遊び,菜摘み,恋情,妻問い
#[訓異]
#[大意]春の山の花が咲きたわんでいる中で春菜を摘んでいる妹の白紐を見るのはよいことだ
#{語釈]
尾張連  未詳

#[説明]
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#[番号]08/1422
#[題詞](尾張連歌二首 [名闕])
#[原文]打<靡> 春来良之 山際 遠木末乃 開徃見者
#[訓読]うち靡く春来るらし山の際の遠き木末の咲きゆく見れば
#[仮名],うちなびく,はるきたるらし,やまのまの,とほきこぬれの,さきゆくみれば
#[左注]
#[校異]麾 -> 靡 [類][紀][細]
#[鄣W],春雑歌,作者:尾張連,花,山遊び,野遊び,叙景
#[訓異]
#[大意]みんな春風に靡く春がやって来たらしい。山の間の遠い梢に花が咲いて来るのを見ると
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1423
#[題詞]中納言阿倍廣庭卿歌一首
#[原文]去年春 伊許自而殖之 吾屋外之 若樹梅者 花咲尓家里
#[訓読]去年の春いこじて植ゑし我がやどの若木の梅は花咲きにけり
#[仮名],こぞのはる,いこじてうゑし,わがやどの,わかきのうめは,はなさきにけり
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:阿倍広庭,植物
#[訓異]
#[大意]去年の春に根こそぎ植えた我が家の若木の梅は花が咲いたことだ
#{語釈]
中納言阿倍廣庭 03/0302 右大臣御主人の子 神亀四年中納言。天平四年薨去。七四歳

#[説明]
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#[番号]08/1424
#[題詞]山部宿祢赤人歌四首
#[原文]春野尓 須美礼採尓等 来師吾曽 野乎奈都可之美 一夜宿二来
#[訓読]春の野にすみれ摘みにと来し我れぞ野をなつかしみ一夜寝にける
#[仮名],はるののに,すみれつみにと,こしわれぞ,のをなつかしみ,ひとよねにける
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,風流,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]春の野に菫を摘みにとやって来た自分なのに。野に心ひかれて一番寝たことだ。
#{語釈]
#[説明]
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#[番号]08/1425
#[題詞](山部宿祢赤人歌四首)
#[原文]足比奇乃 山櫻花 日並而 如是開有者 甚戀目夜裳
#[訓読]あしひきの山桜花日並べてかく咲きたらばいたく恋ひめやも
#[仮名],あしひきの,やまさくらばな,ひならべて,かくさきたらば,いたくこひめやも
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,比喩,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]あしひきの山桜花が日数長く咲いたならばひどく恋い思うことがあろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1426
#[題詞](山部宿祢赤人歌四首)
#[原文]吾勢子尓 令見常念之 梅花 其十方不所見 雪乃零有者
#[訓読]我が背子に見せむと思ひし梅の花それとも見えず雪の降れれば
#[仮名],わがせこに,みせむとおもひし,うめのはな,それともみえず,ゆきのふれれば
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,植物
#[訓異]
#[大意]あの人見せようと思っていた梅の花はそれとも見えない雪が降っているので
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1427
#[題詞](山部宿祢赤人歌四首)
#[原文]従明日者 春菜将採跡 標之野尓 昨日毛今日<母> 雪波布利管
#[訓読]明日よりは春菜摘まむと標めし野に昨日も今日も雪は降りつつ
#[仮名],あすよりは,はるなつまむと,しめしのに,きのふもけふも,ゆきはふりつつ
#[左注]
#[校異]毛 -> 母 [類][紀]
#[鄣W],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,比喩
#[訓異]
#[大意]明日からは春菜を摘もうと標をしておいた野に昨日も今日も雪は降り続いていて
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1428
#[題詞]草香山歌一首
#[原文]忍照 難波乎過而 打靡 草香乃山乎 暮晩尓 吾越来者 山毛世尓 咲有馬酔木乃 不悪 君乎何時 徃而早将見
#[訓読]おしてる 難波を過ぎて うち靡く 草香の山を 夕暮れに 我が越え来れば 山も狭に 咲ける馬酔木の 悪しからぬ 君をいつしか 行きて早見む
#[仮名],おしてる,なにはをすぎて,うちなびく,くさかのやまを,ゆふぐれに,わがこえくれば,やまもせに,さけるあしびの,あしからぬ,きみをいつしか,ゆきてはやみむ
#[左注]右一首依作者微不顕名字
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,東大阪市日下町,生駒山,羈旅,望郷,恋情,地名,植物,枕詞
#[訓異]
#[大意]おし照る難波を過ぎて、うち靡く草香の山を夕暮れに自分が越えてくると、山も狭いばかりに咲いている馬酔木ではないが嫌いではないあなたをいつになったら行って早く会えようか
#{語釈]
草香山 大阪府東大阪市日下町生駒山西部

#[説明]
旅行をしている男の歌。女の立場で恋愛歌風に歌う

#[関連論文]


#[番号]08/1429
#[題詞]櫻花歌一首[并短歌]
#[原文]𡢳嬬等之 頭挿乃多米尓 遊士之 蘰之多米等 敷座流 國乃波多弖尓 開尓鶏類 櫻花能 丹穂日波母安奈<尓>
#[訓読]娘子らが かざしのために 風流士の かづらのためと 敷きませる 国のはたてに 咲きにける 桜の花の にほひはもあなに
#[仮名],をとめらが,かざしのために,みやびをの,かづらのためと,しきませる,くにのはたてに,さきにける,さくらのはなの,にほひはもあなに
#[左注](右二首若宮年魚麻呂誦之)
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 何 -> 尓 [類][紀][温]
#[鄣W],春雑歌,若宮年魚麻呂,伝誦,予祝,植物
#[訓異]
#[大意]あの娘子が頭にかざすために、風流な男が頭に着けるためと大君のお治めになる国ほはての方まで咲き照っている桜の花の美しさもまあ
#{語釈]
はたて 端手 はしの方 周辺
あなに 感動詞 ああ  まあ

#[説明]
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#[番号]08/1430
#[題詞](櫻花歌一首[并短歌])反歌
#[原文]去年之春 相有之君尓 戀尓手師 櫻花者 迎来良之母
#[訓読]去年の春逢へりし君に恋ひにてし桜の花は迎へけらしも
#[仮名],こぞのはる,あへりしきみに,こひにてし,さくらのはなは,むかへけらしも
#[左注]右二首若宮年魚麻呂誦之
#[校異]歌 [西] 謌
#[鄣W],春雑歌,若宮年魚麻呂,伝誦,恋愛,予祝,植物
#[訓異]
#[大意]去年の春会ったあなたに恋してしまった桜の花は再びあなたを迎えたことであるらしい
#{語釈]
#[説明]
桜を擬人化して自分たちを迎えるためにこんなにも美しく花が咲いたと言ったもの

#[関連論文]


#[番号]08/1431
#[題詞]山部宿祢赤人歌一首
#[原文]百濟野乃 芽古枝尓 待春跡 居之鴬 鳴尓鶏鵡鴨
#[訓読]百済野の萩の古枝に春待つと居りし鴬鳴きにけむかも
#[仮名],くだらのの,はぎのふるえに,はるまつと,をりしうぐひす,なきにけむかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌
#[鄣W],春雑歌,作者:山部赤人,奈良県,広陵町,地名,植物,動物
#[訓異]
#[大意]百済野の桜の古枝に春を待つとしてとまっていた鴬は鳴いたことだろうか
#{語釈]
百済野 奈良県北葛城郡広陵町百済 奈良県橿原市高殿

#[説明]
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#[番号]08/1432
#[題詞]大伴坂上郎女柳歌二首
#[原文]吾背兒我 見良牟佐保道乃 青柳乎 手折而谷裳 見<縁>欲得
#[訓読]我が背子が見らむ佐保道の青柳を手折りてだにも見むよしもがも
#[仮名],わがせこが,みらむさほぢの,あをやぎを,たをりてだにも,みむよしもがも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 綵 -> 縁 [代匠記初稿本]
#[鄣W],春雑歌,作者:坂上郎女,奈良,佐保,望郷,恋情,羈旅,植物,地名
#[訓異]
#[大意]あの人が見たであろう佐保道の青柳を手折ってだけでも見る手だてがあればなあ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1433
#[題詞](大伴坂上郎女柳歌二首)
#[原文]打上 佐保能河原之 青柳者 今者春部登 成尓鶏類鴨
#[訓読]うち上る佐保の川原の青柳は今は春へとなりにけるかも
#[仮名],うちのぼる,さほのかはらの,あをやぎは,いまははるへと,なりにけるかも
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],春雑歌,作者:坂上郎女,奈良,佐保,地名,植物
#[訓異]
#[大意]うち上る佐保の川原の青柳は今は春となったことである
#{語釈]
#[説明]
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#[番号]08/1434
#[題詞]大伴宿祢三林梅歌一首
#[原文]霜雪毛 未過者 不思尓 春日里尓 梅花見都
#[訓読]霜雪もいまだ過ぎねば思はぬに春日の里に梅の花見つ
#[仮名],しもゆきも,いまだすぎねば,おもはぬに,かすがのさとに,うめのはなみつ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:大伴三林,奈良,春日,地名,植物
#[訓異]
#[大意]霜や雪の季節もまだ過ぎていないのに、思わないことに春日の里で梅の花を見たことだ
#{語釈]
大伴宿祢三林 伝未詳。三依の誤りか。

#[説明]
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#[番号]08/1435
#[題詞]厚見王歌一首
#[原文]河津鳴 甘南備河尓 陰所見<而> 今香開良武 山振乃花
#[訓読]かはづ鳴く神奈備川に影見えて今か咲くらむ山吹の花
#[仮名],かはづなく,かむなびかはに,かげみえて,いまかさくらむ,やまぶきのはな
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 而 [類][紀]
#[鄣W],春雑歌,作者:厚見王,飛鳥川,竜田川,地名,植物
#[訓異]
#[大意]蛙が鳴く神奈備川に姿が見えて今頃咲いているのだろうか山吹の花は
#{語釈]
厚見王 厚見王  系譜未詳  天平感宝元年 無位より従五位下 天平宝字元年従五位甘南備河 03/0324 4/0668 08/1456
山吹  万葉集他に17例

#[説明]
春の季節になって、神奈備川の山吹を思い起こしている

#[関連論文]


#[番号]08/1436
#[題詞]大伴宿祢村上梅歌二首
#[原文]含有常 言之梅我枝 今旦零四 沫雪二相而 将開可聞
#[訓読]含めりと言ひし梅が枝今朝降りし沫雪にあひて咲きぬらむかも
#[仮名],ふふめりと,いひしうめがえ,けさふりし,あわゆきにあひて,さきぬらむかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:大伴村上,植物
#[訓異]
#[大意]つぼみだと言っていた梅の枝は今朝降った沫雪と競争して咲いたことである
#{語釈]
大伴宿祢村上 天平勝宝6年民部少丞、宝亀2年従5位下

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1437
#[題詞](大伴宿祢村上梅歌二首)
#[原文]霞立 春日之里 梅花 山下風尓 落許須莫湯目
#[訓読]霞立つ春日の里の梅の花山のあらしに散りこすなゆめ
#[仮名],かすみたつ,かすがのさとの,うめのはな,やまのあらしに,ちりこすなゆめ
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],春雑歌,作者:大伴村上,奈良,春日,地名,植物
#[訓異]
#[大意]霞み立つ春日の里の梅の花よ。山の嵐に散るなよ。決して。
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1438
#[題詞]大伴宿祢駿河丸歌一首
#[原文]霞立 春日里之 梅花 波奈尓将問常 吾念奈久尓
#[訓読]霞立つ春日の里の梅の花花に問はむと我が思はなくに
#[仮名],かすみたつ,かすがのさとの,うめのはな,はなにとはむと,わがおもはなくに
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],春雑歌,作者:大伴駿河麻呂,奈良,春日,地名,植物
#[訓異]
#[大意]霞み立つ春日の里の梅の花。花に尋ねようと自分は思ってもいないのに
#{語釈]
大伴宿祢駿河丸  駿河麻呂 03/0400  大伴御行の孫 天平15年従5位下。宝亀7年参議卒。坂上二嬢の夫。
花に問はむと やがては散っていく花に期待しようとは思わない。実になることを思っているの意。

#[説明]
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#[番号]08/1439
#[題詞]中臣朝臣武良自歌一首
#[原文]時者今者 春尓成跡 三雪零 遠山邊尓 霞多奈婢久
#[訓読]時は今は春になりぬとみ雪降る遠山の辺に霞たなびく
#[仮名],ときはいまは,はるになりぬと,みゆきふる,とほやまのへに,かすみたなびく
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:中臣武良自,季節
#[訓異]
#[大意]季節は今は春となった。み雪降るかなたの山のあたりに霞みがたなびいている
#{語釈]
中臣朝臣武良自 伝未詳。中臣宅守の従兄弟か。

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1440
#[題詞]河邊朝臣東人歌一首
#[原文]春雨乃 敷布零尓 高圓 山能櫻者 何如有良武
#[訓読]春雨のしくしく降るに高円の山の桜はいかにかあるらむ
#[仮名],はるさめの,しくしくふるに,たかまとの,やまのさくらは,いかにかあるらむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:河辺東人,高円山,奈良,地名,植物
#[訓異]
#[大意]春雨がしとしとと降る中で高円の山の桜はどのようになっているのだろうか
#{語釈]
河邊朝臣東人  06/0978 神護景雲元年従5位下

#[説明]
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#[番号]08/1441
#[題詞]大伴宿祢家持鴬歌一首
#[原文]打霧之 雪者零乍 然為我二 吾宅乃苑尓 鴬鳴裳
#[訓読]うち霧らひ雪は降りつつしかすがに我家の苑に鴬鳴くも
#[仮名],うちきらし,ゆきはふりつつ,しかすがに,わぎへのそのに,うぐひすなくも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:大伴家持,動物,季節
#[訓異]
#[大意]霧がかかって雪は降っている。そうではあるが自分の家の庭園に鴬が鳴いていることだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1442
#[題詞]大蔵少輔丹比屋主真人歌一首
#[原文]難波邊尓 人之行礼波 後居而 春菜採兒乎 見之悲也
#[訓読]難波辺に人の行ければ後れ居て春菜摘む子を見るが悲しさ
#[仮名],なにはへに,ひとのゆければ,おくれゐて,はるなつむこを,みるがかなしさ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:丹比屋主,菜摘み,大阪,恋情,地名
#[訓異]
#[大意]難波のあたりにあの人が行ったので後に残っていて春菜を摘むあの子を見ると愛しいことだ
#{語釈]
大蔵少輔丹比屋主真人 天平九年従五位下。天平宝字四年従四位下で卒。

#[説明]
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#[番号]08/1443
#[題詞]丹比真人乙麻呂歌一首 [屋主真人之第二子也]
#[原文]霞立 野上乃方尓 行之可波 鴬鳴都 春尓成良思
#[訓読]霞立つ野の上の方に行きしかば鴬鳴きつ春になるらし
#[仮名],かすみたつ,ののへのかたに,ゆきしかば,うぐひすなきつ,はるになるらし
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:丹比乙麻呂,野遊び,動物,季節
#[訓異]
#[大意]霞みが立つ野のほとりを行ったら鴬が鳴いた。春になったらしい
#{語釈]
丹比真人乙麻呂 天平神護1年 従5位下

#[説明]
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#[番号]08/1444
#[題詞]高田女王歌一首 [高安之女也]
#[原文]山振之 咲有野邊乃 都保須美礼 此春之雨尓 盛奈里鶏利
#[訓読]山吹の咲きたる野辺のつほすみれこの春の雨に盛りなりけり
#[仮名],やまぶきの,さきたるのへの,つほすみれ,このはるのあめに,さかりなりけり
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:高田女王,大原高安,高安王,植物,叙景
#[訓異]
#[大意]山吹の咲いている野辺のつぼすみれは、この春の雨に真っ盛りなことだ
#{語釈]
高田女王 04/0537
高安 高安王 04/0577 長皇子の孫。537、844 天平11年大原真人高安

#[説明]
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#[番号]08/1445
#[題詞]大伴坂上郎女歌一首
#[原文]風交 雪者雖零 實尓不成 吾宅之梅乎 花尓令落莫
#[訓読]風交り雪は降るとも実にならぬ我家の梅を花に散らすな
#[仮名],かぜまじり,ゆきはふるとも,みにならぬ,わぎへのうめを,はなにちらすな
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:坂上郎女,比喩,植物
#[訓異]
#[大意]風に交じって雪は降るとしても実にはならない我が家の梅を花のまま散らすなよ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1446
#[題詞]大伴宿祢家持<春>雉歌一首
#[原文]春野尓 安佐留雉乃 妻戀尓 己我當乎 人尓令知管
#[訓読]春の野にあさる雉の妻恋ひにおのがあたりを人に知れつつ
#[仮名],はるののに,あさるきぎしの,つまごひに,おのがあたりを,ひとにしれつつ
#[左注]
#[校異]養 -> 春 [西(訂正)][紀][温][矢] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:大伴家持,動物
#[訓異]
#[大意]春の野に餌を取っている雉は妻を恋い思って自分のいるあたりを人に知られ続けて
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1447
#[題詞]大伴坂上郎女歌一首
#[原文]尋常 聞者苦寸 喚子鳥 音奈都炊 時庭成奴
#[訓読]世の常に聞けば苦しき呼子鳥声なつかしき時にはなりぬ
#[仮名],よのつねに,きけばくるしき,よぶこどり,こゑなつかしき,ときにはなりぬ
#[左注]右一首天平四年三月一日佐保宅作
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春雑歌,作者:坂上郎女,動物,季節
#[訓異]
#[大意]いつもだったら聞くと心苦しい呼子鳥よ。声に心引かれる時になったことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1448
#[題詞]春相聞 / 大伴宿祢家持贈坂上家之大嬢歌一首
#[原文]吾屋外尓 蒔之瞿麥 何時毛 花尓咲奈武 名蘇經乍見武
#[訓読]我がやどに蒔きしなでしこいつしかも花に咲きなむなそへつつ見む
#[仮名],わがやどに,まきしなでしこ,いつしかも,はなにさきなむ,なそへつつみむ
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],春相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]自分の家に蒔いておいた撫子はいつになったら花に咲くのだろうか。咲いたらあなたになぞえて見ようものなのに
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1449
#[題詞]大伴田村家<之>大嬢與妹坂上大嬢歌一首
#[原文]茅花抜 淺茅之原乃 都保須美礼 今盛有 吾戀苦波
#[訓読]茅花抜く浅茅が原のつほすみれ今盛りなり我が恋ふらくは
#[仮名],つばなぬく,あさぢがはらの,つほすみれ,いまさかりなり,あがこふらくは
#[左注]
#[校異]毛 -> 之 [代匠記初稿本] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春相聞,作者:田村大嬢,坂上大嬢,贈答,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]茅花が咲く浅茅が原のつぼすみれは、今盛んに咲いている。自分が恋い思っているように。
#{語釈]
大伴田村家<之>大嬢  04/0759 旅人兄、宿奈麻呂の娘

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1450
#[題詞]大伴宿祢坂上郎女歌一首
#[原文]情具伎 物尓曽有鶏類 春霞 多奈引時尓 戀乃繁者
#[訓読]心ぐきものにぞありける春霞たなびく時に恋の繁きは
#[仮名],こころぐき,ものにぞありける,はるかすみ,たなびくときに,こひのしげきは
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春相聞,作者:坂上郎女,恋情
#[訓異]
#[大意]鬱陶しいものである。春霞みのたなびく時に恋い心が激しいのは
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1451
#[題詞]笠女郎贈大伴家持歌一首
#[原文]水鳥之 鴨乃羽色乃 春山乃 於保束無毛 所念可聞
#[訓読]水鳥の鴨の羽色の春山のおほつかなくも思ほゆるかも
#[仮名],みづどりの,かものはいろの,はるやまの,おほつかなくも,おもほゆるかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春相聞,作者:笠郎女,大伴家持,贈答,恋情,動物
#[訓異]
#[大意]水鳥である鴨の羽の色のような春山が霞みでぼんやりとしているようにはっきりしない気持ちに思われてならないことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1452
#[題詞]紀女郎歌一首 [名曰小鹿也]
#[原文]闇夜有者 宇倍毛不来座 梅花 開月夜尓 伊而麻左自常屋
#[訓読]闇ならばうべも来まさじ梅の花咲ける月夜に出でまさじとや
#[仮名],やみならば,うべもきまさじ,うめのはな,さけるつくよに,いでまさじとや
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春相聞,作者:紀女郎,小鹿,恋情,怨恨,植物,贈答
#[訓異]
#[大意]闇夜ならばなるほどお来しにならないでしょう。梅の花の咲いている月夜にお出でにならないとは
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1453
#[題詞]天平五年癸酉春閏三月笠朝臣金村贈入唐使歌一首[并短歌]
#[原文]玉手次 不懸時無 氣緒尓 吾念公者 虚蝉之 <世人有者 大王之> 命恐 夕去者 鶴之妻喚 難波方 三津埼従 大舶尓 二梶繁貫 白浪乃 高荒海乎 嶋傳 伊別徃者 留有 吾者幣引 齊乍 公乎者将<待> 早還万世
#[訓読]玉たすき 懸けぬ時なく 息の緒に 我が思ふ君は うつせみの 世の人なれば 大君の 命畏み 夕されば 鶴が妻呼ぶ 難波潟 御津の崎より 大船に 真楫しじ貫き 白波の 高き荒海を 島伝ひ い別れ行かば 留まれる 我れは幣引き 斎ひつつ 君をば待たむ 早帰りませ
#[仮名],たまたすき,かけぬときなく,いきのをに,あがおもふきみは,うつせみの,よのひとなれば,おほきみの,みことかしこみ,ゆふされば,たづがつまよぶ,なにはがた,みつのさきより,おほぶねに,まかぢしじぬき,しらなみの,たかきあるみを,しまづたひ,いわかれゆかば,とどまれる,われはぬさひき,いはひつつ,きみをばまたむ,はやかへりませ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / <> -> 世人有者 大王之 [代匠記初稿本] / 徃 -> 待 [代匠記初稿本]
#[鄣W],春相聞,作者:笠金村,入唐使,贈答,送別,遣唐使,枕詞,地名,大阪,餞別,天平5年閏3月,年紀
#[訓異]
#[大意]玉たすきを懸けるのではないが、心に懸けない時もなく息の続きの命のように自分は思うあなたは、この世の人であるので大君のご命令を恐れ多く思って、夕方になると鶴が妻を呼ぶ難波潟の御津の崎より大船に両舷に楫を多く貫き、白波の高い荒海を嶋伝いに別れて行くので、後に留まっている自分は幣帛を引いて祈りながらあなたを待とう。早くお帰りなさい

