活動報告

被爆二世に対する被爆者援護法の適用をめざす
− 被爆80年 被爆二世シンポジウムinながさき −
 10月11日(土)14時から、長崎原爆資料館ホールにおいて、全国被爆二世団体連絡協議会(全国被爆二世協)、長崎県被爆二世の会、原水爆禁止長崎県民会議の主催で「被爆80年 被爆二世シンポジウムinながさき」を開催しました。
 被爆二世は、親が被爆した原爆放射線の遺伝的影響の可能性を否定できない原爆(核)の被害者です。全国には30万人とも50万人ともいわれる被爆二世が存在しています。その中には、過去と現在の健康被害や将来の健康不安に苦しんでいる被爆二世がいます。全国被爆二世協では1988年の結成以来、被爆二世に対する原爆二法や被爆者援護法の適用を求めてきました。今年は被爆から80年を迎えましたが、未だに実現をしていません。全国被爆二世協では、被爆80年を迎えるにあたって、被爆二世問題の解決を国民的課題に押し上げ、市民の皆さんの支援のもとに、国会での政治的解決につなげていくために、6月11日の東京(院内)でのシンポジウムに引き続き、長崎でもシンポジウムを開催することにしました。そして、今後広島での開催も予定しています。
 シンポジウムでは、崎山昇(全国被爆二世協会長、長崎の被爆二世)、在間秀和(弁護士・原爆被爆二世の援護を求める集団訴訟弁護団長)、振津かつみ(兵庫医科大学非常勤講師 遺伝学(放射線基礎医学)、内科医)の3人が登壇しました。
 まずはじめに崎山会長が、被爆二世が置かれた状況や全国被爆二世協のこれまでの活動を紹介し、「今年は被爆80年を迎えましたが、全国被爆二世協では、被爆二世集団訴訟をたたかいながら(長崎訴訟は敗訴が確定したが、広島訴訟は最高裁で審理が続いている)、被爆者問題議員懇談会(2023年5月に衆参40人の国会議員が参加し設立)と連携し、被爆二世問題の解決を国民的課題に押し上げ、市民の皆さんの支援のもとに、被爆二世に対する被爆者援護法の適用をめざしていこうとしています。被爆二世も高齢化し、最高齢は79歳になります。長崎訴訟の原告3人も既に亡くなりました。被爆二世に対する被爆者援護法の適用は喫緊の課題です。」と理解と支援、協力をお願いしました。
 続いて在間弁護団長が、「核被害の惨状を風化させないために〜被爆二世訴訟が目指すもの〜」と題して、「地裁・高裁の判決は、「被爆二世」を援護法における「被爆者」として援護の対象とするかどうかは「国会の立法裁量」であり、憲法に反する立法不作為とは言えないと請求を棄却した。裁判官には原爆放射線による被害の悲惨さ・深刻さに対する認識の欠如があるのではないか。原爆放射線による被害の深刻さを風化させてはならない。日本は未だに自らの戦争責任を自らの責任で裁いていない。自らの手で、自らの戦争責任を問うことができる社会の実現、核兵器を絶対悪として、過去の原爆被害者に向き合い、核兵器廃絶に向けた国際的努力ができる社会の実現が大きな課題である。」と述べられました。
 そして振津さんは、「被爆二世の健康と命を守るために」と題して、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)・2001年報告より「電離放射線に被ばくしたヒト集団では、放射線誘発遺伝的(遺伝性)疾患はこれまでのところ証明されていない。しかしながら、電離放射線は普遍的な突然変異誘発原であり、植物や動物を用いた実験研究では、放射線は遺伝的影響を誘発できるという結果が示されている。従って、ヒトはこの点に関して例外でないであろう。」を紹介し「放射線が遺伝的影響を誘発できること」に関してヒトは例外ではないというのが国際的コンセンサスであることや、親の生殖細胞の被曝を介して、被爆二世は身体に原爆放射線の影響を受けている可能性があること、マウスの研究ではガンなどの多因子疾患になりやすい体質が、親の放射線被曝によって子どもに誘発され、さらに次世代以降に受け継がれることが明らかになっていることを述べられ、「ヒトの放射線による遺伝的(継世代)健康影響を直接にヒトで証明するようなデータは未だ数多くないが、マウス実験などの結果などからも被爆二世の遺伝的(継世代)健康影響の可能性は否定できない。このことは国内外の科学者のコンセンサスである。ヒトの調査で「統計的に有意な影響」を示す結果が多数得られない限り、対策を講じない、健康や医療の保障を行わないというのでは、被爆二世の健康と命を守ることはできない。」と訴えられました。
 会場には広島や福岡からも含めて約80人が参加し、参加者との意見交換も行われ、被爆二世に対する被爆者援護法の適用をを求める今後の運動に大きな力になりました。
(文責:全国被爆二世協 会長 崎山昇)



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