1.簿記の役割
簿記は、企業が行うさまざまな経営活動を記録して、企業の財政状態と経営成績を明らかにする役割をもっている。
 財政状態とは、一定時点において企業が持っている現金、物品や借金などの現在高のことである。経営成績とは、一定期間において企業がどのような経営活動により、どれだけの利益をあげたかということである。

 

2.簿記の種類
簿記は、記帳の方法のちがいによって、単式簿記と複式簿記に分けられる。
 単式簿記は、金銭の貸し借りや物品の増減などにかぎって、簡単な記帳方法により記録・計算・整理する簿記である。
 複式簿記は、企業のすべての経営活動を、定められた一定の方法にもとづいて、組織的に記録・計算・整理する簿記である。

 

3.会計期間
 企業は、毎日継続して経営活動を行っているが、一定期間を区切り、財政状態や経営成績を明らかにする必要がある。この一定期間を簿記では会計期間といい、ふつう1年を1会計期間としている。また、会計期間の初めを期首といい、終わりを期末という。
 個人企業は1月1日から12月31日までの1年を1会計期間としている。この場合、1月1日が期首、12月31日が期末となる。

 

4.資産
 企業は、経営活動を行うために、現金、商品、建物、備品などの財貨を持っている。また、将来一定の金額を受け取る債権を持っている。債権には、商品を掛け売りしたときに生じる売掛金や、現金を貸し付けたときに生じる貸付金がある。
 このような財貨や債権を、簿記では資産という。

 

5.負債
 企業は、経営活動にともない、債務を負うことがある。債務には、商品を掛け仕入れしたときに生じる買掛金や、現金を借り入れたときに生じる借入金がある。
 このような債務を簿記では、負債という。

 

6.純資産
 資産の総額から負債の総額を差し引くと、企業の正味の資産が求められる。この正味の資産を、簿記では純資産という。
 資産−負債=純資産

 

7.貸借対照表
企業では、一定時点の財政状態を明らかにするために、資産・負債・純資産の内容を示した報告書を作成する。これを貸借対照表(Balance Sheet;B/S)という。
 貸借対照表は、左側に資産を、右側に負債と純資産を記入する。
 資産は、流動資産(換金性の高い当座資産や棚卸資産)と固定資産(1年以上使用する資産)に分けられる。
 負債は、流動負債(決算から1年以内に支払わなければならない債務)と固定負債(長期借入金や返済期間が1年を超える債務)に分けられる。負債は、他人資本とも呼ばれる。
 純資産は、株式の発行などで株主から払い込まれた金額と企業が自ら得た利益部分で、自己資本とも呼ばれる。

貸借対照表

資産

負債

他人資本

純資産

自己資本



8.資産・負債・純資産の増減と純損益の計算
期末純資産が期首純資産よりも増加した場合、その増加額を純利益という。反対に、期末純資産が期首純資産よりも減少した場合、その減少額を純損失という。なお、純利益と純損失をあわせて、純損益という。
 期末純資産=期首純資産+当期純利益
期首貸借対照表
期末貸借対照表  

資産

¥2,000,000

負債¥1,800,000

純資産

¥200,000













資産

¥2,100,000

負債¥1,800,000

純資産

¥300,000










期末純資産の¥300,000は、期首純資産の¥200,000と当期純利益の¥100,000を合計したもの

9.収益と費用
簿記では、純資産が増加する原因となることがらを収益といい、反対に純資産が減少する原因となることがらを費用という。収益には、売上高や雑収入などがある。費用には、給料や広告宣伝費などがある。
 収益総額から費用総額をひくと当期純利益を求めることができる。この純利益は貸借対照表の当期純利益と一致する。
 収益−費用=当期純利益

10.損益計算書
企業では1会計期間の経営成績を明らかにするために、収益と費用の内容を示した報告書を作成する。これを損益計算書(Profit and Loss Statement;P/L)という。
 損益計算書は左側に費用と当期純利益、右側に収益を表示する。
 費用+当期純利益=収益


損益計算書(勘定式)

費用

収益

当期純利益


損益計算書(報告式)