#{語釈]
入唐使 太使丹比広成 天平4年8月17日任命。翌5年閏3月26日節刀 吉備真備ら同行。

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1454
#[題詞](天平五年癸酉春閏三月笠朝臣金村贈入唐使歌一首[并短歌])反歌
#[原文]波上従 所見兒嶋之 雲隠 穴氣衝之 相別去者
#[訓読]波の上ゆ見ゆる小島の雲隠りあな息づかし相別れなば
#[仮名],なみのうへゆ,みゆるこしまの,くもがくり,あないきづかし,あひわかれなば
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春相聞,作者:笠金村,入唐使,贈答,送別,遣唐使,餞別,天平5年閏3月,年紀
#[訓異]
#[大意]波の上から見える小嶋のように、あなたは雲居はるかに隠れて行き、ああため息が出ることだ。ともに別れたならば
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1455
#[題詞]((天平五年癸酉春閏三月笠朝臣金村贈入唐使歌一首[并短歌])反歌)
#[原文]玉切 命向 戀従者 公之三舶乃 梶柄母我
#[訓読]たまきはる命に向ひ恋ひむゆは君が御船の楫柄にもが
#[仮名],たまきはる,いのちにむかひ,こひむゆは,きみがみふねの,かぢからにもが
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],春相聞,作者:笠金村,入唐使,贈答,送別,遣唐使,枕詞,天平5年閏3月,年紀
#[訓異]
#[大意]たまきはる命をかけて恋い思っているよりは、あなたの御船の楫の束にでもなりたいものだ。
#{語釈]
命に向ひ 命をかけて

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1456
#[題詞]藤原朝臣廣嗣櫻花贈娘子歌一首
#[原文]此花乃 一与能内尓 百種乃 言曽隠有 於保呂可尓為莫
#[訓読]この花の一節のうちに百種の言ぞ隠れるおほろかにすな
#[仮名],このはなの,ひとよのうちに,ももくさの,ことぞこもれる,おほろかにすな
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春相聞,作者:藤原広嗣,娘子,贈答
#[訓異]
#[大意]この花の一節のうちにもたくさんの言葉が隠れているのだ。いい加減にするなよ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1457
#[題詞]娘子和歌一首
#[原文]此花乃 一与能裏波 百種乃 言持不勝而 所折家良受也
#[訓読]この花の一節のうちは百種の言待ちかねて折らえけらずや
#[仮名],このはなの,ひとよのうちは,ももくさの,ことまちかねて,をらえけらずや
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌
#[鄣W],春相聞,藤原広嗣,作者:娘子,和歌,贈答
#[訓異]
#[大意]この花の一節の中はたくさんの言葉を持つことが出来なくて折られてしまうことはないでしょうね
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1458
#[題詞]厚見王贈久米女郎歌一首
#[原文]室戸在 櫻花者 今毛香聞 松風疾 地尓落良武
#[訓読]やどにある桜の花は今もかも松風早み地に散るらむ
#[仮名],やどにある,さくらのはなは,いまもかも,まつかぜはやみ,つちにちるらむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春相聞,作者:厚見王,久米女郎,贈答,比喩,心変わり,植物
#[訓異]
#[大意]家にある桜の花は今もだろうか。松風が早いので地面に散っているだろうか。
#{語釈]
厚見王 1435 系譜未詳  天平感宝元年 無位より従五位下 天平宝字元年従五位
久米女郎 伝未詳

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1459
#[題詞]久米女郎報贈歌一首
#[原文]世間毛 常尓師不有者 室戸尓有 櫻花乃 不所比日可聞
#[訓読]世間も常にしあらねばやどにある桜の花の散れるころかも
#[仮名],よのなかも,つねにしあらねば,やどにある,さくらのはなの,ちれるころかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌
#[鄣W],春相聞,作者:久米女郎,贈答,厚見王,植物
#[訓異]
#[大意]人の世も常ではないので、家にある桜の花が散っている頃だろう
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1460
#[題詞]紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首
#[原文]戯奴 [變云 和氣] 之為 吾手母須麻尓 春野尓 抜流茅花曽 御食而肥座
#[訓読]戯奴 [變云 わけ] がため我が手もすまに春の野に抜ける茅花ぞ食して肥えませ
#[仮名],わけ[わけ],がため,わがてもすまに,はるののに,ぬけるつばなぞ,めしてこえませ
#[左注](右折<攀>合歡花并茅花贈也)
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春相聞,作者:紀女郎,大伴家持,贈答,植物
#[訓異]
#[大意]お前のために我が手も休めずに春の野に抜いてきた茅花であるぞ。お召し上がりになって太りなさいよ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1461
#[題詞](紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首)
#[原文]晝者咲 夜者戀宿 合歡木花 君耳将見哉 和氣佐倍尓見代
#[訓読]昼は咲き夜は恋ひ寝る合歓木の花君のみ見めや戯奴さへに見よ
#[仮名],ひるはさき,よるはこひぬる,ねぶのはな,きみのみみめや,わけさへにみよ
#[左注]右折<攀>合歡花并茅花贈也
#[校異]擧 -> 攀 [細][温][矢][京]
#[鄣W],春相聞,作者:紀女郎,大伴家持,贈答,植物
#[訓異]
#[大意]昼は咲き夜は恋い思って寝る合歓の花は、主人である自分だけ見てよいというわけではない。お前も見なさい。
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1462
#[題詞]大伴家持贈和歌二首
#[原文]吾君尓 戯奴者戀良思 給有 茅花手雖喫 弥痩尓夜須
#[訓読]我が君に戯奴は恋ふらし賜りたる茅花を食めどいや痩せに痩す
#[仮名],あがきみに,わけはこふらし,たばりたる,つばなをはめど,いややせにやす
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],春相聞,作者:大伴家持,和歌,紀女郎,植物,贈答
#[訓異]
#[大意]我が主君に下僕である自分は恋い思うらしい。いただいた茅花を食べるがますます痩せに痩せることだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1463
#[題詞](大伴家持贈和歌二首)
#[原文]吾妹子之 形見乃合歡木者 花耳尓 咲而盖 實尓不成鴨
#[訓読]我妹子が形見の合歓木は花のみに咲きてけだしく実にならじかも
#[仮名],わぎもこが,かたみのねぶは,はなのみに,さきてけだしく,みにならじかも
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],春相聞,作者:大伴家持,和歌,紀女郎,植物,贈答
#[訓異]
#[大意]我妹子の形見の合歓は花ばかり咲いてもしかして実にならないのだろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1464
#[題詞]大伴家持贈坂上大嬢歌一首
#[原文]春霞 軽引山乃 隔者 妹尓不相而 月曽經去来
#[訓読]春霞たなびく山のへなれれば妹に逢はずて月ぞ経にける
#[仮名],はるかすみ,たなびくやまの,へなれれば,いもにあはずて,つきぞへにける
#[左注]右従久邇京贈寧樂宅
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],春相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,恋情
#[訓異]
#[大意]春霞がたなびく山が隔たっているので妹に会わないで月が経ったことだ
#{語釈]
#[説明]
山が隔たっている
04/0601H01心ゆも我は思はずき山川も隔たらなくにかく恋ひむとは
04/0689H01海山も隔たらなくに何しかも目言をだにもここだ乏しき

#[関連論文]


#[番号]08/1465
#[題詞]夏雜歌 / 藤原夫人歌<一首> [明日香清御原<宮>御宇天皇之夫人也 字曰大原大刀自 即新田部皇子之母也]
#[原文]霍公鳥 痛莫鳴 汝音乎 五月玉尓 相貫左右二
#[訓読]霍公鳥いたくな鳴きそ汝が声を五月の玉にあへ貫くまでに
#[仮名],ほととぎす,いたくななきそ,ながこゑを,さつきのたまに,あへぬくまでに
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 / <> -> 一首 [類][紀] / <> -> 宮 [紀][温][矢]
#[鄣W],夏雑歌,作者:藤原夫人,大原大刀自,天武天皇,新田部皇子,動物
#[訓異]
#[大意]霍公鳥よ。ひどくは鳴くなよ。お前の声を五月の玉に合わせて貫くまでは
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1466
#[題詞]志貴皇子御歌一首
#[原文]神名火乃 磐瀬之<社>之 霍公鳥 毛無乃岳尓 何時来将鳴
#[訓読]神奈備の石瀬の社の霍公鳥毛無の岡にいつか来鳴かむ
#[仮名],かむなびの,いはせのもりの,ほととぎす,けなしのをかに,いつかきなかむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 杜 -> 社 [類][紀]
#[鄣W],夏雑歌,作者:志貴皇子,奈良,斑鳩,動物,地名
#[訓異]
#[大意]神奈備の石瀬の杜の霍公鳥よ。、毛無の岡にいつになったらやって来て鳴くのだろうか
#{語釈]
石瀬の社 奈良県生駒郡斑鳩町 奈良県生駒郡三郷町立野 未詳
毛無の岡 奈良県生駒郡三郷町坂上

#[説明]
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#[番号]08/1467
#[題詞]弓削皇子御歌一首
#[原文]霍公鳥 無流國尓毛 去而師香 其鳴音手 間者辛苦母
#[訓読]霍公鳥なかる国にも行きてしかその鳴く声を聞けば苦しも
#[仮名],ほととぎす,なかるくににも,ゆきてしか,そのなくこゑを,きけばくるしも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌
#[鄣W],夏雑歌,作者:弓削皇子,動物
#[訓異]
#[大意]霍公鳥のいない国にも行きたいものだ。その鳴く声を聞くと心苦しいことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1468
#[題詞]小治田廣瀬王霍公鳥歌一首
#[原文]霍公鳥 音聞小野乃 秋風<尓> 芽開礼也 聲之乏寸
#[訓読]霍公鳥声聞く小野の秋風に萩咲きぬれや声の乏しき
#[仮名],ほととぎす,こゑきくをのの,あきかぜに,はぎさきぬれや,こゑのともしき
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 尓 [類][紀]
#[鄣W],夏雑歌,作者:小治田広瀬王,動物,植物
#[訓異]
#[大意]霍公鳥の声を聞く小野の秋風に萩が咲いたというのであろうか(もう秋なのだろうか)、声が乏しいことだ
#{語釈]
小治田廣瀬王  小治田 奈良県高市郡明日香村飛鳥
        廣瀬王 系譜未詳 01/0044 天武10年国史編纂の命。和銅元年従四位上大蔵卿。和銅六年1月28日薨去。

#[説明]
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#[番号]08/1469
#[題詞]沙弥霍公鳥歌一首
#[原文]足引之 山霍公鳥 汝鳴者 家有妹 常所思
#[訓読]あしひきの山霍公鳥汝が鳴けば家なる妹し常に偲はゆ
#[仮名],あしひきの,やまほととぎす,ながなけば,いへなるいもし,つねにしのはゆ
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],夏雑歌,作者:沙弥,恋情,望郷,動物
#[訓異]
#[大意]あしひきの山霍公鳥よ。お前が鳴くならば家にいる妹をいつも思われてならない
#{語釈]
沙弥 未詳

#[説明]
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#[番号]08/1470
#[題詞]刀理宣令歌一首
#[原文]物部乃 石瀬之<社>乃 霍公鳥 今毛鳴奴<香> 山之常影尓
#[訓読]もののふの石瀬の社の霍公鳥今も鳴かぬか山の常蔭に
#[仮名],もののふの,いはせのもりの,ほととぎす,いまもなかぬか,やまのとかげに
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(別筆訂正)] 歌 / 杜 -> 社 [西(訂正)][類][紀] / <> -> 香 [代匠記初稿本]
#[鄣W],夏雑歌,作者:刀理宣令,奈良,斑鳩,地名,動物
#[訓異]
#[大意]もののふの石瀬の杜の霍公鳥よ。今すぐにでも鳴いて欲しい。山のいつも影になっている所で
#{語釈]
刀理宣令 養老5年正月従7位下。東宮侍講師。

もののふの  大勢の意味で五十(い)にかかる枕詞
石瀬の社  奈良県生駒郡斑鳩町 奈良県生駒郡三郷町立野 未詳
     08.1419 1466 1470

#[説明]
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#[番号]08/1471
#[題詞]山部宿祢赤人歌一首
#[原文]戀之家婆 形見尓将為跡 吾屋戸尓 殖之藤浪 今開尓家里
#[訓読]恋しけば形見にせむと我がやどに植ゑし藤波今咲きにけり
#[仮名],こひしけば,かたみにせむと,わがやどに,うゑしふぢなみ,いまさきにけり
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:山部赤人,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]恋しいならば見て偲ぼうと思う我が家に植えた藤波は今咲いたことだ
#{語釈]
#[説明]
死に別れた妹か、別れた恋人を言うか。
03/0464H01秋さらば見つつ偲へと妹が植ゑしやどのなでしこ咲きにけるかも

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#[番号]08/1472
#[題詞]式部大輔石上堅魚朝臣歌一首
#[原文]霍公鳥 来鳴令響 宇乃花能 共也来之登 問麻思物乎
#[訓読]霍公鳥来鳴き響もす卯の花の伴にや来しと問はましものを
#[仮名],ほととぎす,きなきとよもす,うのはなの,ともにやこしと,とはましものを
#[左注]右神龜五年戊辰大宰帥大伴卿之妻大伴郎女遇病長逝焉 于時 勅使式部大輔石上朝臣堅魚遣<大>宰府弔喪并賜物也 其事既畢驛使及府諸卿大夫等共登記夷城而望遊之日乃作此歌
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 太 -> 大 [紀][温] / 歌 [西] 謌
#[鄣W],夏雑歌,作者:石上堅魚,太宰府,大伴旅人,動物,植物
#[訓異]
#[大意]霍公鳥がやってきて鳴き響かせる。卯の花を友にして来たのかと尋ねたいものだ
#{語釈]
石上堅魚 神亀3年正月従五位上、天平8年正月正五位上

#[説明]
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#[番号]08/1473
#[題詞]<大>宰帥大伴卿和歌一首
#[原文]橘之 花散里乃 霍公鳥 片戀為乍 鳴日四曽多寸
#[訓読]橘の花散る里の霍公鳥片恋しつつ鳴く日しぞ多き
#[仮名],たちばなの,はなちるさとの,ほととぎす,かたこひしつつ,なくひしぞおほき
#[左注]
#[校異]太 -> 大 [紀][温][矢] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,和歌,石上堅魚,非情,恋情,植物,動物
#[訓異]
#[大意]橘の花が散る里の霍公鳥よ。そのように片恋いをしながら嘆く日が多いことだ
#{語釈]
#[説明]
石上堅魚に和したものか。そうだとすると都の堅魚を恋い思うという意味。
亡き妻に恋い思うという意味か。

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#[番号]08/1474
#[題詞]大伴坂上郎女思筑紫大城山歌一首
#[原文]今毛可聞 大城乃山尓 霍公鳥 鳴令響良武 吾無礼杼毛
#[訓読]今もかも大城の山に霍公鳥鳴き響むらむ我れなけれども
#[仮名],いまもかも,おほきのやまに,ほととぎす,なきとよむらむ,われなけれども
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:坂上郎女,奈良,大野城,回顧,太宰府,地名,動物
#[訓異]
#[大意]今もなんだろうか。大城の山の霍公鳥は鳴き響かせているのだろうか。自分はいないけれども
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1475
#[題詞]大伴坂上郎女霍公鳥歌一首
#[原文]何奇毛 幾許戀流 霍公鳥 鳴音聞者 戀許曽益礼
#[訓読]何しかもここだく恋ふる霍公鳥鳴く声聞けば恋こそまされ
#[仮名],なにしかも,ここだくこふる,ほととぎす,なくこゑきけば,こひこそまされ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 奇 [類][温] 哥
#[鄣W],夏雑歌,作者:坂上郎女,恋情,動物
#[訓異]
#[大意]どうしてこんなにもひどく恋い思うのか霍公鳥よ。鳴く声を聞くと恋いしさがなおさら勝ってくることだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1476
#[題詞]小治田朝臣廣耳歌一首
#[原文]獨居而 物念夕尓 霍公鳥 従此間鳴渡 心四有良思
#[訓読]ひとり居て物思ふ宵に霍公鳥こゆ鳴き渡る心しあるらし
#[仮名],ひとりゐて,ものもふよひに,ほととぎす,こゆなきわたる,こころしあるらし
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:小治田広耳,恋情,動物
#[訓異]
#[大意]独りでいて物思いをしている宵に霍公鳥がここを通って鳴き渡って行く。自分を慰める心があるらしい
#{語釈]
小治田朝臣廣耳 伝未詳。1501

#[説明]
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#[番号]08/1477
#[題詞]大伴家持霍公鳥歌一首
#[原文]宇能花毛 未開者 霍公鳥 佐保乃山邊 来鳴令響
#[訓読]卯の花もいまだ咲かねば霍公鳥佐保の山辺に来鳴き響もす
#[仮名],うのはなも,いまださかねば,ほととぎす,さほのやまへに,きなきとよもす
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,佐保,奈良,動物,地名,植物
#[訓異]
#[大意]卯の花もまだ咲いていないのに霍公鳥は佐保の山辺にやって来て鳴き響かせる
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1478
#[題詞]大伴家持橘歌一首
#[原文]吾屋前之 花橘乃 何時毛 珠貫倍久 其實成奈武
#[訓読]我が宿の花橘のいつしかも玉に貫くべくその実なりなむ
#[仮名],わがやどの,はなたちばなの,いつしかも,たまにぬくべく,そのみなりなむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,植物
#[訓異]
#[大意]我が家の橘の花はいつになったら玉に貫き通せるようにその実がなるだろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1479
#[題詞]大伴家持晩蝉歌一首
#[原文]隠耳 居者欝悒 奈具左武登 出立聞者 来鳴日晩
#[訓読]隠りのみ居ればいぶせみ慰むと出で立ち聞けば来鳴くひぐらし
#[仮名],こもりのみ,をればいぶせみ,なぐさむと,いでたちきけば,きなくひぐらし
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,鬱屈,動物
#[訓異]
#[大意]家の中に閉じこもってばかりいると鬱陶しいので心が慰められるだろうかと外に出て立ち聞くとやって来て鳴くひぐらしであることだ
#{語釈]
晩蝉  ひぐらし

#[説明]
08/1568H01雨隠り心いぶせみ出で見れば春日の山は色づきにけり


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#[番号]08/1480
#[題詞]大伴書持歌二首
#[原文]我屋戸尓 月押照有 霍公鳥 心有今夜 来鳴令響
#[訓読]我が宿に月おし照れり霍公鳥心あれ今夜来鳴き響もせ
#[仮名],わがやどに,つきおしてれり,ほととぎす,こころあれこよひ,きなきとよもせ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴書持,動物
#[訓異]
#[大意]我が家に月が皎皎と照っている。霍公鳥よ。心があって今夜はやって来て鳴き響かせてくれ
#{語釈]
心あれ  命令形

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1481
#[題詞](大伴書持歌二首)
#[原文]我屋<戸>前乃 花橘尓 霍公鳥 今社鳴米 友尓相流時
#[訓読]我が宿の花橘に霍公鳥今こそ鳴かめ友に逢へる時
#[仮名],わがやどの,はなたちばなに,ほととぎす,いまこそなかめ,ともにあへるとき
#[左注]
#[校異]<> -> 戸 [類][紀]
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴書持,植物,動物
#[訓異]
#[大意]我が家の橘の花に霍公鳥よ。今こそ鳴いてくれ。友に合っている時に
#{語釈]
友 橘の花と霍公鳥が友。家持の友人に会う
19/4210H01藤波の茂りは過ぎぬあしひきの山霍公鳥などか来鳴かぬ

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1482
#[題詞]大伴清縄歌一首
#[原文]皆人之 待師宇能花 雖落 奈久霍公鳥 吾将忘哉
#[訓読]皆人の待ちし卯の花散りぬとも鳴く霍公鳥我れ忘れめや
#[仮名],みなひとの,まちしうのはな,ちりぬとも,なくほととぎす,われわすれめや
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴清縄,植物,動物
#[訓異]
#[大意]人がみんな待っていた卯の花が散ったとしても鳴く霍公鳥を自分は忘れると言うことがあろうか
#{語釈]
大伴清縄 伝未詳

