2007.  3月の作品   春の女神 『 佐保姫 』

                                     
島崎藤村   「若菜集」より

  佐保姫

ねむれる春ようらわかき
かたちをかくすことなかれ
たれこめてのみけふの日を
なべてのひとのすぐすうち
さめての春のすがたこそ
まだ夢のまの風情なれ
 
ねむげの春よさめよ春
さかしきひとのみざるまに
若紫の朝霞
かすみの袖をみにまとへ
はつねうれしきうぐひすの
鳥のしらべをうたへかし
 
ねむげの春よさめよ春
ふゆのこほりにむすぼれし
ふるきゆめぢをさめいでゝ
やなぎのいとのみだれがみ
うめのはなぐしさしそへて
びんのみだれをかきあげよ

ねむげの春よさめよ
あゆめばたにの早わらびの
したもえいそぐ汝があしを
たかくもあげよあゆめ春
たえなるはるのいきを吹き
こぞめの梅の香にゝほへ


春の女神「佐保姫」が、天から舞い下りると
野山も里も草花が一斉に芽吹くといわれています。




春の女神『佐保姫』    高さ32cm

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