売上高

売上原価

売上総利益

販売費及び一般管理費

営業利益

営業外収益

営業外費用

経常利益

特別利益

特別損失

税引前当期利益

法人税等

当期純利益



11.取引
資産・負債・純資産に増減が生じることがらを、簿記では取引という。

12.勘定
簿記では、取引が発生すると、資産や負債などにどのような増減をもたらしたかを細かく区分して記録・計算する。このような、記録・計算を行うために設けられた簿記上の区分を勘定という。この勘定につけられた名前を勘定科目という。
 勘定科目をさらに細分化し管理する場合に設ける勘定を、補助科目という。

勘    定

貸借対照表に記載する勘定

損益計算書に記載する勘定

資産の勘定

負債の勘定

純資産の勘定

費用の勘定

収益の勘定

現金
普通預金
売掛金
商品
短期貸付金
仮払金
建物附属設備
車両運搬具
器具備品
減価償却累計額
電話加入権
差入保証金

買掛金
未払金
未払税金
預り金
長期借入金

資本金
当期未処分利益

仕入高
役員報酬
給料手当
雑給
法定福利費
荷造運賃発送費
広告宣伝費
交際費
旅費交通費
通信費
消耗品費
事務用品費
修繕費
水道光熱費
支払手数料
リース料
燃料費
保険料
減価償却費
地代家賃
賃借料
租税公課
支払利息

売上高


13.勘定口座とその形式
簿記では、勘定科目ごとに、増減を記録・計算する。そのために設けた帳簿上の場所を勘定口座という。勘定口座は中央で二分して左側と右側に欄をそなえている。簿記では、勘定口座の左側を借方、右側を貸方という。
 勘定口座は、学習の便宜上、簡略化したT字形(Tフォーム)を用いる。

14.勘定記入法
取引によって生じた資産や負債などの増減は、次のようにして勘定に記入される。
 @ 資産の勘定は、貸借対照表の借方に記載されるので、資産の増加は借方に記入する。資産の減少は貸方に記入する。
 A 負債の勘定は、貸借対照表の貸方に記載されるので、負債の増加は貸方に記入する。負債の減少は、借方に記入する。
 B 純資産の勘定は、貸借対照表の貸方に記載されるので、純資産の増加は貸方に記入する。資本の減少は、借方に記入する。
 C 収益に勘定は、損益計算書の貸方に記載されるので、収益の発生は貸方に記入する。
 D 費用の勘定は、損益計算書の借方に記載されるので、費用の発生は借方に記入する。



15.取引の二面性
簿記では、取引を各勘定口座に記入するが、そのためには、発生した取引を分解して、資産・負債・純資産・収益・費用にどのような増減があったか調べなければならない。
 取引は、借方要素の一面と貸方要素の一面の両方が含まれている。これを取引の二面性という。別のいい方をすれば、取引には「原因」と「結果」の二面が含まれているといえる。


16.仕訳
簿記では、発生した取引を勘定口座に記入する前に、取引を借方と貸方の要素に分解し、どの勘定の借方と貸方にいくらの金額を記入するのかを記録する。これを仕訳という。
 1対1の仕訳を単一仕訳、1対多または多対多の仕訳を複合仕訳という。


17.転記
取引を仕訳したあと、次にこの仕訳を勘定口座に書き移す。そのとき、仕訳の借方の勘定科目について、勘定口座の借方に、日付と金額を記入する。また、仕訳の貸方の勘定科目について、その勘定口座の貸方に、日付と金額を記入する。この手続きを転記という。

18.仕訳帳と総勘定元帳
簿記では、取引→仕訳→転記の順序で手続きが進められる。仕訳は仕訳帳に記入する。仕訳帳には、発生した取引を発生順に記入する。
 取引の記録に必要なすべての勘定口座をそなえた帳簿を総勘定元帳という。仕訳帳に記入された仕訳は、この総勘定元帳に転記する。決算にさいしては、総勘定元帳の記録にもとづいて、貸借対照表・損益計算書が作成される。