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1483
#[題詞]奄君諸立歌一首
#[原文]吾背子之 屋戸乃橘 花乎吉美 鳴霍公鳥 見曽吾来之
#[訓読]我が背子が宿の橘花をよみ鳴く霍公鳥見にぞ我が来し
#[仮名],わがせこが,やどのたちばな,はなをよみ,なくほととぎす,みにぞわがこし
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:奄君諸立,宴席,主人讃美,植物,動物
#[訓異]
#[大意]
#{語釈]我が背子の家の橘は花がいいとして鳴く霍公鳥を自分も見に来たのだ
奄君諸立 伝未詳

#[説明]
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#[番号]08/1484
#[題詞]大伴坂上郎女歌一首
#[原文]霍公鳥 痛莫鳴 獨居而 寐乃不所宿 聞者苦毛
#[訓読]霍公鳥いたくな鳴きそひとり居て寐の寝らえぬに聞けば苦しも
#[仮名],ほととぎす,いたくななきそ,ひとりゐて,いのねらえぬに,きけばくるしも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:坂上郎女,動物
#[訓異]
#[大意]霍公鳥よ。ひどくは鳴くなよ。独りで寝ていて寝られないのだから聞くと苦しいから
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1485
#[題詞]大伴家持唐棣花歌一首
#[原文],夏儲而 開有波祢受 久方乃 雨打零者 将移香
#[訓読]夏まけて咲きたるはねずひさかたの雨うち降らば移ろひなむか
#[仮名],なつまけて,さきたるはねず,ひさかたの,あめうちふらば,うつろひなむか
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,植物
#[訓異]
#[大意]夏を待って咲いたはねずは、久方の雨が降ったならば散ってしまうだろうか
#{語釈]
はねず 未詳。夏に花をつけるもの  12/3074

#[説明]
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#[番号]08/1486
#[題詞]大伴家持恨霍公鳥晩喧歌二首
#[原文]吾屋前之 花橘乎 霍公鳥 来不喧地尓 令落常香
#[訓読]我が宿の花橘を霍公鳥来鳴かず地に散らしてむとか
#[仮名],わがやどの,はなたちばなを,ほととぎす,きなかずつちに,ちらしてむとか
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,植物,動物
#[訓異]
#[大意]我が家の橘の花を霍公鳥よ。鳴かない阿ままに地面に散らしてしまおうというのか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1487
#[題詞](大伴家持恨霍公鳥晩喧歌二首)
#[原文]霍公鳥 不念有寸 木晩乃 如此成左右尓 奈何不来喧
#[訓読]霍公鳥思はずありき木の暗のかくなるまでに何か来鳴かぬ
#[仮名],ほととぎす,おもはずありき,このくれの,かくなるまでに,なにかきなかぬ
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,動物,怨恨
#[訓異]
#[大意]霍公鳥よ。思ってもいなかった。木が茂ってこんなになるまでどうしてやって来て鳴かないのか。
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1488
#[題詞]大伴家持懽霍公鳥歌一首
#[原文]何處者 鳴毛思仁家武 霍公鳥 吾家乃里尓 <今>日耳曽鳴
#[訓読]いづくには鳴きもしにけむ霍公鳥我家の里に今日のみぞ鳴く
#[仮名],いづくには,なきもしにけむ,ほととぎす,わぎへのさとに,けふのみぞなく
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 乃 [春][紀] 之 / <> -> 今 [西(右書)][類][紀][細]
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,動物
#[訓異]
#[大意]どこかではすでに鳴いてもいるだろう霍公鳥よ。自分の家の里では今日だけ鳴いている
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1489
#[題詞]大伴家持惜橘花歌一首
#[原文]吾屋前之 花橘者 落過而 珠尓可貫 實尓成二家利
#[訓読]我が宿の花橘は散り過ぎて玉に貫くべく実になりにけり
#[仮名],わがやどの,はなたちばなは,ちりすぎて,たまにぬくべく,みになりにけり
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,植物
#[訓異]
#[大意]我が家の橘の花は散り過ぎて玉に貫くように実になったことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1490
#[題詞]大伴家持霍公鳥歌一首
#[原文]霍公鳥 雖待不来喧 <菖>蒲草 玉尓貫日乎 未遠美香
#[訓読]霍公鳥待てど来鳴かず菖蒲草玉に貫く日をいまだ遠みか
#[仮名],ほととぎす,まてどきなかず,あやめぐさ,たまにぬくひを,いまだとほみか
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 菖 [代匠記初稿本]
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,動物,植物
#[訓異]
#[大意]霍公鳥を待ってもやって来て鳴かない。菖蒲草を玉に貫く日はまだ遠いからだろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1491
#[題詞]大伴家持雨日聞霍公鳥喧歌一首
#[原文]宇乃花能 過者惜香 霍公鳥 雨間毛不置 従此間喧渡
#[訓読]卯の花の過ぎば惜しみか霍公鳥雨間も置かずこゆ鳴き渡る
#[仮名],うのはなの,すぎばをしみか,ほととぎす,あままもおかず,こゆなきわたる
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,植物,動物
#[訓異]
#[大意]卯の花が散りすぎてしまうのが惜しいからなのだろうか。霍公鳥は雨の間も置かないでここから鳴き渡っている
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1492
#[題詞]橘歌一首 [遊行女婦]
#[原文]君家乃 花橘者 成尓家利 花乃有時尓 相益物乎
#[訓読]君が家の花橘はなりにけり花のある時に逢はましものを
#[仮名],きみがいへの,はなたちばなは,なりにけり,はななるときに,あはましものを
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 花乃 [類][紀](塙) 花
#[鄣W],夏雑歌,作者:遊行女婦,宴席,植物
#[訓異]
#[大意]あなたの家の橘の花はすっかり実になってしまった。花のある時に会えばよかったのに
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1493
#[題詞]大伴村上橘歌一首
#[原文]吾屋前乃 花橘乎 霍公鳥 来鳴令動而 本尓令散都
#[訓読]我が宿の花橘を霍公鳥来鳴き響めて本に散らしつ
#[仮名],わがやどの,はなたちばなを,ほととぎす,きなきとよめて,もとにちらしつ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴村上,植物,動物
#[訓異]
#[大意]我が家の橘の花を霍公鳥はやって来て鳴いて地面に散らしてしまった
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1494
#[題詞]大伴家持霍公鳥歌二首
#[原文]夏山之 木末乃繁尓 霍公鳥 鳴響奈流 聲之遥佐
#[訓読]夏山の木末の茂に霍公鳥鳴き響むなる声の遥けさ
#[仮名],なつやまの,こぬれのしげに,ほととぎす,なきとよむなる,こゑのはるけさ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,動物,叙景
#[訓異]
#[大意]夏山の梢が茂っている中で霍公鳥が鳴き響いている声が聞こえる。その声のはるかなることだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1495
#[題詞](大伴家持霍公鳥歌二首)
#[原文]足引乃 許乃間立八十一 霍公鳥 如此聞始而 後将戀可聞
#[訓読]あしひきの木の間立ち潜く霍公鳥かく聞きそめて後恋ひむかも
#[仮名],あしひきの,このまたちくく,ほととぎす,かくききそめて,のちこひむかも
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,動物
#[訓異]
#[大意]あしひきの木の間を立ち隠れて霍公鳥をこのように聞き始めると後になって恋しく思うだろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1496
#[題詞]大伴家持石竹花歌一首
#[原文]吾屋前之 瞿麥乃花 盛有 手折而一目 令見兒毛我母
#[訓読]我が宿のなでしこの花盛りなり手折りて一目見せむ子もがも
#[仮名],わがやどの,なでしこのはな,さかりなり,たをりてひとめ,みせむこもがも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:大伴家持,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]我が家のなでしこの花が盛んに咲いている。手折って人目見せる女性がいればなあ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1497
#[題詞]惜不登筑波山歌一首
#[原文]筑波根尓 吾行利世波 霍公鳥 山妣兒令響 鳴麻志也其
#[訓読]筑波嶺に我が行けりせば霍公鳥山彦響め鳴かましやそれ
#[仮名],つくはねに,わがゆけりせば,ほととぎす,やまびことよめ,なかましやそれ
#[左注]右一首高橋連蟲麻呂之歌中出
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,筑波,茨城,地名,動物
#[訓異]
#[大意]筑波嶺に自分が行ったならば霍公鳥が山彦を響かせて鳴いていただそうに。それは
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1498
#[題詞]夏相聞 / 大伴坂上郎女歌一首
#[原文]無暇 不来之君尓 霍公鳥 吾如此戀常 徃而告社
#[訓読]暇なみ来まさぬ君に霍公鳥我れかく恋ふと行きて告げこそ
#[仮名],いとまなみ,きまさぬきみに,ほととぎす,あれかくこふと,ゆきてつげこそ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏相聞,作者:坂上郎女,勧誘,動物
#[訓異]
#[大意]暇がないからと言っていらっしゃないあなたの所へ霍公鳥よ。自分はこのように恋い思っていると行って告げて欲しい
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1499
#[題詞]大伴四縄宴吟歌一首
#[原文]事繁 君者不来益 霍公鳥 汝太尓来鳴 朝戸将開
#[訓読]言繁み君は来まさず霍公鳥汝れだに来鳴け朝戸開かむ
#[仮名],ことしげみ,きみはきまさず,ほととぎす,なれだにきなけ,あさとひらかむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏相聞,作者:大伴四綱,宴席,誦詠,女歌,うわさ,動物
#[訓異]
#[大意]うわさの激しいあなたはいらっしゃらない。霍公鳥よ。、お前だけでもやって来て鳴け。朝の戸口を開こうから
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1500
#[題詞]大伴坂上郎女歌一首
#[原文]夏野<之> 繁見丹開有 姫由理乃 不所知戀者 苦物曽
#[訓読]夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ
#[仮名],なつののの,しげみにさける,ひめゆりの,しらえぬこひは,くるしきものぞ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 乃 -> 之 [類][紀][矢][京]
#[鄣W],夏相聞,作者:坂上郎女,片思い,忍恋い,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]夏の野の茂みに咲いている姫百合がそれとわからないように人に知られず忍ぶ恋は苦しいものだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1501
#[題詞]小治田朝臣廣耳歌一首
#[原文]霍公鳥 鳴峯乃上能 宇乃花之 猒事有哉 君之不来益
#[訓読]霍公鳥鳴く峰の上の卯の花の憂きことあれや君が来まさぬ
#[仮名],ほととぎす,なくをのうへの,うのはなの,うきことあれや,きみがきまさぬ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏相聞,作者:小治田広耳,女の立場,宴席,恨み,植物,動物
#[訓異]
#[大意]霍公鳥が鳴く峰のほとりの卯の花ではないが、心配なことがあるのだろうかあなたがいらっしゃらない
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1502
#[題詞]大伴坂上郎女歌一首
#[原文]五月之 花橘乎 為君 珠尓社貫 零巻惜美
#[訓読]五月の花橘を君がため玉にこそ貫け散らまく惜しみ
#[仮名],さつきの,はなたちばなを,きみがため,たまにこそぬけ,ちらまくをしみ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏相聞,作者:坂上郎女,植物
#[訓異]
#[大意]五月の橘の花をあなたのために玉に貫いているのですよ。そのまま散るのが惜しいので。
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1503
#[題詞]紀朝臣豊河歌一首
#[原文]吾妹兒之 家乃垣内乃 佐由理花 由利登云者 不<欲>云二似
#[訓読]我妹子が家の垣内のさ百合花ゆりと言へるはいなと言ふに似る
#[仮名],わぎもこが,いへのかきつの,さゆりばな,ゆりといへるは,いなといふににる
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 内乃 [類][紀](塙) 内 / 歌(謌) -> 欲 [新訓]
#[鄣W],夏相聞,作者:紀豊河,植物
#[訓異]
#[大意]我妹子の家の垣根の百合の花、後でと言うのはイヤだと言うのに似ていることだ
#{語釈]
紀朝臣豊河 天平11年正六位上から従五位下
ゆり 後に 後で
18/4087H01灯火の光りに見ゆるさ百合花ゆりも逢はむと思ひそめてき
18/4088H01さ百合花ゆりも逢はむと思へこそ今のまさかもうるはしみすれ

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1504
#[題詞]高安歌一首
#[原文]暇無 五月乎尚尓 吾妹兒我 花橘乎 不見可将過
#[訓読]暇なみ五月をすらに我妹子が花橘を見ずか過ぎなむ
#[仮名],いとまなみ,さつきをすらに,わぎもこが,はなたちばなを,みずかすぎなむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏相聞,作者:高安王,大原高安,植物
#[訓異]
#[大意]暇がないので五月であるのに我妹子の橘の花を見ないまま過ぎてしまうのであろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1505
#[題詞]大神女郎贈大伴家持歌一首
#[原文]霍公鳥 鳴之登時 君之家尓 徃跡追者 将至鴨
#[訓読]霍公鳥鳴きしすなはち君が家に行けと追ひしは至りけむかも
#[仮名],ほととぎす,なきしすなはち,きみがいへに,ゆけとおひしは,いたりけむかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏相聞,作者:大神女郎,大伴家持,贈答,動物
#[訓異]
#[大意]霍公鳥が鳴いていたのをすぐにあなたの家に行けと追い立てたのあ着いたでしょうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1506
#[題詞]大伴田村大嬢与妹坂上大嬢歌一首
#[原文]古郷之 奈良思乃岳能 霍公鳥 言告遣之 何如告寸八
#[訓読]故郷の奈良思の岡の霍公鳥言告げ遣りしいかに告げきや
#[仮名],ふるさとの,ならしのをかの,ほととぎす,ことつげやりし,いかにつげきや
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏相聞,作者:田村大嬢,坂上大嬢,贈答,地名,動物
#[訓異]
#[大意]故郷明日香の奈良思の岡の霍公鳥。その霍公鳥に言づてをしましたが、どのように伝えたでしょうか
#{語釈]
故郷  普通明日香 06/1038 久邇京から平城京を言う
奈良思の岡 所在未詳

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1507
#[題詞]大伴家持<攀>橘花贈坂上大嬢歌一首[并短歌]
#[原文]伊加登伊可等 有吾屋前尓 百枝刺 於布流橘 玉尓貫 五月乎近美 安要奴我尓 花咲尓家里 朝尓食尓 出見毎 氣緒尓 吾念妹尓 銅鏡 清月夜尓 直一眼 令覩麻而尓波 落許須奈 由<米>登云管 幾許 吾守物乎 宇礼多伎也 志許霍公鳥 暁之 裏悲尓 雖追雖追 尚来鳴而 徒 地尓令散者 為便乎奈美 <攀>而手折都 見末世吾妹兒
#[訓読]いかといかと ある我が宿に 百枝さし 生ふる橘 玉に貫く 五月を近み あえぬがに 花咲きにけり 朝に日に 出で見るごとに 息の緒に 我が思ふ妹に まそ鏡 清き月夜に ただ一目 見するまでには 散りこすな ゆめと言ひつつ ここだくも 我が守るものを うれたきや 醜霍公鳥 暁の うら悲しきに 追へど追へど なほし来鳴きて いたづらに 地に散らせば すべをなみ 攀ぢて手折りつ 見ませ我妹子
#[仮名],いかといかと,あるわがやどに,ももえさし,おふるたちばな,たまにぬく,さつきをちかみ,あえぬがに,はなさきにけり,あさにけに,いでみるごとに,いきのをに,あがおもふいもに,まそかがみ,きよきつくよに,ただひとめ,みするまでには,ちりこすな,ゆめといひつつ,ここだくも,わがもるものを,うれたきや,しこほととぎす,あかときの,うらがなしきに,おへどおへど,なほしきなきて,いたづらに,つちにちらせば,すべをなみ,よぢてたをりつ,みませわぎもこ
#[左注]
#[校異]擧 -> 攀 [紀][細][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 来 -> 米 [類][紀][細] / 擧 -> 攀 [類][紀][温]
#[鄣W],夏相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,植物,動物
#[訓異]
#[大意]どのようにどのようにある自分の家にたくさんの枝がささって生えている橘を玉に貫く五月が近いのでこぼれ落ちそうなばかりに花が咲いた。毎朝毎朝出て見るごとに息の続くように命に懸けて自分が恋い思う妹に、まそ鏡の清らかな月夜にただ一目だけでも見せるまでは決して散るなと言い続けてこんなにも自分が守るものなのに、鬱陶しいことに醜い霍公鳥めの暁のしみじみした趣の中で追い払っても追い払ってもなおやって来て鳴いて無駄に地面に散らすのでどうしようもなく引き捩って手折ったものだ。ご覧なさい。我妹子よ。

#{語釈]
あえぬかに  こぼれ落ちるばかりに あゆ こぼれ落ちる ぬ 完了 かに ばかりに
#[説明]家持最初の長歌

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#[番号]08/1508
#[題詞](大伴家持<攀>橘花贈坂上大嬢歌一首[并短歌])反歌
#[原文]望降 清月夜尓 吾妹兒尓 令覩常念之 屋前之橘
#[訓読]望ぐたち清き月夜に我妹子に見せむと思ひしやどの橘
#[仮名],もちぐたち,きよきつくよに,わぎもこに,みせむとおもひし,やどのたちばな
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 覩 [類][紀][矢][京](塙) 視
#[鄣W],夏相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,植物
#[訓異]
#[大意]満月も過ぎた清らかな月夜に我が妹子に見せようと思っていた我家の橘であるぞ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1509
#[題詞]((大伴家持<攀>橘花贈坂上大嬢歌一首[并短歌])反歌)
#[原文]妹之見而 後毛将鳴 霍公鳥 花橘乎 地尓落津
#[訓読]妹が見て後も鳴かなむ霍公鳥花橘を地に散らしつ
#[仮名],いもがみて,のちもなかなむ,ほととぎす,はなたちばなを,つちにちらしつ
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],夏相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,動物,植物
#[訓異]
#[大意]妹が見た後に鳴いてくれればよかったのに。霍公鳥よ。橘の花を地面に散らしてしまった
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1510
#[題詞]大伴家持贈紀女郎歌一首
#[原文]瞿麥者 咲而落去常 人者雖言 吾標之野乃 花尓有目八方
#[訓読]なでしこは咲きて散りぬと人は言へど我が標めし野の花にあらめやも
#[仮名],なでしこは,さきてちりぬと,ひとはいへど,わがしめしのの,はなにあらめやも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],夏相聞,作者:大伴家持,紀女郎,贈答,比喩,植物
#[訓異]
#[大意]瞿麦は咲いて散ったと人は言うが自分が標をしておいた野の花ではないでしょうね
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1511
#[題詞]秋雜歌 / 崗本天皇御製歌一首
#[原文]暮去者 小倉乃山尓 鳴鹿者 今夜波不鳴 寐<宿>家良思母
#[訓読]夕されば小倉の山に鳴く鹿は今夜は鳴かず寐ねにけらしも
#[仮名],ゆふされば,をぐらのやまに,なくしかは,こよひはなかず,いねにけらしも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 宿 [西(右書)][類][紀][細]
#[鄣W],秋雑歌,作者:舒明天皇,斉明天皇,地名,動物
#[訓異]
#[大意]夕方になると小倉の山に鳴く鹿は今夜は鳴かない寝たらしいなあ
#{語釈]
崗本天皇  舒明天皇または斉明天皇
小倉の山 未詳 奈良県桜井市 多武峰 倉橋山 今井谷 忍坂

#[説明]
重出
09/1664D02泊瀬朝倉宮御宇大泊瀬幼武天<皇>御製歌一首
09/1664H01夕されば小倉の山に伏す鹿の今夜は鳴かず寐ねにけらしも
09/1664S01右或本云崗本天皇御製 不審正指 因以累戴
09/1665D01崗本宮御宇天皇幸紀伊國時歌二首

刀我野の鹿  摂津風土記

#[関連論文]


#[番号]08/1512
#[題詞]大津皇子御歌一首
#[原文]經毛無 緯毛不定 未通女等之 織黄葉尓 霜莫零
#[訓読]経もなく緯も定めず娘子らが織る黄葉に霜な降りそね
#[仮名],たてもなく,ぬきもさだめず,をとめらが,おるもみちばに,しもなふりそね
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大津皇子,植物
#[訓異]
#[大意]縦糸もなく横糸も定めないで娘子が織る黄葉には霜よ降るなよ。
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1513
#[題詞]穂積皇子御歌二首
#[原文]今朝之旦開 鴈之鳴聞都 春日山 黄葉家良思 吾情痛之
#[訓読]今朝の朝明雁が音聞きつ春日山もみちにけらし我が心痛し
#[仮名],けさのあさけ,かりがねききつ,かすがやま,もみちにけらし,あがこころいたし
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:穂積皇子,奈良,動物,地名,季節
#[訓異]
#[大意]今日の朝雁のこ声を聞いた。春日山は紅葉したらしい。自分の心は痛むことだ
#{語釈]
穂積皇子 和銅八年七月薨去
痛し ひどい。伊藤釈注 和銅元年に薨去した但馬皇女のことを思ってもの

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1514
#[題詞](穂積皇子御歌二首)
#[原文]秋芽者 可咲有良之 吾屋戸之 淺茅之花乃 散去見者
#[訓読]秋萩は咲くべくあらし我がやどの浅茅が花の散りゆく見れば
#[仮名],あきはぎは,さくべくあらし,わがやどの,あさぢがはなの,ちりゆくみれば
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:穂積皇子,植物
#[訓異]
#[大意]秋萩は咲きそうであるらしい。我が家の浅茅の花の散って行くのを見ると
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1515
#[題詞]但馬皇女御歌一首 [一書云子部王作]
#[原文]事繁 里尓不住者 今朝鳴之 鴈尓副而 去益物乎 [一云 國尓不有者]
#[訓読]言繁き里に住まずは今朝鳴きし雁にたぐひて行かましものを [一云 国にあらずは]
#[仮名],ことしげき,さとにすまずは,けさなきし,かりにたぐひて,ゆかましものを,[くににあらずは]
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:但馬皇女,うわさ,動物
#[訓異]
#[大意]うわさのひどい里に住んではいずに今朝鳴いた雁に寄り沿って行ったほうがましだ
#{語釈]
子部王 伝未詳。16/3821の児部女王と同一人物か

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1516
#[題詞]山部王惜秋葉歌一首
#[原文]秋山尓 黄反木葉乃 移去者 更哉秋乎 欲見世武
#[訓読]秋山にもみつ木の葉のうつりなばさらにや秋を見まく欲りせむ
#[仮名],あきやまに,もみつこのはの,うつりなば,さらにやあきを,みまくほりせむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:山部王,植物,季節
#[訓異]
#[大意]秋山に紅葉する木の葉が散ってしまうとさらに秋を見たいと思うだろうか
#{語釈]
山部王 伝未詳

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1517
#[題詞]長屋王歌一首
#[原文]味酒 三輪乃祝之 山照 秋乃黄葉<乃> 散莫惜毛
#[訓読]味酒三輪のはふりの山照らす秋の黄葉の散らまく惜しも
#[仮名],うまさけ,みわのはふりの,やまてらす,あきのもみちの,ちらまくをしも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 祝 [類](塙) 社 / <> -> 乃 [類][紀]
#[鄣W],秋雑歌,作者:長屋王,三輪,奈良,枕詞,地名,植物
#[訓異]
#[大意]味酒三輪の神官のいる山を照らす秋の黄葉が散ることが惜しいことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1518
#[題詞]山上<臣>憶良七夕歌十二首
#[原文]天漢 相向立而 吾戀之 君来益奈利 紐解設奈 [一云 向河]
#[訓読]天の川相向き立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き設けな [一云 川に向ひて]
#[仮名],あまのがは,あひむきたちて,あがこひし,きみきますなり,ひもときまけな,[かはにむかひて]
#[左注]右養老八年七月七日應令
#[校異]巨 -> 臣 [類][紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]天の河にともに向き合って自分が恋い思う君がいらっしゃるようだ。紐をほどいて待ち設けよう
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1519
#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)
#[原文]久方之 漢<瀬>尓 船泛而 今夜可君之 我許来益武
#[訓読]久方の天の川瀬に舟浮けて今夜か君が我がり来まさむ
#[仮名],ひさかたの,あまのかはせに,ふねうけて,こよひかきみが,わがりきまさむ
#[左注]右神亀元年七月七日夜左大臣宅
#[校異]漢 [京] 天漢 / <> -> 瀬 [類][矢]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]久方の天の川瀨に船を浮かべて今夜に君が自分のもとへいらっしゃるのだろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1520
#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)
#[原文]牽牛者 織女等 天地之 別時<由> 伊奈宇之呂 河向立 <思>空 不安久尓 嘆空 不安久尓 青浪尓 望者多要奴 白雲尓 な者盡奴 如是耳也 伊伎都枳乎良牟 如是耳也 戀都追安良牟 佐丹塗之 小船毛賀茂 玉纒之 真可伊毛我母 [一云 小棹毛何毛] 朝奈藝尓 伊可伎渡 夕塩尓 [一云 夕倍尓毛] 伊許藝渡 久方之 天河原尓 天飛也 領巾可多思吉 真玉手乃 玉手指更 餘宿毛 寐而師可聞 [一云 伊毛左祢而師加] 秋尓安良受登母 [一云 秋不待登毛]
#[訓読]彦星は 織女と 天地の 別れし時ゆ いなうしろ 川に向き立ち 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 安けなくに 青波に 望みは絶えぬ 白雲に 涙は尽きぬ かくのみや 息づき居らむ かくのみや 恋ひつつあらむ さ丹塗りの 小舟もがも 玉巻きの 真櫂もがも [一云 小棹もがも] 朝なぎに い掻き渡り 夕潮に [一云 夕にも] い漕ぎ渡り 久方の 天の川原に 天飛ぶや 領巾片敷き 真玉手の 玉手さし交へ あまた夜も 寐ねてしかも [一云 寐もさ寝てしか] 秋にあらずとも [一云 秋待たずとも]
#[仮名],ひこほしは,たなばたつめと,あめつちの,わかれしときゆ,いなうしろ,かはにむきたち,おもふそら,やすけなくに,なげくそら,やすけなくに,あをなみに,のぞみはたえぬ,しらくもに,なみたはつきぬ,かくのみや,いきづきをらむ,かくのみや,こひつつあらむ,さにぬりの,をぶねもがも,たままきの,まかいもがも,[をさをもがも],あさなぎに,いかきわたり,ゆふしほに,[ゆふべにも],いこぎわたり,ひさかたの,あまのかはらに,あまとぶや,ひれかたしき,またまでの,たまでさしかへ,あまたよも,いねてしかも,[いもさねてしか],あきにあらずとも,[あきまたずとも]
#[左注](右天平元年七月七日夜憶良仰觀天河 [一云帥家作])
#[校異]雨 -> 由 [西(訂正右書)][類][紀][細] / 宇 [童蒙抄](塙) 牟 / 意 -> 思 [類][紀][温]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]彦星は織女と天地が別れた時からお互いに河に向い立って思うにつけても心安らかでなく、嘆くにつけても安らかでなく、青波に希望は途絶えてしまった。白雲に涙は尽きた。このよに嘆息しているのだろうか。このようにばかり恋い続けているのだろうか。赤く縫った小舟もあればいいのに。玉で巻いた楫もあればいいのに。朝なぎに?いて渡り、夕凪に漕いで渡り、久方の天の河原に天を飛ぶ領巾を敷いて美しい手を差し交わして多くの夜も寝たいものなのに。秋ではなくとも

#{語釈]
いなうしろ いなむしろ(稲筵)の誤りと見る。 いなうしろ だと語義未詳

#[説明]
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#[番号]08/1521
#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)反歌
#[原文]風雲者 二岸尓 可欲倍杼母 吾遠嬬之 [一云 波之嬬乃] 事曽不通
#[訓読]風雲は二つの岸に通へども我が遠妻の [一云 愛し妻の] 言ぞ通はぬ
#[仮名],かぜくもは,ふたつのきしに,かよへども,わがとほづまの[はしつまの],ことぞかよはぬ
#[左注](右天平元年七月七日夜憶良仰觀天河 [一云 帥家作])
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]風や雲は二つの岸に通うけれども自分の遠方の妻は[一に云う 愛しい妻は]言葉も通わない
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1522
#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)
#[原文]多夫手二毛 投越都倍<吉> 天漢 敝太而礼婆可母 安麻多須辨奈吉
#[訓読]たぶてにも投げ越しつべき天の川隔てればかもあまたすべなき
#[仮名],たぶてにも,なげこしつべき,あまのがは,へだてればかも,あまたすべなき
#[左注]右天平元年七月七日夜憶良仰觀天河 [一云 帥家作]
#[校異]伎 -> 吉 [類][紀]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]小石でも投げて届きそうな天の川であるが隔たっているからだろうか、何とも方法がない
#{語釈]
たぶて 小石を投げる方法か

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1523
#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)
#[原文]秋風之 吹尓之日従 何時可登 吾待戀之 君曽来座流
#[訓読]秋風の吹きにし日よりいつしかと我が待ち恋ひし君ぞ来ませる
#[仮名],あきかぜの,ふきにしひより,いつしかと,あがまちこひし,きみぞきませる
#[左注](右天平二年七月八日夜帥家集會)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]秋風が吹いた日からいつになったら自分が待ちこがれているあなたがいらっしゃるのか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1524
#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)
#[原文]天漢 伊刀河浪者 多々祢杼母 伺候難之 近此瀬呼
#[訓読]天の川いと川波は立たねどもさもらひかたし近きこの瀬を
#[仮名],あまのがは,いとかはなみは,たたねども,さもらひかたし,ちかきこのせを
#[左注](右天平二年七月八日夜帥家集會)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]天の川でそれほど川波はたたないけれども様子を伺っていることも出来ないことだ。近いこの早瀬なのに
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1525
#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)
#[原文]袖振者 見毛可波之都倍久 雖近 度為便無 秋西安良祢波
#[訓読]袖振らば見も交しつべく近けども渡るすべなし秋にしあらねば
#[仮名],そでふらば,みもかはしつべく,ちかけども,わたるすべなし,あきにしあらねば
#[左注](右天平二年七月八日夜帥家集會)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]袖を振るとお互い見えるぐらい近いけれども、渡る方法もない。秋ではないので
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1526
#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)
#[原文]玉蜻蜒 髣髴所見而 別去者 毛等奈也戀牟 相時麻而波
#[訓読]玉かぎるほのかに見えて別れなばもとなや恋ひむ逢ふ時までは
#[仮名],たまかぎる,ほのかにみえて,わかれなば,もとなやこひむ,あふときまでは
#[左注]右天平二年七月八日夜帥家集會
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]玉がほのかに光るようにぼんやりと見えて別れてしまうならば、むやみに恋い思うことだろうか。逢う時までは。
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1527
#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)
#[原文]牽牛之 迎嬬船 己藝出良之 <天>漢原尓 霧之立波
#[訓読]彦星の妻迎へ舟漕ぎ出らし天の川原に霧の立てるは
#[仮名],ひこほしの,つまむかへぶね,こぎづらし,あまのかはらに,きりのたてるは
#[左注]
#[校異]<> -> 天 [類][紀]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]彦星の妻を迎えに行く舟は漕ぎ出したらしい。天の河原に霧が立つのは
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1528
#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)
#[原文]霞立 天河原尓 待君登 伊徃<還>尓 裳襴所沾
#[訓読]霞立つ天の川原に君待つとい行き帰るに裳の裾濡れぬ
#[仮名],かすみたつ,あまのかはらに,きみまつと,いゆきかへるに,ものすそぬれぬ
#[左注]
#[校異]還程 -> 還 [類][紀]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]霞が立つ天の川原であなたを待つとして行って帰った所裳の裾が濡れたことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1529
#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)
#[原文]天河 浮津之浪音 佐和久奈里 吾待君思 舟出為良之母
#[訓読]天の川浮津の波音騒くなり我が待つ君し舟出すらしも
#[仮名],あまのがは,うきつのなみおと,さわくなり,わがまつきみし,ふなですらしも
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕
#[訓異]
#[大意]天の川の天空に浮かぶ船着き場の波音が騒いでいるようだ。自分が待つあなたは舟出したらしい
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1530
#[題詞]大宰諸卿大夫并官人等宴筑前國蘆城驛家歌二首
#[原文]娘部思 秋芽子交 蘆城野 今日乎始而 萬代尓将見
#[訓読]をみなへし秋萩交る蘆城の野今日を始めて万世に見む
#[仮名],をみなへし,あきはぎまじる,あしきのの,けふをはじめて,よろづよにみむ
#[左注](右二首作者未詳)
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,福岡県,太宰府,宴席,土地讃美,地名,植物
#[訓異]
#[大意]女郎花に秋萩が交じる蘆城の野を今日を始めとしていつまでも見よう
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1531
#[題詞](大宰諸卿大夫并官人等宴筑前國蘆城驛家歌二首)
#[原文]珠匣 葦木乃河乎 今日見者 迄萬代 将忘八方
#[訓読]玉櫛笥蘆城の川を今日見ては万代までに忘らえめやも
#[仮名],たまくしげ,あしきのかはを,けふみては,よろづよまでに,わすらえめやも
#[左注]右二首作者未詳
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,福岡県,太宰府,宴席,土地讃美,枕詞,地名
#[訓異]
#[大意]玉櫛笥蘆城の川を今日たからにはいつまでも忘れることが出来ようか
#{語釈]
玉櫛笥 開けるの「あ」にかかるか。未詳。

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1532
#[題詞]笠朝臣金村伊香山作歌二首
#[原文]草枕 客行人毛 徃觸者 尓保比奴倍久毛 開流芽子香聞
#[訓読]草枕旅行く人も行き触ればにほひぬべくも咲ける萩かも
#[仮名],くさまくら,たびゆくひとも,ゆきふれば,にほひぬべくも,さけるはぎかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:笠金村,滋賀県,塩津,羈旅,土地讃美,枕詞,植物
#[訓異]
#[大意]草枕旅行く人も通って触れるならば染みつきそうに咲いている萩であるなあ
#{語釈]
伊香山 滋賀県伊香郡木之本町大音伊香具神社付近の山

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1533
#[題詞](笠朝臣金村伊香山作歌二首)
#[原文]伊香山 野邊尓開有 芽子見者 公之家有 尾花之所念
#[訓読]伊香山野辺に咲きたる萩見れば君が家なる尾花し思ほゆ
#[仮名],いかごやま,のへにさきたる,はぎみれば,きみがいへなる,をばなしおもほゆ
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:笠金村,滋賀県,塩津,羈旅,望郷,地名,植物
#[訓異]
#[大意]伊香山の野辺に咲いている萩を見るとあなたの家にある尾花が思われる
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1534
#[題詞]石川朝臣老夫歌一首
#[原文]娘部志 秋芽子折礼 玉桙乃 道去褁跡 為乞兒
#[訓読]をみなへし秋萩折れれ玉桙の道行きづとと乞はむ子がため
#[仮名],をみなへし,あきはぎをれれ,たまほこの,みちゆきづとと,こはむこがため
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:石川老夫,旅みやげ,植物
#[訓異]
#[大意]女郎花や秋萩を折ってしまおう。玉鉾の道を行くみやげをねだるあの子のために
#{語釈]
石川朝臣老夫(おきな) 未詳
折れれ 折れりの命令形

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1535
#[題詞]藤原宇合卿歌一首
#[原文]我背兒乎 何時曽且今登 待苗尓 於毛也者将見 秋風吹
#[訓読]我が背子をいつぞ今かと待つなへに面やは見えむ秋の風吹く
#[仮名],わがせこを,いつぞいまかと,まつなへに,おもやはみえむ,あきのかぜふく
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:藤原宇合,女歌,宴席
#[訓異]
#[大意]我が背子をいつだろうか、今だろうかと待つごとに顔が見えようか。と思うままに空しく秋の風が吹いているだけだ。
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1536
#[題詞]縁達帥歌一首
#[原文]暮相而 朝面羞 隠野乃 芽子者散去寸 黄葉早續也
#[訓読]宵に逢ひて朝面なみ名張野の萩は散りにき黄葉早継げ
#[仮名],よひにあひて,あしたおもなみ,なばりのの,はぎはちりにき,もみちはやつげ
#[左注]
#[校異]謌 [温][矢][京] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:縁達帥,三重県,名張,羈旅,序詞,植物
#[訓異]
#[大意]宵に逢って朝恥ずかしくて面と向かえなくて隠れるという名張の野の萩は散ってしまった。黄葉が早く後を継げ。
#{語釈]
縁達帥 伝未詳。僧か。

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1537
#[題詞]山上<臣>憶良詠秋野花<歌>二首
#[原文]秋野尓 咲有花乎 指折 可伎數者 七種花 [其一]
#[訓読]秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花 [其一]
#[仮名],あきののに,さきたるはなを,およびをり,かきかぞふれば,ななくさのはな
#[左注]
#[校異]巨 -> 臣 [紀][細][温] / <> -> 歌 [類][矢][京]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,詠物詩,植物
#[訓異]
#[大意]秋の野に咲いている花を指を折って数えると七種類の花だ[其の一]
#{語釈]
其の一  連絡的な意識

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1538
#[題詞](山上<臣>憶良詠秋野花<歌>二首)
#[原文]芽之花 乎花葛花 瞿麦之花 姫部志 又藤袴 朝皃之花 [其二]
#[訓読]萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花 [其二]
#[仮名],はぎのはな,をばなくずはな,なでしこのはな,をみなへし,またふぢはかま,あさがほのはな
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:山上憶良,秋七草,詠物歌,植物
#[訓異]
#[大意]萩の花、尾花、葛の花、瞿麦の花、女郎花また藤袴、朝顔の花
#{語釈]
朝顔 現在の桔梗

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1539
#[題詞]天皇御製歌二首
#[原文]秋<田>乃 穂田乎鴈之鳴 闇尓 夜之穂杼呂尓毛 鳴渡可聞
#[訓読]秋の田の穂田を雁がね暗けくに夜のほどろにも鳴き渡るかも
#[仮名],あきのたの,ほたをかりがね,くらけくに,よのほどろにも,なきわたるかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 日 -> 田 [矢][京]
#[鄣W],秋雑歌,作者:聖武天皇,動物,季節,叙景
#[訓異]
#[大意]秋の田の稲穂の実った田を苅るという音の雁がまだ暗いのに夜の白み始めている時から鳴き渡ることだ
#{語釈]
ほどろ 夜が白みはじめる状態 04/0754

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1540
#[題詞](天皇御製歌二首)
#[原文]今朝乃旦開 鴈鳴寒 聞之奈倍 野邊能淺茅曽 色付丹来
#[訓読]今朝の朝明雁が音寒く聞きしなへ野辺の浅茅ぞ色づきにける
#[仮名],けさのあさけ,かりがねさむく,ききしなへ,のへのあさぢぞ,いろづきにける
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:聖武天皇,動物,季節
#[訓異]
#[大意]今朝の朝開け雁の鳴き声を寒く聞くごとに野辺の浅茅が色づいてきたことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1541
#[題詞]大宰帥大伴卿歌二首
#[原文]吾岳尓 棹<壮>鹿来鳴 先芽之 花嬬問尓 来鳴棹<壮>鹿
#[訓読]我が岡にさを鹿来鳴く初萩の花妻どひに来鳴くさを鹿
#[仮名],わがをかに,さをしかきなく,はつはぎの,はなつまどひに,きなくさをしか
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 牡 -> 壮 [定本] / 牡 -> 壮 [定本]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,植物,動物
#[訓異]
#[大意]我が丘に雄鹿がやって来て鳴く。初萩の花を妻問いにやって来て鳴く雄鹿よ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1542
#[題詞](大宰帥大伴卿歌二首)
#[原文]吾岳之 秋芽花 風乎痛 可落成 将見人裳欲得
#[訓読]我が岡の秋萩の花風をいたみ散るべくなりぬ見む人もがも
#[仮名],わがをかの,あきはぎのはな,かぜをいたみ,ちるべくなりぬ,みむひともがも
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,植物,恋情
#[訓異]
#[大意]我が丘の秋萩の花は風がひどいので散りそうになった。見る人もいればよいのに
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1543
#[題詞]三原王歌一首
#[原文]秋露者 移尓有家里 水鳥乃 青羽乃山能 色付見者
#[訓読]秋の露は移しにありけり水鳥の青葉の山の色づく見れば
#[仮名],あきのつゆは,うつしにありけり,みづどりの,あをばのやまの,いろづくみれば
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:三原王,季節
#[訓異]
#[大意]秋の露はあの移し紙であったのだ。水鳥の色のような青葉の山の色づくのを見ると
#{語釈]
三原王 舎人皇子の子。淳仁天皇の兄。天平勝宝四年七月十日薨去。
移し 染め物の材料。移し紙。花の色を紙に移し取って、それで布を染める


#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1544
#[題詞]湯原王七夕歌二首
#[原文]牽牛之 念座良武 従情 見吾辛苦 夜之更降去者
#[訓読]彦星の思ひますらむ心より見る我れ苦し夜の更けゆけば
#[仮名],ひこほしの,おもひますらむ,こころより,みるわれくるし,よのふけゆけば
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:湯原王,七夕
#[訓異]
#[大意]彦星が恋い思っておられる気持ちよりも見る自分の方が心苦しい。夜が更けていくと
#{語釈]
湯原王 志貴皇子の子
思ひますらむ  別れを悲しむ心  まだ渡河していなくって恋い思う気持ち

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1545
#[題詞](湯原王七夕歌二首)
#[原文]織女之 袖續三更之 五更者 河瀬之鶴者 不鳴友吉
#[訓読]織女の袖継ぐ宵の暁は川瀬の鶴は鳴かずともよし
#[仮名],たなばたの,そでつぐよひの,あかときは,かはせのたづは,なかずともよし
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:湯原王,七夕
#[訓異]
#[大意]織女の袖を並べて寝る宵の夜明けは川瀨の鶴は鳴かないでもよい
#{語釈]
袖継ぐ 袖を並べて寝る

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1546
#[題詞]市原王七夕歌一首
#[原文]妹許登 吾去道乃 河有者 附目緘結跡 夜更降家類
#[訓読]妹がりと我が行く道の川しあればつくめ結ぶと夜ぞ更けにける
#[仮名],いもがりと,わがゆくみちの,かはしあれば,つくめむすぶと,よぞふけにける
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:市原王,七夕
#[訓異]
#[大意]妹のもとへと自分が行く道に川があるので櫓の支えを結んでいると夜が更けたことである
#{語釈]
つくめ 櫓を舟舷から外れないようにする突起のこと。20/4460