19.試算表の役割と種類
取引は仕訳帳に仕訳し、元帳に転記する。この元帳への転記が、正しく行われたかどうかを確かめる目的で試算表を作成する。
 試算表には合計試算表、残高試算表、合計残高試算表の三つの種類がある。
 合計試算表は、元帳の各勘定口座の借方合計額と貸方合計額を集計して作成する。合計試算表には、各勘定科目ごとの取引総額が集計されるので、経営活動状況を判断するための資料として役に立つ。
 残高試算表は、元帳の各勘定口座の残高を集計して作成する。勘定口座の残高にもとづいて決算が行われるので、残高試算表は決算の資料としても役に立つ。
 合計残高試算表は、合計試算表と残高試算表と一つにまとめたものである。


20.貸借平均の原則
一つの取引は、つねに借方要素と貸方要素にそれぞれ同額で分解され、それにもとづいて勘定口座に記入される。このためすべての勘定口座の借方に記入した金額の合計と、貸方に記入した金額の合計は、いつも等しくなる。これを貸借平均の原則という。試算表は、この貸借平均の原則を利用して、元帳の勘定口座の記入が正しく行われているかどうかチェックするために作成される。

21.決算書
1会計期間の終わりには、その期間の経営成績と期末の財政状態を明らかにするため、帳簿の記録のもとづいて、貸借対照表と損益決算書が作成される。この一連の手続きを決算といい、決算を行う日を決算日という。また、作成される貸借対照表と損益計算書を決算書(財務諸表)という。

22.3分法
3分法では、商品売買の記録を、繰越商品勘定、仕入勘定、売上勘定の3勘定に分けておこなう。
 @ 商品を仕入れたときは、その商品の原価を仕入勘定の借方に記入する。
 A 商品を売り渡したときは、その商品の売価を売上勘定の貸方に記入する。
 B 売れ残って次期に繰り越される商品は、その商品の原価で繰越商品勘定の借方に記入される。


23.売上原価の算出
正しい期間損益計算を行うためには、収益に対応する原価を求めなければならない。そのため商品売買の記帳を3分法で行っている場合、決算にさいして、売上原価を算出する修正仕訳を行う必要がある。
 コンピュータ会計では、簿記とは異なる下記のような仕訳を行う。
 @ 開始月は期首棚卸高を「期首商品棚卸高」として振り替える。そして開始月末の商品棚卸高を貸方に「期末商品棚卸高」として入力する。
 A 翌月からは、前月の商品棚卸高を当月の期末棚卸高と入れ替える。

仕訳例(会計期間が平成16年4月1日〜17年3月31日の場合)
4月30日
借方勘定 借方金額 貸方勘定 貸方金額 摘  要
期首商品棚卸高 ***** 商品 ***** 4月・月初商品
商品 ##### 期末商品棚卸高 ##### 4月・月末商品
5月31日
借方勘定 借方金額 貸方勘定 貸方金額 摘  要
期末商品棚卸高 ##### 商品 ##### 4月・月末商品
商品 &&&&& 期末商品棚卸高 &&&&& 5月・月末商品


24.減価償却費の意味
建物、備品、車両運搬具など土地を除く固定資産は、使っているうちに老朽化したり、陳腐化したりして、その価値が徐々に減少する。この価値の減少を減価といい、決算にさいして、この減価額を費用として計上する。この手続きを減価償却という。

25.減価償却費の計算方法
定額法(旧)・・・(取得原価−残存価額)÷ 耐用年数
 月次決算の場合は、年間の減価償却費を12で割る。
 取得原価は、取得価格と、その資産の購入に伴う付随費用を含めたもの。
 残存価額は、固定資産の耐用年数が尽きた時点で残っていると考えられる金額で、法人税法では、取得原価の10%を残存価額という。
 耐用年数は、固定資産の寿命のこと。

※平成19年4月1日以降取得の資産は、計算方法が変わった。


26.減価償却の記帳方法
直接法・・・借方に減価償却費勘定、貸方に固定資産のそれぞれの勘定を記入する方法。固定資産の勘定残高は次期に繰り越す。この勘定残高を帳簿価額といい、固定資産の現在高を示す。
間接法・・・借方に減価償却費勘定、貸方に減価償却累計額勘定を記入する方法。この場合、固定資産の帳簿価格は、取得原価から減価償却累計額勘定の残高を差し引いて求められる。


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