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1547
#[題詞]藤原朝臣八束歌一首
#[原文]棹四香能 芽二貫置有 露之白珠 相佐和仁 誰人可毛 手尓将巻知布
#[訓読]さを鹿の萩に貫き置ける露の白玉あふさわに誰れの人かも手に巻かむちふ
#[仮名],さをしかの,はぎにぬきおける,つゆのしらたま,あふさわに,たれのひとかも,てにまかむちふ
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:藤原八束,旋頭歌,比喩,恋歌,動物
#[訓異]
#[大意]雄鹿が萩に貫き通しておいた露の白玉よ。それを軽はずみに誰の人の手に巻こうというのか。
#{語釈]
あふさわに  たやすく 気軽に

#[説明]
鹿と萩を喩える。人妻を誰が気軽に誘うのかという寓意。宴席の歌

#[関連論文]


#[番号]08/1548
#[題詞]大伴坂上郎女晩芽子歌一首
#[原文]咲花毛 <乎曽>呂波猒 奥手有 長意尓 尚不如家里
#[訓読]咲く花もをそろはいとはしおくてなる長き心になほしかずけり
#[仮名],さくはなも,をそろはいとはし,おくてなる,ながきこころに,なほしかずけり
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 宇都 -> 乎曽 [類][紀]
#[鄣W],秋雑歌,作者:坂上郎女,比喩,恋歌
#[訓異]
#[大意]咲く花も軽率な早咲きはうとましい。遅咲きの気長で変わらない気持ちにはやはり及ばないことだ
#{語釈]
をそろ  軽率な 早熟。早咲き 04/0654
いとはし 伊藤 うとし 鬱陶しい いやだ 疎ましい


#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1549
#[題詞]典鑄正紀朝臣鹿人至衛門大尉大伴宿祢稲公跡見庄作歌一首
#[原文]射目立而 跡見乃岳邊之 瞿麦花 總手折 吾者将去 寧樂人之為
#[訓読]射目立てて跡見の岡辺のなでしこの花ふさ手折り我れは持ちて行く奈良人のため
#[仮名],いめたてて,とみのをかへの,なでしこのはな,ふさたをり,われはもちてゆく,ならひとのため
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:紀鹿人,大伴稲公,奈良県,桜井市,みやげ,別れ歌,地名,植物,旋頭歌
#[訓異]
#[大意]射目を立てて跡見の丘のあたりの瞿麦の花よ。束で手折って自分は持って行く。奈良の人のために
#{語釈]
典鑄正(かみ) 正六位上相当。金銀銅の鋳造、瑠璃の加工、職人の名簿などを管理する役所
紀朝臣鹿人  紀女郎の父 06/0990
衛門大尉 宮中諸門の守衛と取り締まる役所 三等官 従六位下相当
大伴宿祢稲公 旅人の異母弟
跡見庄 奈良県桜井市東方  大伴家の荘園がある
射目 鳥獣を射るために隠れる場所 
跡見 動物の足跡を見つける役

#[説明]
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#[番号]08/1550
#[題詞]湯原王鳴鹿歌一首
#[原文]秋芽之 落乃乱尓 呼立而 鳴奈流鹿之 音遥者
#[訓読]秋萩の散りの乱ひに呼びたてて鳴くなる鹿の声の遥けさ
#[仮名],あきはぎの,ちりのまがひに,よびたてて,なくなるしかの,こゑのはるけさ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:湯原王,植物,動物,叙景
#[訓異]
#[大意]秋萩の散り乱れる中で呼び立てて鳴き声が聞こえる鹿の声の遙かなことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1551
#[題詞]市原王歌一首
#[原文]待時而 落<鍾>礼能 <雨>零収 開朝香 山之将黄變
#[訓読]時待ちて降れるしぐれの雨やみぬ明けむ朝か山のもみたむ
#[仮名],ときまちて,ふれるしぐれの,あめやみぬ,あけむあしたか,やまのもみたむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 鐘 -> 鍾 [類][温][矢] / 雨令 -> 雨 [万葉集新考]
#[鄣W],秋雑歌,作者:市原王,季節
#[訓異]
#[大意]その時を待って降る時雨の雨がやんだ。夜が明ける朝は山が黄葉しているだろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1552
#[題詞]湯原王蟋蟀歌一首
#[原文]暮月夜 心毛思努尓 白露乃 置此庭尓 蟋蟀鳴毛
#[訓読]夕月夜心もしのに白露の置くこの庭にこほろぎ鳴くも
#[仮名],ゆふづくよ,こころもしのに,しらつゆの,おくこのにはに,こほろぎなくも
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:湯原王,動物,季節,叙景
#[訓異]
#[大意]夕方の月夜。心もしおれる秤に白露の置くこの庭にコオロギが鳴くことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1553
#[題詞]衛門大尉大伴宿祢稲公歌一首
#[原文]<鍾>礼能雨 無間零者 三笠山 木末歴 色附尓家里
#[訓読]時雨の雨間なくし降れば御笠山木末あまねく色づきにけり
#[仮名],しぐれのあめ,まなくしふれば,みかさやま,こぬれあまねく,いろづきにけり
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 鐘 -> 鍾 [類]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴稲公,奈良,地名,季節
#[訓異]
#[大意]時雨の雨が間断なく降るので三笠山の梢はことご笇く色付いたことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1554
#[題詞]大伴家持和歌一首
#[原文]皇之 御笠乃山能 秋黄葉 今日之<鍾>礼尓 散香過奈牟
#[訓読]大君の御笠の山の黄葉は今日の時雨に散りか過ぎなむ
#[仮名],おほきみの,みかさのやまの,もみちばは,けふのしぐれに,ちりかすぎなむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 鐘 -> 鍾 [類]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,奈良,地名,植物
#[訓異]
#[大意]大王の御笠の山の黄葉は今日の時雨に散り過ぎてしまうだろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1555
#[題詞]安貴王歌一首
#[原文]秋立而 幾日毛不有者 此宿流 朝開之風者 手本寒母
#[訓読]秋立ちて幾日もあらねばこの寝ぬる朝明の風は手本寒しも
#[仮名],あきたちて,いくかもあらねば,このねぬる,あさけのかぜは,たもとさむしも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:安貴王,季節,恋情
#[訓異]
#[大意]秋が立って幾日もしていないのにこの寝ている夜明けの風は袂が寒いことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1556
#[題詞]忌部首黒麻呂歌一首
#[原文]秋田苅 借蘆毛未壊者 鴈鳴寒 霜毛置奴我二
#[訓読]秋田刈る刈廬もいまだ壊たねば雁が音寒し霜も置きぬがに
#[仮名],あきたかる,かりいほもいまだ,こほたねば,かりがねさむし,しももおきぬがに
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:忌部黒麻呂,動物,季節
#[訓異]
#[大意]秋の田を苅る仮庵もまだ壊してもいないのに雁の音が寒く聞こえる。霜も置くばかりに
#{語釈]
忌部首黒麻呂 天平宝字二年外従五位下 08/1008

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1557
#[題詞]故郷豊浦寺之尼私房宴歌三首
#[原文]明日香河 逝廻<丘>之 秋芽<子>者 今日零雨尓 落香過奈牟
#[訓読]明日香川行き廻る岡の秋萩は今日降る雨に散りか過ぎなむ
#[仮名],あすかがは,ゆきみるをかの,あきはぎは,けふふるあめに,ちりかすぎなむ
#[左注]右一首丹比真人國人
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 -> 謌 / 岳 -> 丘 [類][紀] / <> -> 子 [類][紀][温]
#[鄣W],秋雑歌,作者:丹比国人,飛鳥,宴席,豊浦寺,尼,地名,植物,季節
#[訓異]
#[大意]明日香側を行き廻る丘の秋萩は今日降る雨に散り過ぎるだろうか
#{語釈]
丹比真人國人 天平8 従五位下 天平宝字元年 奈良麻呂の乱に連座。伊豆に配流 03/0382

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1558
#[題詞](故郷豊浦寺之尼私房宴歌三首)
#[原文]鶉鳴 古郷之 秋芽子乎 思人共 相見都流可聞
#[訓読]鶉鳴く古りにし里の秋萩を思ふ人どち相見つるかも
#[仮名],うづらなく,ふりにしさとの,あきはぎを,おもふひとどち,あひみつるかも
#[左注](右二首沙弥尼等)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:沙弥尼,飛鳥,宴席,豊浦寺,動物,植物
#[訓異]
#[大意]鶉鳴く古くなってしまった里の秋萩を気の合ったもの同士でともに見ていることだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1559
#[題詞](故郷豊浦寺之尼私房宴歌三首)
#[原文]秋芽子者 盛過乎 徒尓 頭刺不挿 還去牟跡哉
#[訓読]秋萩は盛り過ぐるをいたづらにかざしに挿さず帰りなむとや
#[仮名],あきはぎは,さかりすぐるを,いたづらに,かざしにささず,かへりなむとや
#[左注]右二首沙弥尼等
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:沙弥尼,飛鳥,宴席,豊浦寺,植物
#[訓異]
#[大意]秋萩は盛りが過ぎているのを空しくかざしにも指さずに帰ってしまおうと言うのですか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1560
#[題詞]大伴坂上郎女跡見田庄作歌二首
#[原文]妹目乎 始見之埼乃 秋芽子者 此月其呂波 落許須莫湯目
#[訓読]妹が目を始見の崎の秋萩はこの月ごろは散りこすなゆめ
#[仮名],いもがめを,**みのさきの,あきはぎは,このつきごろは,ちりこすなゆめ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:坂上郎女,奈良県,桜井市,植物
#[訓異]
#[大意]妹の目を始見の崎の秋萩はこの月あたりは決して散ってはくれるな
#{語釈]
妹の目を 始見るの枕詞
始見の崎  訓未詳、所在未詳 妹の目を初めて見るというつながりから「はつみ」と訓む。

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1561
#[題詞](大伴坂上郎女跡見田庄作歌二首)
#[原文]吉名張乃 猪養山尓 伏鹿之 嬬呼音乎 聞之登聞思佐
#[訓読]吉隠の猪養の山に伏す鹿の妻呼ぶ声を聞くが羨しさ
#[仮名],よなばりの,ゐかひのやまに,ふすしかの,つまよぶこゑを,きくがともしさ
#[左注]
#[校異]聞 [類][紀](塙) 門
#[鄣W],秋雑歌,作者:坂上郎女,奈良県,桜井市,地名,動物
#[訓異]
#[大意]吉隠の猪養の山に伏す鹿の妻呼ぶ声を聞くにつけても羨ましいことだ
#{語釈]
猪養の山  未詳 奈良県桜井市吉隠  02/0203
伏す鹿 09/1664H01夕されば小倉の山に伏す鹿の今夜は鳴かず寐ねにけらしも

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1562
#[題詞]巫部麻蘇娘子鴈歌一首
#[原文]誰聞都 従此間鳴渡 鴈鳴乃 嬬呼音乃 <乏>知<在><乎>
#[訓読]誰れ聞きつこゆ鳴き渡る雁がねの妻呼ぶ声の羨しくもあるか
#[仮名],たれききつ,こゆなきわたる,かりがねの,つまよぶこゑの,ともしくもあるか
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 之 -> 乏 [万葉集略解] / 左 -> 在 [万葉集略解] / 守 -> 乎 [定本]
#[鄣W],秋雑歌,作者:巫部麻蘇娘子,恋情,恋歌,大伴家持,動物
#[訓異]
#[大意]誰が聞いただろうか。ここから鳴き渡っていく雁が音の妻を呼ぶ声が羨ましくもあることか。
#{語釈]
巫部麻蘇娘子 伝未詳  家持と交遊。04/0703
誰れ聞きつ 通って来ない恋人を指している。家持のこと。

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1563
#[題詞]大伴家持和歌一首
#[原文]聞津哉登 妹之問勢流 鴈鳴者 真毛遠 雲隠奈利
#[訓読]聞きつやと妹が問はせる雁が音はまことも遠く雲隠るなり
#[仮名],ききつやと,いもがとはせる,かりがねは,まこともとほく,くもがくるなり
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,和歌,巫部麻蘇娘子,恋歌,比喩,動物
#[訓異]
#[大意]聞いたかと妹がお尋ねになる雁の音は本当に遠く雲隠れているようだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1564
#[題詞]<日>置長枝娘子歌一首
#[原文]秋付者 尾花我上尓 置露乃 應消毛吾者 所念香聞
#[訓読]秋づけば尾花が上に置く露の消ぬべくも我は思ほゆるかも
#[仮名],あきづけば,をばながうへに,おくつゆの,けぬべくもわは,おもほゆるかも
#[左注]
#[校異]曰 -> 日 [紀][細][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:日置長枝娘子,大伴家持,恋歌,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]秋らしくなると尾花の上に置く露のように消えてしまいそうに自分は思われてならないことだ
#{語釈]
<日>置長枝娘子 伝未詳

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1565
#[題詞]大伴家持和歌一首
#[原文]吾屋戸乃 一村芽子乎 念兒尓 不令見殆 令散都類香聞
#[訓読]我が宿の一群萩を思ふ子に見せずほとほと散らしつるかも
#[仮名],わがやどの,ひとむらはぎを,おもふこに,みせずほとほと,ちらしつるかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,日置長枝娘子,恋歌,恋情,比喩,植物
#[訓異]
#[大意]我が家の一群の萩を恋い思う子に見せないでほとんど散らしてしまったことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1566
#[題詞]大伴家持秋歌四首
#[原文]久堅之 雨間毛不置 雲隠 鳴曽去奈流 早田鴈之哭
#[訓読]久方の雨間も置かず雲隠り鳴きぞ行くなる早稲田雁がね
#[仮名],ひさかたの,あままもおかず,くもがくり,なきぞゆくなる,わさだかりがね
#[左注](右四首天平八年丙子秋九月作)
#[校異]歌 [西] 謌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,天平8年9月,年紀,動物,季節,叙景
#[訓異]
#[大意]久方の雨の間も置かないで絶えず雲に隠れて鳴き声が聞こえる早稲田の雁の声よ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1567
#[題詞](大伴家持秋歌四首)
#[原文]雲隠 鳴奈流鴈乃 去而将居 秋田之穂立 繁之所念
#[訓読]雲隠り鳴くなる雁の行きて居む秋田の穂立繁くし思ほゆ
#[仮名],くもがくり,なくなるかりの,ゆきてゐむ,あきたのほたち,しげくしおもほゆ
#[左注](右四首天平八年丙子秋九月作)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,天平8年9月,年紀,動物
#[訓異]
#[大意]雲に隠れて鳴き声が聞こえる雁の行っているであろう秋の田の穂が立っていることをしょっちゅう思われてならない
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1568
#[題詞](大伴家持秋歌四首)
#[原文]雨隠 情欝悒 出見者 春日山者 色付二家利
#[訓読]雨隠り心いぶせみ出で見れば春日の山は色づきにけり
#[仮名],あまごもり,こころいぶせみ,いでみれば,かすがのやまは,いろづきにけり
#[左注](右四首天平八年丙子秋九月作)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,鬱屈,奈良,雨隠,天平8年9月,年紀,地名,季節
#[訓異]
#[大意]雨に降り込められて心が鬱陶しく外に出てみると春日の山は色づいたことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1569
#[題詞](大伴家持秋歌四首)
#[原文]雨晴而 清照有 此月夜 又更而 雲勿田菜引
#[訓読]雨晴れて清く照りたるこの月夜またさらにして雲なたなびき
#[仮名],あめはれて,きよくてりたる,このつくよ,またさらにして,くもなたなびき
#[左注]右四首天平八年丙子秋九月作
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,天平8年9月,年紀
#[訓異]
#[大意]雨晴れて清く照っていること月夜にまたさらに雲よたなびくな
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1570
#[題詞]藤原朝臣八束歌二首
#[原文]此間在而 春日也何處 雨障 出而不行者 戀乍曽乎流
#[訓読]ここにありて春日やいづち雨障み出でて行かねば恋ひつつぞ居る
#[仮名],ここにありて,かすがやいづち,あまつつみ,いでてゆかねば,こひつつぞをる
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:藤原八束,奈良,鬱屈,雨隠,地名,恋情
#[訓異]
#[大意]ここにあって春日はどこなどう。雨に包み込まれて出て行かないので恋い続けていることだ

#{語釈]
ここ  不明。佐保あたりの八束邸か。
春日 春日を意識するというのは大伴春日里か
恋ひつつ  家持に対していったもの

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1571
#[題詞](藤原朝臣八束歌二首)
#[原文]春日野尓 <鍾>礼零所見 明日従者 黄葉頭刺牟 高圓乃山
#[訓読]春日野に時雨降る見ゆ明日よりは黄葉かざさむ高円の山
#[仮名],かすがのに,しぐれふるみゆ,あすよりは,もみちかざさむ,たかまとのやま
#[左注]
#[校異]鐘 -> 鍾 [類]
#[鄣W],秋雑歌,作者:藤原八束,奈良,地名
#[訓異]
#[大意]春日野に時雨れが降っているのが見える。明日よりは黄葉をかざそう。高窓の山よ。
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1572
#[題詞]大伴家持白露歌一首
#[原文]吾屋戸乃 草花上之 白露乎 不令消而玉尓 貫物尓毛我
#[訓読]我が宿の尾花が上の白露を消たずて玉に貫くものにもが
#[仮名],わがやどの,をばながうへの,しらつゆを,けたずてたまに,ぬくものにもが
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,植物
#[訓異]
#[大意]自分の家の尾花の上の白露を消さないで玉に貫けたらよいのに
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1573
#[題詞]大伴利上歌一首
#[原文]秋之雨尓 所沾乍居者 雖賎 吾妹之屋戸志 所念香聞
#[訓読]秋の雨に濡れつつ居ればいやしけど我妹が宿し思ほゆるかも
#[仮名],あきのあめに,ぬれつつをれば,いやしけど,わぎもがやどし,おもほゆるかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴利上,恋情
#[訓異]
#[大意]秋の雨に濡れながらいると粗末ではあるけれども自分の妻の家が思われてならない
#{語釈]
大伴利上 伝未詳。村上の誤りか。

#[説明]
雨に濡れているよりもまだマシだという気持ち

#[関連論文]


#[番号]08/1574
#[題詞]右大臣橘家宴歌七首
#[原文]雲上尓 鳴奈流鴈之 雖遠 君将相跡 手廻来津
#[訓読]雲の上に鳴くなる雁の遠けども君に逢はむとた廻り来つ
#[仮名],くものうへに,なくなるかりの,とほけども,きみにあはむと,たもとほりきつ
#[左注](右二首)( / 天平十年戊寅秋八月廿日)
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,動物
#[訓異]
#[大意]雲の上に鳴き声が聞こえる雁のように遠い所におられるがあなたに逢おうと遠路はるばるとやってきたことだ
#{語釈]
#[説明]
同日の歌 巻6・1024~


#[関連論文]


#[番号]08/1575
#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)
#[原文]雲上尓 鳴都流鴈乃 寒苗 芽子乃下葉者 黄變可毛
#[訓読]雲の上に鳴きつる雁の寒きなへ萩の下葉はもみちぬるかも
#[仮名],くものうへに,なきつるかりの,さむきなへ,はぎのしたばは,もみちぬるかも
#[左注]右二首( / 天平十年戊寅秋八月廿日)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,植物
#[訓異]
#[大意]雲の上に鳴いていた雁が寒くなることに萩の下葉は黄葉したことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1576
#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)
#[原文]此岳尓 小<壮>鹿履起 宇加埿良比 可聞可<聞>為良久 君故尓許曽
#[訓読]この岡に小鹿踏み起しうかねらひかもかもすらく君故にこそ
#[仮名],このをかに,をしかふみおこし,うかねらひ,かもかもすらく,きみゆゑにこそ
#[左注]右一首長門守巨曽倍朝臣津嶋( / 天平十年戊寅秋八月廿日)
#[校異]牡 -> 壮 [定本] / 開 -> 聞 [代匠記精撰本]
#[鄣W],秋雑歌,作者:巨曽倍津嶋,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,主人讃美,動物
#[訓異]
#[大意]この岡に鹿を追い立てて伺いねらうようにあれやこれやと心を尽くすのもあなたを思っての故なのだ
#{語釈]
長門守巨曽倍朝臣津嶋  天平2年頃大和守 天平4年外従五位下

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1577
#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)
#[原文]秋野之 草花我末乎 押靡而 来之久毛知久 相流君可聞
#[訓読]秋の野の尾花が末を押しなべて来しくもしるく逢へる君かも
#[仮名],あきののの,をばながうれを,おしなべて,こしくもしるく,あへるきみかも
#[左注](右二首阿倍朝臣蟲麻呂)( / 天平十年戊寅秋八月廿日)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:阿倍虫麻呂,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,主人讃美,植物
#[訓異]
#[大意]秋の野の尾花の葉末を押し靡かせて来た甲斐があって逢ったあなたであるよ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1578
#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)
#[原文]今朝鳴而 行之鴈鳴 寒可聞 此野乃淺茅 色付尓家類
#[訓読]今朝鳴きて行きし雁が音寒みかもこの野の浅茅色づきにける
#[仮名],けさなきて,ゆきしかりがね,さむみかも,このののあさぢ,いろづきにける
#[左注]右二首阿倍朝臣蟲麻呂( / 天平十年戊寅秋八月廿日)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:阿倍虫麻呂,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,主人讃美,動物
#[訓異]
#[大意]今朝鳴いて行った雁の鳴き声で寒いからだろうかこの野の浅茅は色づいたことだ
#{語釈]
阿倍朝臣蟲麻呂 04/0665 天平9年外従五位下 天平勝宝4年従四位下中務大輔で卒

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1579
#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)
#[原文]朝扉開而 物念時尓 白露乃 置有秋芽子 所見喚鶏本名
#[訓読]朝戸開けて物思ふ時に白露の置ける秋萩見えつつもとな
#[仮名],あさとあけて,ものもふときに,しらつゆの,おけるあきはぎ,みえつつもとな
#[左注](右二首文忌寸馬養 / 天平十年戊寅秋八月廿日)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:文馬養,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,植物
#[訓異]
#[大意]朝になった扉を開けて物思いをする時に白露の置いた秋萩をむやみに見せるなよ決して(余計感慨深くなるから)
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1580
#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)
#[原文]棹<壮>鹿之 来立鳴野之 秋芽子者 露霜負而 落去之物乎
#[訓読]さを鹿の来立ち鳴く野の秋萩は露霜負ひて散りにしものを
#[仮名],さをしかの,きたちなくのの,あきはぎは,つゆしもおひて,ちりにしものを
#[左注]右二首文忌寸馬養 / 天平十年戊寅秋八月廿日
#[校異]牡 -> 壮 [紀]
#[鄣W],秋雑歌,作者:文馬養,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,動物,植物
#[訓異]
#[大意]雄鹿のやって来て立ち鳴く野の秋萩は露霜が降り積もって散ってしまったものなのに
#{語釈]
文忌寸馬養 天平9年12月外従五位上。天平10年閏七月七日主税頭

#[説明]
秋萩を妻問う鹿を根底。萩はもう散ってしまているのに鹿が妻問うむなしさを言う。

#[関連論文]


#[番号]08/1581
#[題詞]橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首
#[原文]不手折而 落者惜常 我念之 秋黄葉乎 挿頭鶴鴨
#[訓読]手折らずて散りなば惜しと我が思ひし秋の黄葉をかざしつるかも
#[仮名],たをらずて,ちりなばをしと,わがおもひし,あきのもみちを,かざしつるかも
#[左注](右二首橘朝臣奈良麻呂)( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)
#[校異]朝臣 [類] 宿祢 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物
#[訓異]
#[大意]折らないないで散ったならば惜しいと自分が思った秋の黄葉をかざしたことであるよ
#{語釈]
#[説明]
主人としての歓迎歌。この宴のあるおかげで黄葉を手に入れることが出来たという思い。
#[関連論文]


#[番号]08/1582
#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)
#[原文]<希>将見 人尓令見跡 黄葉乎 手折曽我来師 雨零久仁
#[訓読]めづらしき人に見せむと黄葉を手折りぞ我が来し雨の降らくに
#[仮名],めづらしき,ひとにみせむと,もみちばを,たをりぞわがこし,あめのふらくに
#[左注]右二首橘朝臣奈良麻呂( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)
#[校異]布 -> 希 [万葉集略解]
#[鄣W],秋雑歌,作者:橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物
#[訓異]
#[大意]いとしい人に見せようと黄葉を手折って自分は来たのだ。雨が降っていたが。
#{語釈]
#[説明]
宴の歓迎歌

#[関連論文]


#[番号]08/1583
#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)
#[原文]黄葉乎 令落<鍾>礼尓 所沾而来而 君之黄葉乎 挿頭鶴鴨
#[訓読]黄葉を散らす時雨に濡れて来て君が黄葉をかざしつるかも
#[仮名],もみちばを,ちらすしぐれに,ぬれてきて,きみがもみちを,かざしつるかも
#[左注]右一首久米女王( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)
#[校異]鐘 -> 鍾 [定本]
#[鄣W],秋雑歌,作者:久米女王,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物
#[訓異]
#[大意]黄葉を散らす時雨に濡れてきてあなたの黄葉をかざしにすることだ
#{語釈]
久米女王 系譜未詳。天平七年正月七日従五位下

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1584
#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)
#[原文]<希>将見跡 吾念君者 秋山<乃> 始<黄>葉尓 似許曽有家礼
#[訓読]めづらしと我が思ふ君は秋山の初黄葉に似てこそありけれ
#[仮名],めづらしと,あがおもふきみは,あきやまの,はつもみちばに,にてこそありけれ
#[左注]右一首長忌寸娘( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)
#[校異]布 -> 希 [万葉集略解] / <> -> 乃 [類][紀][温][矢] / <> -> 黄 [西(右書)][類][紀][細]
#[鄣W],秋雑歌,作者:長娘,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,主人讃美,植物
#[訓異]
#[大意]誉め称えるべきだと自分が思っているあなたは秋の山の初めての黄葉に似ていることだ
#{語釈]
長忌寸娘 伝未詳。長忌寸意吉麻呂の同族。

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1585
#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)
#[原文]平山乃 峯之黄葉 取者落 <鍾>礼能雨師 無間零良志
#[訓読]奈良山の嶺の黄葉取れば散る時雨の雨し間なく降るらし
#[仮名],ならやまの,みねのもみちば,とればちる,しぐれのあめし,まなくふるらし
#[左注]右一首内舎人縣犬養宿祢吉男( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)
#[校異]鐘 -> 鍾 [類]
#[鄣W],秋雑歌,作者:縣犬養吉男,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,地名,植物,奈良
#[訓異]
#[大意]奈良山の峰の黄葉を手に取ると散る。時雨の雨は間断なく降るらしい
#{語釈]
縣犬養宿祢吉男 天平宝字二年八月従五位下。肥前守、上野介など

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1586
#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)
#[原文]黄葉乎 落巻惜見 手折来而 今夜挿頭津 何物可将念
#[訓読]黄葉を散らまく惜しみ手折り来て今夜かざしつ何か思はむ
#[仮名],もみちばを,ちらまくをしみ,たをりきて,こよひかざしつ,なにかおもはむ
#[左注]右一首縣犬養宿祢持男( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:縣犬養持男,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物#[訓異]
#[大意]黄葉が散るのが惜しいので手折ってきて今夜かざしにした何を思うことがあろうか
#{語釈]
縣犬養宿祢持男 伝未詳

#[説明]
#[関連論文]



#[番号]08/1587
#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)
#[原文]足引乃 山之黄葉 今夜毛加 浮去良武 山河之瀬尓
#[訓読]あしひきの山の黄葉今夜もか浮かび行くらむ山川の瀬に
#[仮名],あしひきの,やまのもみちば,こよひもか,うかびゆくらむ,やまがはのせに
#[左注]右一首大伴宿祢書持( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴書持,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,植物
#[訓異]
#[大意]あしひきの山の黄葉は今夜も浮かんで行くだろうか。山川の早瀬に
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1588
#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)
#[原文]平山乎 令丹黄葉 手折来而 今夜挿頭都 落者雖落
#[訓読]奈良山をにほはす黄葉手折り来て今夜かざしつ散らば散るとも
#[仮名],ならやまを,にほはすもみち,たをりきて,こよひかざしつ,ちらばちるとも
#[左注]右一首<三>手代人名( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)
#[校異]之 -> 三 [細]
#[鄣W],秋雑歌,作者:三手代人名,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,地名,奈良,植物
#[訓異]
三>手代人名 伝未詳

#[大意]平城山を美しく色どる黄葉を手折ってきて今夜かざしにした。散るのならば散るとしても
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1589
#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)
#[原文]露霜尓 逢有黄葉乎 手折来而 妹挿頭都 後者落十方
#[訓読]露霜にあへる黄葉を手折り来て妹とかざしつ後は散るとも
#[仮名],つゆしもに,あへるもみちを,たをりきて,いもはかざしつ,のちはちるとも
#[左注]右一首秦許遍麻呂( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:秦許遍麻呂,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物#[訓異]
秦許遍麻呂  伝未詳

#[大意]露や霜と争って色づいている黄葉を手折って来て妹とかざしにした。後は散ったとしても
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]



#[番号]08/1590
#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)
#[原文]十月 <鍾>礼尓相有 黄葉乃 吹者将落 風之随
#[訓読]十月時雨にあへる黄葉の吹かば散りなむ風のまにまに
#[仮名],かむなづき,しぐれにあへる,もみちばの,ふかばちりなむ,かぜのまにまに
#[左注]右一首大伴宿祢池主( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)
#[校異]鐘 -> 鍾 [類]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴池主,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物
#[訓異]
#[大意]十月の時雨と争って色づいている黄葉が吹いたら散るであろう風のままに
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1591
#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)
#[原文]黄葉乃 過麻久惜美 思共 遊今夜者 不開毛有奴香
#[訓読]黄葉の過ぎまく惜しみ思ふどち遊ぶ今夜は明けずもあらぬか
#[仮名],もみちばの,すぎまくをしみ,おもふどち,あそぶこよひは,あけずもあらぬか
#[左注]右一首内舎人大伴宿祢家持 / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物
#[訓異]
#[大意]黄葉が散ってしまうのが惜しいので気の合っているもの同士が遊ぶ今夜は明けないでくれないか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1592
#[題詞]大伴坂上郎女竹田庄作歌二首
#[原文]然不有 五百代小田乎 苅乱 田蘆尓居者 京師所念
#[訓読]しかとあらぬ五百代小田を刈り乱り田廬に居れば都し思ほゆ
#[仮名],しかとあらぬ,いほしろをだを,かりみだり,たぶせにをれば,みやこしおもほゆ
#[左注](右天平十一年己卯秋九月作)
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:坂上郎女,奈良県,桜井市,望郷,天平11年9月,年紀,地名
#[訓異]
#[大意]たいして広くもない五百代の小さな田を稲刈りで乱れ、田の庵にいると都のことが思われてならない
#{語釈]
五百代小田  五百代は十段(反)、つまり一町

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1593
#[題詞](大伴坂上郎女竹田庄作歌二首)
#[原文]隠口乃 始瀬山者 色附奴 <鍾>礼乃雨者 零尓家良思母
#[訓読]隠口の泊瀬の山は色づきぬ時雨の雨は降りにけらしも
#[仮名],こもりくの,はつせのやまは,いろづきぬ,しぐれのあめは,ふりにけらしも
#[左注]右天平十一年己卯秋九月作
#[校異]鐘 -> 鍾 [類][矢]
#[鄣W],秋雑歌,作者:坂上郎女,奈良県,桜井市,天平11年9月,年紀,季節
#[訓異]
#[大意]隠口の初瀬の山は色づいた。時雨の雨は降ったらしい
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1594
#[題詞]佛前唱歌一首
#[原文]思具礼能雨 無間莫零 紅尓 丹保敝流山之 落巻惜毛
#[訓読]時雨の雨間なくな降りそ紅ににほへる山の散らまく惜しも
#[仮名],しぐれのあめ,まなくなふりそ,くれなゐに,にほへるやまの,ちらまくをしも
#[左注]右冬十月皇后宮之維摩講 終日供養大唐高麗等種々音樂 尓乃唱此歌詞 弾琴者市原王 忍坂王[後賜姓大原真人赤麻呂也] 歌子者田口朝臣家守 河邊朝臣東人 置始連長谷等十數人也
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 謌 [温][矢][京] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,天平10年10月,年紀,光明皇后,誦唱
#[訓異]
#[大意]時雨の雨はしきりには降るなよ。紅に映えている山の黄葉が散るのが惜しいかことだ
#{語釈]
右は、冬十月、皇后宮の維摩講に終日大唐高麗等種々音樂を供養し、尓乃(しなはち)此の歌詞を唱(うた)ふ。弾琴は市原王、忍坂王[後賜姓大原真人赤麻呂也]。歌子は田口朝臣家守、河邊朝臣東人、置始連長谷等十數人也。

冬十月 天平十年十月
皇后宮  光明子
維摩講  祖父鎌足の七〇周忌の供養。維摩経を講ずる法会。
     維摩詰が仏弟子に説いた大乗的教理を内容とする経典
忍坂王 伝未詳。天平宝字五年正月、無位から従五位下の人か。
田口朝臣家守 伝未詳
河邊朝臣東人  08.0978
置始連長谷 伝未詳 20/4302

#[説明]
時雨に散る黄葉の内容で無常感を出す。を

#[関連論文]


#[番号]08/1595
#[題詞]大伴宿祢像見歌一首
#[原文]秋芽子乃 枝毛十尾二 降露乃 消者雖消 色出目八方
#[訓読]秋萩の枝もとををに置く露の消なば消ぬとも色に出でめやも
#[仮名],あきはぎの,えだもとををに,おくつゆの,けなばけぬとも,いろにいでめやも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴像見,恋愛,植物
#[訓異]
#[大意]秋萩の枝もたわわに置く露が消えるように我が身が消えるならば消えようとも恋心を表に出そうか
#{語釈]
大伴宿祢像見 系譜未詳。宝亀三年従五位上。04/0664 697

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1596
#[題詞]大伴宿祢家持到娘子門作歌一首
#[原文]妹家之 門田乎見跡 打出来之 情毛知久 照月夜鴨
#[訓読]妹が家の門田を見むとうち出で来し心もしるく照る月夜かも
#[仮名],いもがいへの,かどたをみむと,うちいでこし,こころもしるく,てるつくよかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,恋愛,恋情
#[訓異]
#[大意]妹の家の文前の田を見ようと出てきたその気持ちのかいがあって明るく照る月夜であることだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1597
#[題詞]大伴宿祢家持秋歌三首
#[原文]秋野尓 開流秋芽子 秋風尓 靡流上尓 秋露置有
#[訓読]秋の野に咲ける秋萩秋風に靡ける上に秋の露置けり
#[仮名],あきののに,さけるあきはぎ,あきかぜに,なびけるうへに,あきのつゆおけり
#[左注](右天平十五年癸未秋八月見物色作)
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,天平15年8月,年紀,植物,季節
#[訓異]
#[大意]秋の野に咲いている秋萩は秋風に靡いている上に秋の露が置いている
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1598
#[題詞](大伴宿祢家持秋歌三首)
#[原文]棹<壮>鹿之 朝立野邊乃 秋芽子尓 玉跡見左右 置有白露
#[訓読]さを鹿の朝立つ野辺の秋萩に玉と見るまで置ける白露
#[仮名],さをしかの,あさたつのへの,あきはぎに,たまとみるまで,おけるしらつゆ
#[左注](右天平十五年癸未秋八月見物色作)
#[校異]牡 -> 壮 [紀]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,天平15年8月,年紀,動物,植物
#[訓異]
#[大意]雄鹿の朝立つ野辺の秋萩に玉だと見るまでに置いている白露だ
#{語釈]
#[説明]
08/1608H01秋萩の上に置きたる白露の消かもしなまし恋ひつつあらずは
08/1618H01玉に貫き消たず賜らむ秋萩の末わくらばに置ける白露
10/2099H01白露の置かまく惜しみ秋萩を折りのみ折りて置きや枯らさむ

#[関連論文]


#[番号]08/1599
#[題詞](大伴宿祢家持秋歌三首)
#[原文]狭尾<壮>鹿乃 胸別尓可毛 秋芽子乃 散過鶏類 盛可毛行流
#[訓読]さを鹿の胸別けにかも秋萩の散り過ぎにける盛りかも去ぬる
#[仮名],さをしかの,むなわけにかも,あきはぎの,ちりすぎにける,さかりかもいぬる
#[左注]右天平十五年癸未秋八月見物色作
#[校異]牡 -> 壮 [紀]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,天平15年8月,年紀,動物,植物
#[訓異]
#[大意]雄鹿が胸で押しのけて通ったからであろうか秋萩が散って終わってしまった。それとも花の盛りが過ぎたからであろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1600
#[題詞]内舎人石川朝臣廣成歌二首
#[原文]妻戀尓 鹿鳴山邊之 秋芽子者 露霜寒 盛須疑由君
#[訓読]妻恋ひに鹿鳴く山辺の秋萩は露霜寒み盛り過ぎゆく
#[仮名],つまごひに,かなくやまへの,あきはぎは,つゆしもさむみ,さかりすぎゆく
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:石川広成,植物,動物,季節
#[訓異]
#[大意]妻を恋い慕って鹿が鳴く山辺の秋萩は露霜が寒いので盛りが過ぎていくことだ
#{語釈]
石川朝臣廣成  04/0696 天平宝字2年 従五位下
        天平宝字4年2月11日 高円朝臣広世(ひろよ)と改名

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1601
#[題詞](内舎人石川朝臣廣成歌二首)
#[原文]目頬布 君之家有 波奈須為寸 穂出秋乃 過良久惜母
#[訓読]めづらしき君が家なる花すすき穂に出づる秋の過ぐらく惜しも
#[仮名],めづらしき,きみがいへなる,はなすすき,ほにいづるあきの,すぐらくをしも
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋雑歌,作者:石川広成,宴席,植物,季節
#[訓異]
#[大意]いとしいあなたの家の花すすき。穂に出る秋が過ぎることが惜しいことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1602
#[題詞]大伴宿祢家持鹿鳴歌二首
#[原文]山妣姑乃 相響左右 妻戀尓 鹿鳴山邊尓 獨耳為手
#[訓読]山彦の相響むまで妻恋ひに鹿鳴く山辺に独りのみして
#[仮名],やまびこの,あひとよむまで,つまごひに,かなくやまへに,ひとりのみして
#[左注](右二首天平十五年癸未八月十六日作)
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,天平15年8月16日,年紀,孤独,恋情,動物
#[訓異]
#[大意]山彦が響き合うまでに妻を恋いて鹿が鳴く山辺に独りだけでいて
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1603
#[題詞](大伴宿祢家持鹿鳴歌二首)
#[原文]<頃>者之 朝開尓聞者 足日木篦 山<呼>令響 狭尾<壮>鹿鳴哭
#[訓読]このころの朝明に聞けばあしひきの山呼び響めさを鹿鳴くも
#[仮名],このころの,あさけにきけば,あしひきの,やまよびとよめ,さをしかなくも
#[左注]右二首天平十五年癸未八月十六日作
#[校異]項 -> 頃 [紀] / 乎 -> 呼 [類][紀][矢][京] / <> -> 壮 [西(右書)][紀]
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,天平15年8月16日,年紀,動物,季節
#[訓異]
#[大意]この頃の朝明けに聞くとあしひきの山を呼び響かせて雄鹿が鳴くことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1604
#[題詞]大原真人今城傷惜寧樂故郷歌一首
#[原文]秋去者 春日山之 黄葉見流 寧樂乃京師乃 荒良久惜毛
#[訓読]秋されば春日の山の黄葉見る奈良の都の荒るらく惜しも
#[仮名],あきされば,かすがのやまの,もみちみる,ならのみやこの,あるらくをしも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大原今城,奈良,荒都,地名
#[訓異]
#[大意]秋になると春日の山の黄葉を見る奈良の都の荒れるのが惜しいことだ
#{語釈]
大原真人今城 04/0519 伝未詳。大原真人今城。天平宝字元年従五位下  家持と親交が深い。

#[説明]
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#[番号]08/1605
#[題詞]大伴宿祢家持歌一首
#[原文]高圓之 野邊乃秋芽子 此日之 暁露尓 開兼可聞
#[訓読]高円の野辺の秋萩このころの暁露に咲きにけむかも
#[仮名],たかまとの,のへのあきはぎ,このころの,あかときつゆに,さきにけむかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋雑歌,作者:大伴家持,奈良,地名,植物
#[訓異]
#[大意]高圓の野辺の秋萩はこの頃の暁の露で咲いたことであろうか
#{語釈]
#[説明]
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#[番号]08/1606
#[題詞]秋相聞 / 額田王思近江天皇作歌一首
#[原文]君待跡 吾戀居者 我屋戸乃 簾令動 秋之風吹
#[訓読]君待つと我が恋ひをれば我が宿の簾動かし秋の風吹く
#[仮名],きみまつと,あがこひをれば,わがやどの,すだれうごかし,あきのかぜふく
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)]
#[鄣W],秋相聞,作者:額田王,天智天皇,恋情
#[訓異]
#[大意]あなたを待つとして自分が恋い思っていると我が家の簾を動かして秋の風が吹いてくる
#{語釈]
#[説明]
04/0488、9重出
玉台新詠 張華「情詩」五首  文選巻29

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#[番号]08/1607
#[題詞]鏡王女作歌一首
#[原文]風乎谷 戀者乏 風乎谷 将来常思待者 何如将嘆
#[訓読]風をだに恋ふるは羨し風をだに来むとし待たば何か嘆かむ
#[仮名],かぜをだに,こふるはともし,かぜをだに,こむとしまたば,なにかなげかむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:鏡王女,天智天皇,恋情
#[訓異]
#[大意]風だけでも恋い思うのはうらあましい。風だけでも来ることを待つのならば何を嘆こうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1608
#[題詞]弓削皇子御歌一首
#[原文]秋芽子之 上尓置有 白露乃 消可毛思奈萬思 戀管不有者
#[訓読]秋萩の上に置きたる白露の消かもしなまし恋ひつつあらずは
#[仮名],あきはぎの,うへにおきたる,しらつゆの,けかもしなまし,こひつつあらずは
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:弓削皇子,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]秋萩の上に置いている白露が消えるように消えて死んだ方がましだ。恋い続けていずに
#{語釈]
#[説明]
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#[番号]08/1609
#[題詞]丹比真人歌一首 [名闕]
#[原文]宇陀乃野之 秋芽子師弩藝 鳴鹿毛 妻尓戀樂苦 我者不益
#[訓読]宇陀の野の秋萩しのぎ鳴く鹿も妻に恋ふらく我れにはまさじ
#[仮名],うだののの,あきはぎしのぎ,なくしかも,つまにこふらく,われにはまさじ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:丹比真人,奈良県,地名,植物,動物
#[訓異]
#[大意]宇陀の野の秋萩をしのいで鳴く鹿も妻に恋い思うことは自分には勝っていないだろう
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1610
#[題詞]丹生女王贈大宰帥大伴卿歌一首
#[原文]高圓之 秋野上乃 瞿麦之花 丁<壮>香見 人之挿頭師 瞿麦之花
#[訓読]高円の秋野の上のなでしこの花うら若み人のかざししなでしこの花
#[仮名],たかまとの,あきののうへの,なでしこのはな,うらわかみ,ひとのかざしし,なでしこのはな
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 牡 -> 壮 [紀][温][矢]
#[鄣W],秋相聞,作者:丹生女王,大伴旅人,奈良,旋頭歌,贈答,地名,植物
#[訓異]
#[大意]高圓の秋の野のほとりのなでしこの花よ。若いので人がかざしたなでしこの花よ
#{語釈]
丹生女王 04/0553 天平十一年従四位上  天平勝宝三年正四位上

#[説明]
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#[番号]08/1611
#[題詞]笠縫女王歌一首 [六人部王之女母曰田形皇女也]
#[原文]足日木乃 山下響 鳴鹿之 事乏可母 吾情都末
#[訓読]あしひきの山下響め鳴く鹿の言ともしかも我が心夫
#[仮名],あしひきの,やましたとよめ,なくしかの,ことともしかも,わがこころつま
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:笠縫女王,六人部王,田形皇女,忍恋い,動物
#[訓異]
#[大意]あしひきの山の麓を響かせて鳴く鹿の声のように言葉に心引かれることだ。我が心に秘めた夫よ。
#{語釈]
笠縫女王 伝未詳
六人部王 01/0068 風流侍従の臣。天平元年 正四位上で薨去。
田形皇女 天武天皇娘。03/0390 紀皇女の妹

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1612
#[題詞]石川賀係女郎歌一首
#[原文]神佐夫等 不許者不有 秋草乃 結之紐乎 解者悲哭
#[訓読]神さぶといなにはあらず秋草の結びし紐を解くは悲しも
#[仮名],かむさぶと,いなにはあらず,あきくさの,むすびしひもを,とくはかなしも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:石川賀係女郎
#[訓異]
#[大意]年をとったから断っているわけではない。秋草を結ぶのではないが、しっかりと結んだ紐を解くのは悲しいからだ

#{語釈]
石川賀係女郎  伝未詳
秋草  結ぶの枕詞 秋草を結ぶという風習があったか。盛りを過ぎた哀感か。

#[説明]
中年になり、もう恋愛沙汰はめんどうくさいというからか、今まで経験してきた失恋の悲しみを体験したくないからか、寡婦になり前夫への貞節を保とうというからか。

04/0762D01紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首 [女郎名曰小鹿也]
04/0762H01神さぶといなにはあらずはたやはたかくして後に寂しけむかも
04/0764D01大伴宿祢家持和歌一首
04/0764H01百年に老舌出でてよよむとも我れはいとはじ恋ひは増すとも
#[関連論文]


#[番号]08/1613
#[題詞]賀茂女王歌一首 [長屋王之女母曰阿倍朝臣也]
#[原文]秋野乎 旦徃鹿乃 跡毛奈久 念之君尓 相有今夜香
#[訓読]秋の野を朝行く鹿の跡もなく思ひし君に逢へる今夜か
#[仮名],あきののを,あさゆくしかの,あともなく,おもひしきみに,あへるこよひか
#[左注]右歌或云椋橋部女王作 或云笠縫女王作
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:賀茂女王,長屋王,阿倍朝臣,異伝,椋橋部女王,笠縫女王,動物
#[訓異]
#[大意]秋の野の朝に行く鹿の跡もわからないように、どこへ行ったかと思っていたあなたに会った今夜であることだ

#{語釈]
賀茂女王 04/0556 注以外は伝未詳。

#[説明]
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#[番号]08/1614
#[題詞]遠江守櫻井王奉天皇歌一首
#[原文]九月之 其始鴈乃 使尓毛 念心者 <所>聞来奴鴨
#[訓読]九月のその初雁の使にも思ふ心は聞こえ来ぬかも
#[仮名],ながつきの,そのはつかりの,つかひにも,おもふこころは,きこえこぬかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 可 -> 所 [代匠記初稿本]
#[鄣W],秋相聞,作者:桜井王,聖武天皇,大夫,動物
#[訓異]
#[大意]九月のその初雁の使いでも思ってくださる気持ちは聞こえて来ないのであろうか
#{語釈]
遠江守櫻井王 長皇子の孫。高安王の弟。天平3年正月従四位下。後に大原真人姓

#[説明]
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#[番号]08/1615
#[題詞]天皇賜報和御歌一首
#[原文]大乃浦之 其長濱尓 縁流浪 寛公乎 念<比>日 [大浦者遠江國之海濱名也]
#[訓読]大の浦のその長浜に寄する波ゆたけく君を思ふこのころ [大浦者遠江國之海濱名也]
#[仮名],おほのうらの,そのながはまに,よするなみ,ゆたけくきみを,おもふこのころ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 大乃 [類][古](塙) 大 / 此 -> 比 [古][温][京]
#[鄣W],秋相聞,作者:聖武天皇,桜井王,和歌,静岡県,地名
#[訓異]
#[大意]大の浦のその長い浜に寄せる波がゆったりしているようにゆったりと広々とした気持ちであなたを思うこの頃である
#{語釈]
大の浦 静岡県磐田市 あたりの海

#[説明]
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#[番号]08/1616
#[題詞]笠女郎<贈>大伴宿祢家持歌一首
#[原文]毎朝 吾見屋戸乃 瞿麦之 花尓毛君波 有許世奴香裳
#[訓読]朝ごとに我が見る宿のなでしこの花にも君はありこせぬかも
#[仮名],あさごとに,わがみるやどの,なでしこの,はなにもきみは,ありこせぬかも
#[左注]
#[校異]賜 -> 贈 [紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:笠郎女,大伴家持,贈答,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]朝ごとに自分が見る家の瞿麦の花にでもあなたはあってくれないかなあ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1617
#[題詞]山口女王<贈>大伴宿祢家持歌一首
#[原文]秋芽子尓 置有露乃 風吹而 落涙者 留不勝都毛
#[訓読]秋萩に置きたる露の風吹きて落つる涙は留めかねつも
#[仮名],あきはぎに,おきたるつゆの,かぜふきて,おつるなみたは,とどめかねつも
#[左注]
#[校異]賜 -> 贈 [紀][温][矢][京] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:山口女王,大伴家持,贈答,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]秋萩に置いている露が風が吹いて落ちるように落ちる涙は留めることが出来ないことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1618
#[題詞]湯原王<贈>娘子歌一首
#[原文]玉尓貫 不令消賜良牟 秋芽子乃 宇礼和々良葉尓 置有白露
#[訓読]玉に貫き消たず賜らむ秋萩の末わくらばに置ける白露
#[仮名],たまにぬき,けたずたばらむ,あきはぎの,うれわくらばに,おけるしらつゆ
#[左注]
#[校異]賜 -> 贈 [紀][温][矢][京] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:湯原王,娘子,贈答,植物
#[訓異]
#[大意]玉に貫いて消さないでいただきたいものだ。秋萩の末の葉にとりわけ置いている白露を
#{語釈]
湯原王 志貴皇子の子 1544
わくらばに 語義未詳 とりわけ、特別の意味か。

#[説明]
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#[番号]08/1619
#[題詞]大伴家持至姑坂上郎女竹田庄作歌一首
#[原文]玉桙乃 道者雖遠 愛哉師 妹乎相見尓 出而曽吾来之
#[訓読]玉桙の道は遠けどはしきやし妹を相見に出でてぞ我が来し
#[仮名],たまほこの,みちはとほけど,はしきやし,いもをあひみに,いでてぞわがこし
#[左注](右二首天平十一年己卯秋八月作)
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:大伴家持,坂上郎女,奈良,桜井市,天平11年8月,年紀,枕詞
#[訓異]
#[大意]玉鉾の道は遠いけれども愛しい妹に会おうと思って出て来たのですよ
#{語釈]
#[説明]
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#[番号]08/1620
#[題詞]大伴坂上郎女和歌一首
#[原文]荒玉之 月立左右二 来不益者 夢西見乍 思曽吾勢思
#[訓読]あらたまの月立つまでに来まさねば夢にし見つつ思ひぞ我がせし
#[仮名],あらたまの,つきたつまでに,きまさねば,いめにしみつつ,おもひぞわがせし
#[左注]右二首天平十一年己卯秋八月作
#[校異]歌 [西] 謌
#[鄣W],秋相聞,作者:坂上郎女,和歌,大伴家持,天平11年8月,年紀
#[訓異]
#[大意]あらたまの月が立つまでにいらしゃらないと夢に見続けて恋い思いを自分はしたことだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1621
#[題詞]巫部麻蘇娘子歌一首
#[原文]吾屋前<之> 芽子花咲有 見来益 今二日許 有者将落
#[訓読]我が宿の萩花咲けり見に来ませいま二日だみあらば散りなむ
#[仮名],わがやどの,はぎはなさけり,みにきませ,いまふつかだみ,あらばちりなむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 乃 -> 之 [類][紀]
#[鄣W],秋相聞,作者:巫部麻蘇娘子,勧誘,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]我が家の萩の花が咲いた。見にいらっしゃい。今二日ほどで散ってしまうでしょう
#{語釈]
巫部麻蘇娘子  伝未詳  家持と交遊。04/0703 1562

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1622
#[題詞]大伴田村大嬢与<妹>坂上大嬢歌二首
#[原文]吾屋戸乃 秋之芽子開 夕影尓 今毛見師香 妹之光儀乎
#[訓読]我が宿の秋の萩咲く夕影に今も見てしか妹が姿を
#[仮名],わがやどの,あきのはぎさく,ゆふかげに,いまもみてしか,いもがすがたを
#[左注]
#[校異]<> -> 妹 [西(右書)][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:田村大嬢,坂上大嬢,贈答,与歌,植物
#[訓異]
#[大意]私の家の秋の萩が咲いた。夕方の光に今も見たいものです。妹の姿を。
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1623
#[題詞](大伴田村大嬢与<妹>坂上大嬢歌二首)
#[原文]吾屋戸尓 黄變蝦手 毎見 妹乎懸管 不戀日者無
#[訓読]我が宿にもみつ蝦手見るごとに妹を懸けつつ恋ひぬ日はなし
#[仮名],わがやどに,もみつかへるて,みるごとに,いもをかけつつ,こひぬひはなし
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋相聞,作者:田村大嬢,坂上大嬢,贈答,与歌,植物
#[訓異]
#[大意]私の家に紅葉した蛙手を見るたびに妹を心に懸けながら恋い思わない日はありません
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1624
#[題詞]坂上大娘秋稲蘰贈大伴宿祢家持歌一首
#[原文]吾之蒔有 早田之穂立 造有 蘰曽見乍 師弩波世吾背
#[訓読]我が蒔ける早稲田の穂立作りたるかづらぞ見つつ偲はせ我が背
#[仮名],わがまける,わさだのほたち,つくりたる,かづらぞみつつ,しのはせわがせ
#[左注](右三首天平十一年己卯秋九月徃来)
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 蒔 [類][紀] 業
#[鄣W],秋相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,贈答,天平11年9月,年紀,植物
#[訓異]
#[大意]私が種を蒔いた早稲田の穂立ちで作った蔓でですよ。ご覧になって私を思い出してください。
#{語釈]
#[説明]
天平十一年八月は家持は竹田庄にいたので都から大嬢が贈ったか。
伊藤博は、大嬢は家持に連れられて竹田庄に行った。内舎人である家持は大嬢を郎女のもとに留まらせて都に帰った。そこで竹田庄から都の家持に贈った。

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#[番号]08/1625
#[題詞]大伴宿祢家持報贈歌一首
#[原文]吾妹兒之 業跡造有 秋田 早穂乃蘰 雖見不飽可聞
#[訓読]我妹子が業と作れる秋の田の早稲穂のかづら見れど飽かぬかも
#[仮名],わぎもこが,なりとつくれる,あきのたの,わさほのかづら,みれどあかぬかも
#[左注](右三首天平十一年己卯秋九月徃来)
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:大伴家持,贈答,天平11年9月,年紀,植物,讃美
#[訓異]
#[大意]我妹子が仕事として作った秋の田の早稲田の稲穂の蔓を見ても見飽きることはない
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1626
#[題詞]<又>報脱著身衣贈家持歌一首
#[原文]秋風之 寒比日 下尓将服 妹之形見跡 可都毛思努播武
#[訓読]秋風の寒きこのころ下に着む妹が形見とかつも偲はむ
#[仮名],あきかぜの,さむきこのころ,したにきむ,いもがかたみと,かつもしのはむ
#[左注]右三首天平十一年己卯秋九月徃来
#[校異]又 [西(上書訂正)][紀][温][矢] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:大伴家持,贈答,天平11年9月,年紀
#[訓異]
#[大意]秋風の寒いこの頃下に着よう。妹の形見と一方では思い出そう
#{語釈]
<又>身に著(け)る衣を脱ぎて家持に贈るに報へる歌

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1627
#[題詞]大伴宿祢家持<攀>非時藤花并芽子黄葉二物贈坂上大嬢歌二首
#[原文]吾屋前之 非時藤之 目頬布 今毛見<壮>鹿 妹之咲容乎
#[訓読]我が宿の時じき藤のめづらしく今も見てしか妹が笑まひを
#[仮名],わがやどの,ときじきふぢの,めづらしく,いまもみてしか,いもがゑまひを
#[左注](右二首天平十二年庚辰夏六月徃来)
#[校異]擧 -> 攀 [紀][温][矢] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 牡 -> 壮 [紀]
#[鄣W],秋相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,天平12年6月,年紀,贈答,植物
#[訓異]
#[大意]私の家の季節外れの藤の花のように珍しいようにいとしく(賞美すべき)たった今も見たいものだ。妹の笑顔を
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1628
#[題詞](大伴宿祢家持<攀>非時藤花并芽子黄葉二物贈坂上大嬢歌二首)
#[原文]吾屋前之 芽子乃下葉者 秋風毛 未吹者 如此曽毛美照
#[訓読]我が宿の萩の下葉は秋風もいまだ吹かねばかくぞもみてる
#[仮名],わがやどの,はぎのしたばは,あきかぜも,いまだふかねば,かくぞもみてる
#[左注]右二首天平十二年庚辰夏六月徃来
#[校異]
#[鄣W],秋相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,天平12年6月,年紀,贈答,植物
#[訓異]
#[大意]私の家の萩の下葉は秋風のまだ吹いてもいないのにこのように黄葉している
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1629
#[題詞]大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌一首[并短歌]
#[原文]叩々 物乎念者 将言為便 将為々便毛奈之 妹与吾 手携而 旦者 庭尓出立 夕者 床打拂 白細乃 袖指代而 佐寐之夜也 常尓有家類 足日木能 山鳥許曽婆 峯向尓 嬬問為云 打蝉乃 人有我哉 如何為跡可 一日一夜毛 離居而 嘆戀良武 許己念者 胸許曽痛 其故尓 情奈具夜登 高圓乃 山尓毛野尓母 打行而 遊徃杼 花耳 丹穂日手有者 毎見 益而所思 奈何為而 忘物曽 戀云物呼
#[訓読]ねもころに 物を思へば 言はむすべ 為むすべもなし 妹と我れと 手携さはりて 朝には 庭に出で立ち 夕には 床うち掃ひ 白栲の 袖さし交へて さ寝し夜や 常にありける あしひきの 山鳥こそば 峰向ひに 妻問ひすといへ うつせみの 人なる我れや 何すとか 一日一夜も 離り居て 嘆き恋ふらむ ここ思へば 胸こそ痛き そこ故に 心なぐやと 高円の 山にも野にも うち行きて 遊び歩けど 花のみ にほひてあれば 見るごとに まして偲はゆ いかにして 忘れむものぞ 恋といふものを
#[仮名],ねもころに,ものをおもへば,いはむすべ,せむすべもなし,いもとあれと,てたづさはりて,あしたには,にはにいでたち,ゆふへには,とこうちはらひ,しろたへの,そでさしかへて,さねしよや,つねにありける,あしひきの,やまどりこそば,をむかひに,つまどひすといへ,うつせみの,ひとなるわれや,なにすとか,ひとひひとよも,さかりゐて,なげきこふらむ,ここおもへば,むねこそいたき,そこゆゑに,こころなぐやと,たかまとの,やまにものにも,うちゆきて,あそびあるけど,はなのみ,にほひてあれば,みるごとに,ましてしのはゆ,いかにして,わすれむものぞ,こひといふものを
#[左注]
#[校異]短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 婆 [類][紀] 波 / 呼 [類][細][温] 乎
#[鄣W],秋相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,恋情,奈良,地名
#[訓異]
#[大意]つくづくと物思いをするとどう言ってよいか、どうしてよいかもわからない。妹と自分と手をつなぎ合って朝に庭に出て立って夕方には寝床をひいて白妙の袖をお互いに交わし寝た夜はいつもあっただろうか。あしひきの山鳥こそ峰に向かって妻問いをすると言うが、この世の人である自分はどうして一日一夜だけでもも離れていて嘆息して恋い思うのだろうか。このことを思うと胸が痛い。そこで心が慰められるだろうかと高円の山にも野にも行って遊び歩くが華ばかりが咲いているだけなので見る毎にまして思い出されてならない。どのようにして忘れることが出来るだろうか。恋というものを

#{語釈]
#[説明]
天平12年秋頃の作か。

#[関連論文]


#[番号]08/1630
#[題詞](大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌一首[并短歌])反歌
#[原文]高圓之 野邊乃容花 面影尓 所見乍妹者 忘不勝裳
#[訓読]高円の野辺のかほ花面影に見えつつ妹は忘れかねつも
#[仮名],たかまとの,のへのかほばな,おもかげに,みえつついもは,わすれかねつも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,奈良,地名,植物
#[訓異]
#[大意]高円の野辺のかほ花、その顔ではないが面影にちらついて妹は忘れることが出来ないことだ
#{語釈]
かほ花  未詳 かきつばた、おもだか、ひるがお

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1631
#[題詞]大伴宿祢家持贈安倍女郎歌一首
#[原文]今造 久邇能京尓 秋夜乃 長尓獨 宿之苦左
#[訓読]今造る久迩の都に秋の夜の長きにひとり寝るが苦しさ
#[仮名],いまつくる,くにのみやこに,あきのよの,ながきにひとり,ぬるがくるしさ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:大伴家持,安倍女郎,贈答,久邇京,恋情,京都
#[訓異]
#[大意]今造営中の久迩の都に秋の夜の長い中に独りで寝る苦しさよ
#{語釈]
安倍女郎 伝未詳 4/0505、506、514、516 別人か

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1632
#[題詞]大伴宿祢家持従久邇京贈留寧樂宅坂上大娘歌一首
#[原文]足日木乃 山邊尓居而 秋風之 日異吹者 妹乎之曽念
#[訓読]あしひきの山辺に居りて秋風の日に異に吹けば妹をしぞ思ふ
#[仮名],あしひきの,やまへにをりて,あきかぜの,ひにけにふけば,いもをしぞおもふ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,久邇京,恋情,京都
#[訓異]
#[大意]あしひきの山辺にいて秋風が毎日毎日吹くと妹のことが思われてならない
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1633
#[題詞]或者贈尼歌二首
#[原文]手母須麻尓 殖之芽子尓也 還者 雖見不飽 情将盡
#[訓読]手もすまに植ゑし萩にやかへりては見れども飽かず心尽さむ
#[仮名],てもすまに,うゑしはぎにや,かへりては,みれどもあかず,こころつくさむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,尼,贈答,植物
#[訓異]
#[大意]手も休めずに飢えた萩だからだろうか。見ても見飽きることがない。いろいろと手を尽くそう
#{語釈]
心尽さむ あれこれ面倒を見よう

#[説明]
譬喩的に見れば、苦労して我がものにした女だから会っていても飽きない。いろいろと面倒を見ようと言ったもの。尼に甲斐甲斐しく世話をしている男の歌か。

#[関連論文]


#[番号]08/1634
#[題詞](或者贈尼歌二首)
#[原文]衣手尓 水澁付左右 殖之田乎 引板吾波倍 真守有栗子
#[訓読]衣手に水渋付くまで植ゑし田を引板我が延へまもれる苦し
#[仮名],ころもでに,みしぶつくまで,うゑしたを,ひきたわがはへ,まもれるくるし
#[左注]
#[校異]
#[鄣W],秋相聞,作者:尼,贈答
#[訓異]
#[大意]衣手に水泡がかかるまでして苦労して植えた田であるので、引板を自分が引き延ばして守るのも苦しいことだ
#{語釈]
引板我が延へ  板に更に板を継いだもので、鳴子のこと。鳴子を張り巡らして田を野獣から守るのも苦しいことだ

苦し  苦労する、大変だ。

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1635
#[題詞]尼作頭句并大伴宿祢家持所誂尼續末句等和歌一首
#[原文]佐保河之 水乎塞上而 殖之田乎 [尼作] 苅流早飯者 獨奈流倍思 [家持續]
#[訓読]佐保川の水を堰き上げて植ゑし田を [尼作] 刈れる初飯はひとりなるべし [家持續]
#[仮名],さほがはの,みづをせきあげて,うゑしたを,かれるはついひは,ひとりなるべし
#[左注]
#[校異]句等 [矢][京] 句 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],秋相聞,作者:尼,大伴家持,連歌,地名,奈良
#[訓異]
#[大意]佐保川の水を塞き止めて田に上げて植えた田を[尼作]苅った初めての米で炊いた飯を食べるのは一人であろう

#{語釈]
#[説明]
尼が丹誠込めて育てた娘は後の世話は自分一人だろうの意味
尼の娘なのか、尼が育てた娘なのかは不明。

#[関連論文]


#[番号]08/1636
#[題詞]冬雜歌 / 舎人娘子雪歌一首
#[原文]大口能 真神之原尓 零雪者 甚莫零 家母不有國
#[訓読]大口の真神の原に降る雪はいたくな降りそ家もあらなくに
#[仮名],おほくちの,まかみのはらに,ふるゆきは,いたくなふりそ,いへもあらなくに
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:舎人娘子,飛鳥,羈旅,地名
#[訓異]
#[大意]大口の真神の原に降る雪はひどくは降るなよ。宿るべき家もないのに
#{語釈]
舎人娘 伝未詳 01/0061 02/0117
大口の 真神(狼)の枕詞。狼は口が大きいことから言う。
真神の原 奈良県高市郡明日香

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1637
#[題詞]太上天皇御製歌一首
#[原文]波太須珠寸 尾花逆葺 黒木用 造有室者 迄萬代
#[訓読]はだすすき尾花逆葺き黒木もち造れる室は万代までに
#[仮名],はだすすき,をばなさかふき,くろきもち,つくれるむろは,よろづよまでに
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:元正天皇,室讃め,宴席,長屋王,植物
#[訓異]
#[大意]皮すすきである尾花を逆さに葺いて原木を用いて作った家はいつまでも栄えるように
#{語釈]
太上天皇 元正大上天皇

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1638
#[題詞]天皇御製歌一首
#[原文]青丹吉 奈良乃山有 黒木用 造有室者 雖居座不飽可聞
#[訓読]あをによし奈良の山なる黒木もち造れる室は座せど飽かぬかも
#[仮名],あをによし,ならのやまなる,くろきもち,つくれるむろは,ませどあかぬかも
#[左注]右聞之御在左大臣長屋王佐保宅肆宴御製
#[校異]
#[鄣W],冬雑歌,作者:聖武天皇,長屋王,宴席,室讃め,奈良,地名
#[訓異]
#[大意]あをによし奈良の山にある原木を用いて作った部屋は坐っていても飽きないことだ
#{語釈]
天皇 聖武天皇
右は聞くに左大臣長屋王佐保宅に御在(いまし)て肆宴御製

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1639
#[題詞]<大>宰帥大伴卿冬日見雪憶京歌一首
#[原文]沫雪 保杼呂保杼呂尓 零敷者 平城京師 所念可聞
#[訓読]沫雪のほどろほどろに降りしけば奈良の都し思ほゆるかも
#[仮名],あわゆきの,ほどろほどろに,ふりしけば,ならのみやこし,おもほゆるかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 太 -> 大 [類][紀][細] / 保杼呂 [類](塙) 々々々
#[鄣W],冬雑歌,作者:大伴旅人,望郷,太宰府,福岡県,地名
#[訓異]
#[大意]泡のような雪がうっすらと降り敷くと奈良の都が思われてならない
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1640
#[題詞]<大>宰帥大伴卿梅歌一首
#[原文]吾岳尓 盛開有 梅花 遺有雪乎 乱鶴鴨
#[訓読]我が岡に盛りに咲ける梅の花残れる雪をまがへつるかも
#[仮名],わがをかに,さかりにさける,うめのはな,のこれるゆきを,まがへつるかも
#[左注]
#[校異]太 -> 大 [類][紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,福岡県,地名,植物
#[訓異]
#[大意]我が丘に盛んに咲いている梅の花よ。消え残った雪と間違えてしまったよ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1641
#[題詞]角朝臣廣辨雪梅歌<一首>
#[原文]沫雪尓 所落開有 梅花 君之許遣者 与曽倍弖牟可聞
#[訓読]沫雪に降らえて咲ける梅の花君がり遣らばよそへてむかも
#[仮名],あわゆきに,ふらえてさける,うめのはな,きみがりやらば,よそへてむかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 一首 [紀][細]
#[鄣W],冬雑歌,作者:角廣辨,植物
#[訓異]
#[大意]泡雪に降られて咲いている梅の花よ。あなたのもとへ届けると自分だと思ってくださるでしょうか
#{語釈]
角朝臣廣辨(ひろべ) 伝未詳
よそへてむ  なぞらえる

#[説明]
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#[番号]08/1642
#[題詞]安倍朝臣奥道雪歌一首
#[原文]棚霧合 雪毛零奴可 梅花 不開之代尓 曽倍而谷将見
#[訓読]たな霧らひ雪も降らぬか梅の花咲かぬが代にそへてだに見む
#[仮名],たなぎらひ,ゆきもふらぬか,うめのはな,さかぬがしろに,そへてだにみむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:安倍奥道,植物
#[訓異]
#[大意]そんよりと雲って雪も降らないだろうか。梅の花が咲かない代わりになぞえて見よう
#{語釈]
安倍朝臣奥道 天平宝字6年従五位下 宝亀5年但馬守従四位下で卒

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1643
#[題詞]若櫻部朝臣君足雪歌一首
#[原文]天霧之 雪毛零奴可 灼然 此五柴尓 零巻乎将見
#[訓読]天霧らし雪も降らぬかいちしろくこのいつ柴に降らまくを見む
#[仮名],あまぎらし,ゆきもふらぬか,いちしろく,このいつしばに,ふらまくをみむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:若桜部君足,植物
#[訓異]
#[大意]空に霧がかかって雪も降らないだろうか。顕著にこの茂っている柴に降っているのを見ようから
#{語釈]
若櫻部朝臣君足 伝未詳
いつ柴 生い茂っている柴

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1644
#[題詞]三野連石守梅歌一首
#[原文]引攀而 折者可落 梅花 袖尓古寸入津 染者雖染
#[訓読]引き攀ぢて折らば散るべみ梅の花袖に扱入れつ染まば染むとも
#[仮名],ひきよぢて,をらばちるべみ,うめのはな,そでにこきいれつ,しまばしむとも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:三野石守,植物
#[訓異]
#[大意]引きちぎって折ったら散りそうなので梅の花を袖にしごいて入れた。袖が染まるならば染まるとしても
#{語釈]
三野連石守 伝未詳 17/3890 兼従の一人

#[説明]
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#[番号]08/1645
#[題詞]巨勢朝臣宿奈麻呂雪歌一首
#[原文]吾屋前之 冬木乃上尓 零雪乎 梅花香常 打見都流香裳
#[訓読]我が宿の冬木の上に降る雪を梅の花かとうち見つるかも
#[仮名],わがやどの,ふゆきのうへに,ふるゆきを,うめのはなかと,うちみつるかも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:巨勢宿奈麻呂,植物
#[訓異]
#[大意]我が家の冬の木の上に降る雪を梅の花だろうかと見たことである
#{語釈]
巨勢朝臣宿奈麻呂 天平元年 長屋王糾問使。少納言。天平五年従五位下。06/1016

#[説明]
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#[番号]08/1646
#[題詞]小治田朝臣東麻呂雪歌一首
#[原文]夜干玉乃 今夜之雪尓 率所沾名 将開朝尓 消者惜家牟
#[訓読]ぬばたまの今夜の雪にいざ濡れな明けむ朝に消なば惜しけむ
#[仮名],ぬばたまの,こよひのゆきに,いざぬれな,あけむあしたに,けなばをしけむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:小治田東麻呂,枕詞
#[訓異]
#[大意]ぬばたまの今夜の雪にさあ濡れよう。夜が明けた明日の朝には消えるならば惜しいから
#{語釈]
小治田朝臣東麻呂 伝未詳

#[説明]
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#[番号]08/1647
#[題詞]忌部首黒麻呂雪歌一首
#[原文]梅花 枝尓可散登 見左右二 風尓乱而 雪曽落久類
#[訓読]梅の花枝にか散ると見るまでに風に乱れて雪ぞ降り来る
#[仮名],うめのはな,えだにかちると,みるまでに,かぜにみだれて,ゆきぞふりくる
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:忌部黒麻呂,植物
#[訓異]
#[大意]梅の花が枝に散るのかと見るほど風に乱れて雪が降って来る
#{語釈]
部首黒麻呂 天平宝字二年外従五位下 08/1008、1556

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1648
#[題詞]紀少鹿女郎梅歌一首
#[原文]十二月尓者 沫雪零跡 不知可毛 梅花開 含不有而
#[訓読]十二月には沫雪降ると知らねかも梅の花咲くふふめらずして
#[仮名],しはすには,あわゆきふると,しらねかも,うめのはなさく,ふふめらずして
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[訓異]
#[鄣W],冬雑歌,作者:紀少鹿女郎,植物
#[大意]十二月には泡雪が降ると知らないのだろうか。梅の花が咲く。つぼみのままではいないで
#{語釈]
紀少鹿女郎 紀女郎のこと 1452

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1649
#[題詞]大伴宿祢家持雪梅歌一首
#[原文]今日零之 雪尓競而 我屋前之 冬木梅者 花開二家里
#[訓読]今日降りし雪に競ひて我が宿の冬木の梅は花咲きにけり
#[仮名],けふふりし,ゆきにきほひて,わがやどの,ふゆきのうめは,はなさきにけり
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:大伴家持,植物
#[訓異]
#[大意]今日降った雪と競争して我が家の冬木の梅は花が咲いたことである
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1650
#[題詞]御在西池邊肆宴歌一首
#[原文]池邊乃 松之末葉尓 零雪者 五百重零敷 明日左倍母将見
#[訓読]池の辺の松の末葉に降る雪は五百重降りしけ明日さへも見む
#[仮名],いけのへの,まつのうらばに,ふるゆきは,いほへふりしけ,あすさへもみむ
#[左注]右一首作者未詳 但堅子阿倍朝臣虫麻呂傳誦之
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,阿倍虫麻呂,宴席,肆宴,伝誦,宮廷,植物
#[訓異]
#[大意]池のほとりの松の枝葉に降る雪は幾重にも降り積もれ。明日さへも続けて見よう
#{語釈]
御在 聖武天皇
西池邊 平城宮内西側にあった池。続紀天平10年7月7日西池宮
阿倍朝臣虫麻呂 天平9年外従五位下 天平勝宝4年従四位下中務大輔で卒 04/0665 08/1577

#[説明]
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#[番号]08/1651
#[題詞]大伴坂上郎女歌一首
#[原文]沫雪乃 比日續而 如此落者 梅始花 散香過南
#[訓読]沫雪のこのころ継ぎてかく降らば梅の初花散りか過ぎなむ
#[仮名],あわゆきの,このころつぎて,かくふらば,うめのはつはな,ちりかすぎなむ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:坂上郎女,植物
#[訓異]
#[大意]泡雪がこの頃続いてこのように降るならば、梅の初花は散り過ぎてしまうだろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1652
#[題詞]他田廣津娘子梅歌一首
#[原文]梅花 折毛不折毛 見都礼杼母 今夜能花尓 尚不如家利
#[訓読]梅の花折りも折らずも見つれども今夜の花になほしかずけり
#[仮名],うめのはな,をりもをらずも,みつれども,こよひのはなに,なほしかずけり
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:他田廣津娘子,植物
#[訓異]
#[大意]梅の花を折っても折らなくても見てきたが、今夜の花はそれまでのものに及ぶものではなく、すばらしいものだ。
#{語釈]
他田廣津娘子 伝未詳。

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1653
#[題詞]縣犬養娘子依梅發思歌一首
#[原文]如今 心乎常尓 念有者 先咲花乃 地尓将落八方
#[訓読]今のごと心を常に思へらばまづ咲く花の地に落ちめやも
#[仮名],いまのごと,こころをつねに,おもへらば,まづさくはなの,つちにおちめやも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:縣犬養娘子
#[訓異]
#[大意]今のように心をいつも保ち続けているならば、最初に咲く花のように早く地に落ちましょうか。落ちるということはありませんよ。
#{語釈]
縣犬養娘子 伝未詳

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1654
#[題詞]大伴坂上郎女雪歌一首
#[原文]松影乃 淺茅之上乃 白雪乎 不令消将置 言者可聞奈吉
#[訓読]松蔭の浅茅の上の白雪を消たずて置かむことはかもなき
#[仮名],まつかげの,あさぢのうへの,しらゆきを,けたずておかむ,ことはかもなき
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬雑歌,作者:坂上郎女,植物
#[訓異]
#[大意]松の陰になっている浅茅のほとりの白雪を消さないでそのままにしておくことは出来ないものか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1655
#[題詞]冬相聞 / 三國真人人足歌一首
#[原文]高山之 菅葉之努藝 零雪之 消跡可曰毛 戀乃繁鶏鳩
#[訓読]高山の菅の葉しのぎ降る雪の消ぬと言ふべくも恋の繁けく
#[仮名],たかやまの,すがのはしのぎ,ふるゆきの,けぬといふべくも,こひのしげけく
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬相聞,作者:三国人足,恋情,植物
#[訓異]
#[大意]高い山の菅の葉を埋めて降る雪が消えるように、死ぬと言ってもいいほど恋が激しくつのることだ
#{語釈]
三國真人人足 伝未詳 慶雲2年従五位下、養老5年正五位下

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1656
#[題詞]大伴坂上郎女歌一首
#[原文]酒杯尓 梅花浮 念共 飲而後者 落去登母与之
#[訓読]酒杯に梅の花浮かべ思ふどち飲みての後は散りぬともよし
#[仮名],さかづきに,うめのはなうかべ,おもふどち,のみてののちは,ちりぬともよし
#[左注](右酒者<官>禁制称 京中閭里不得集宴 但親々一二飲樂聴許者 縁此和人作此發句焉)
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬相聞,作者:坂上郎女,禁酒,植物,贈答
#[訓異]
#[大意]杯に梅の花を浮かべ、気の許し合った者同士が飲んだ後は散ってもかまわないよ
#{語釈]
右は、酒は官(つかさ)に禁制して「京中の閭里、集宴することを得ず。但し親々(はらから)一二(ひとりふたり)飲樂することは聴許(ゆる)す」といふ。此(これ)に縁りて和(こた)ふる人、此の發句を作る。

禁酒令 天平4年7月、天平9年5月、天平宝字2年2月禁酒令 

天平04/07/05/
秋七月丙午、兩京、四畿内及二監とをして、内典の法に依りて雨を請はしむ。詔して曰く、「春より亢旱して、夏に至るまで雨ふらず。百川水を減し、五穀稍彫めり。實に朕が不徳を以て致す所也。百姓何の罪ありてか筠しけ萎たること甚しき。京及諸國をして、天神地祇、名山大川に自ら幣帛を致さしむべし。又審(つまび)らかに寃獄を録し、骼(かばね)を掩(おほ)ひてししむらを埋み、酒を禁(いさ)めて屠を斷て。高年の徒と鰥寡けい獨の自存すること能はぬ者とには、仍りて賑給を加へよ。其れ天の下に赦すべし。天平四年七月五日の昧爽(よあけ)より已前(さき)の流罪已下、繋囚も見徒も咸(ことごと)く原免(ゆるし)に從へ。其の八虐と劫賊(こふぞく)と官人の法を枉げて財を受けたると監臨主守自ら盜せると、監臨する所に盗せると、強盜竊盜と故殺人と、私鑄錢と、常赦の免(ゆる)さぬとは、この例に在らず。もし贓を以て死に入らば一等を降せ。竊盜一度に贓を計(かぞ)ふるに、三端以下の者は赦の限に入れよ」

天平09/05/19/
壬辰、詔して曰く、「四月以來、疫旱並びに行はれ、田の苗やけ萎ぬ。是に由りて、山川を祈(の)み祷(いの)り、神祇を奠祭(まつ)らしむれども、未だ効驗を得ず。今に至りて猶ほ苦しぶ。朕不徳を以て實(まこと)に茲(こ)の災を致せり。寛仁を思布(しき)て、民の患を救はむと思ふ。國郡をして審(つまび)らかに冤獄を録し、骼(かばね)を掩(おほ)ひてししむらを埋み、酒を禁(いさ)めて屠(はふり)を斷たしむべし。高年の徒と、鰥寡(くわんくわ)けい獨と、京内の僧尼男女、疾に臥せるとの自存せること能はぬ者に、量りて賑給を加へよ。又普(あまね)く文武の職事以上に物を賜へ。天下に大赦す。天平九年五月十九日の昧爽(よあけ)より以前の死罪以下、咸(ことごと)く原免に從へよ。其の八虐と、劫(こふ)賊と、官人の財を受けて法を枉げたると、監臨主守自ら盜せると、監臨する所に盜せると、強盜、竊盜、故殺人と、私鑄錢と常赦の免(ゆる)さぬとは、赦の例に在らず。」

天平宝字02/02/20/
壬戌、詔して曰く、「時に隨ひて制を立つるは、國を有(たも)つ通規にして、代を議りて權を行うは、昔の王の彜訓(いくん)なり。頃者(このごろ)民間(ひとびと)宴集(つどひ)して、動(ややも)すれば違ひ愆(あやまつ)こと有り。或ひは同惡相聚(あつま)りて、濫りに聖化を非(そし)り、或は醉乱して節無く、便ち鬪爭を致す。理(ことわり)に據りて論ふに甚だ道理に乖けり。今より已後、王公已下、供祭療患を除く以外は、酒飮むこと得ざれ。其の朋友寮属、内外の親情、暇景に至りて、相追ひ訪ふべき者は、先づ官司に申して、然る後に集ふこと聽(ゆる)せ。もし犯すこと有らば、五位已上は一年の封祿を停む。六位已下は見任を解かむ。已外は决杖(くわいじょう)八十、冀(ねが)はくは將(もち)て風俗(くにぶり)を淳(すなほ)にして、能く人の善を成し、礼を未識に習ひて、乱を未然に防がむことを」とのたまふ。


#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1657
#[題詞]和歌一首
#[原文]官尓毛 縦賜有 今夜耳 将欲酒可毛 散許須奈由米
#[訓読]官にも許したまへり今夜のみ飲まむ酒かも散りこすなゆめ
#[仮名],つかさにも,ゆるしたまへり,こよひのみ,のまむさけかも,ちりこすなゆめ
#[左注]右酒者<官>禁制称 京中閭里不得集宴 但親々一二飲樂聴許者 縁此和人作此發句焉
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 宮 -> 官 [類][紀][古]
#[鄣W],冬相聞,禁酒,贈答
#[訓異]
#[大意]役所もお許しになっている。今夜ばかり飲む酒であるかも。散ってはくれるな決して
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1658
#[題詞]藤<皇>后奉天皇御歌一首
#[原文]吾背兒与 二有見麻世波 幾許香 此零雪之 懽有麻思
#[訓読]我が背子とふたり見ませばいくばくかこの降る雪の嬉しくあらまし
#[仮名],わがせこと,ふたりみませば,いくばくか,このふるゆきの,うれしくあらまし
#[左注]
#[校異]原 -> 皇 [西(訂正右書)][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬相聞,作者:光明皇后,聖武天皇
#[訓異]
#[大意]我が脊子と二人で見たならば、どんなにこの降る雪がうれしいことだろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1659
#[題詞]他田廣津娘子歌一首
#[原文]真木乃於尓 零置有雪乃 敷布毛 所念可聞 佐夜問吾背
#[訓読]真木の上に降り置ける雪のしくしくも思ほゆるかもさ夜問へ我が背
#[仮名],まきのうへに,ふりおけるゆきの,しくしくも,おもほゆるかも,さよとへわがせ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬相聞,作者:他田廣津娘子,勧誘,植物
#[訓異]
#[大意]立派な木の上に降り積もった雪が積み重なっていくように、重ね重ね恋い思えてならないことだ。今夜訪ねて来て下さい。我が背よ。
#{語釈]
他田廣津娘子 伝未詳 1652

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1660
#[題詞]大伴宿祢駿河麻呂歌一首
#[原文]梅花 令落冬風 音耳 聞之吾妹乎 見良久志吉裳
#[訓読]梅の花散らすあらしの音のみに聞きし我妹を見らくしよしも
#[仮名],うめのはな,ちらすあらしの,おとのみに,ききしわぎもを,みらくしよしも
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬相聞,作者:大伴駿河麻呂,植物,恋情
#[訓異]
#[大意]梅の花を散らす嵐の音のように、うわさにばかり聞いていた我が妹を見ることはうれしいことだ
#{語釈]
大伴宿祢駿河麻呂 1438 大伴宿祢駿河丸  駿河麻呂 03/0400  大伴御行の孫 天平15年従5位下。宝亀7年参議卒。坂上二嬢の夫。

#[説明]
#[関連論文]


#[番号]08/1661
#[題詞]紀少鹿女郎歌一首
#[原文]久方乃 月夜乎清美 梅花 心開而 吾念有公
#[訓読]久方の月夜を清み梅の花心開けて我が思へる君
#[仮名],ひさかたの,つくよをきよみ,うめのはな,こころひらけて,あがおもへるきみ
#[左注]
#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
#[鄣W],冬相聞,作者:紀少鹿女郎,恋情,枕詞,植物
#[訓異]
#[大意]ひさかたの月夜が清らかなので梅の花が開くように心も解けて自分が恋い思う我が君であることだ
#{語釈]
紀少鹿女郎 1452、1648 紀女郎のこと

#[説明]
#[関連論文]