■その他・街での発見、ふれあい


 ホテル、ショッピングセンター、レストラン、駅など…多くの建物の入り口はドア! 観音開きのドアは、車いす利用者の天敵なのだが、そのために自動ドアボタンが付加してある。このショッピングセンターの2階出入口には、ドアが10枚近くならんでいたが、自動ドアが設置してあるのは、写真の場所だけ。あとは全て手動(…というか力任せだから人力?!)。



 軽く押すと、ドアが開いてくれる補助装置。日本では見たことがない。
 必要な人のために必要なサービスを配分するという考え方の象徴と感じた。日本の"自動ドアだらけ"は本当に無駄。健康な人は自力で、必要な人は自動で…という選択肢は、効率と支えあいの精神であろう。脱帽である。



 ほぼ全てのエレベーターのボタン(タッチパネル)が車いす利用者も使える高さになっている。日本のように健常者用、障害者用の2カ所もボタンがあるような無駄はない! これぞユニバーサル。写真のボタンの高さは、立っている人の腰位置くらい。



 背の高い人は、少し腰を曲げないといけない高さにボタン設定。ここには3機のEVがあったが、全てが同じ位置。



 携帯電話の普及にともない、日本では見かけることが少なくなった公衆電話。バンクーバーでも多くの人が携帯電話を使っていたが、左の写真のような公衆電話は街のあちらこちらにあった。



 それらのいくつかに、聴覚や視覚に障害を持つ人のためのサービス標示がされていた。もちろん電話機には点字シールあり。
サービスを必要とする人は赤いボタンを押すと、近隣からスタッフが駆けつけてくるシステム…と想像する。



 日本ではいまだに「耳の聞こえない人からお願いされたら協力してあげましょう」なんて慈悲を促すようなCMを流してるくらいだから、権利意識が随分違うことがよくわかる。

 巨大ショッピングモール・メトロタウンのトイレ。なんと5種類のトイレあり!



 メトロタウンのトイレは、男女それぞれの一般トイレへも車いすでアクセスできる。その上、専用トイレも設けてあった。このような車いす専用トイレはバンクーバーでは珍しかった。家族・夫婦などによる異性の介護者が同伴する場合、親切な設備と言える。

 もう一つの嬉しいサービスは、ファミリートイレ。最近日本では、誤ったユニバーサルデザイン化が進み、障害者用トイレの中にベビーシート(赤ちゃんのおむつ交換台を主とした用途)の設置が多くなった。その結果、一般トイレを使えない障害者が、急を要す場合にもトイレへ入れないという現象が起きている。もちろんベビーシートも必要な設備だから、きちんと分けるべきだと以前から思っていた。よい見本だ!こういうサービスが行き届いたショッピングセンターには大勢の人が集まってくるものだ。平日とは思えない人ごみには圧巻。

 エスカレーターと階段しかないぞ、さぁ、どうしよう。でも目の前には、ちゃんとリフトが装備!

 市内の某デパート(店名を忘れた)の1階から2階へアクセスする際のひとこま。



バンクーバーは坂が多く、傾斜地に建っているこのデパートには2階以上しかエレベーターがない。そのために、車いす用の昇降リフトが真中の通路に設置されていた。ボタンを押すと直ぐにスタッフが飛んできてくれた。ここでは安全のため、スタッフが同伴してアクセスするシステム。
普段は格納。ボタンを押せば、スタッフが駆けつけセットする。その対応は敏速!



 同様のシステムは、日本でもJRなどを中心に多数使われている。費用の面でも技術の面でも、エレベーターに比べれば格段に手ごろな点から導入されているのであろう。ただし、この機器はスタッフのサポートを必要とするので、導入者側は責任を持って職員への教育研修を行う必要がある。
 バンクーバーにおける私たちの経験では、呼び出しボタンを押してからの対応が敏速で、スタッフはとても紳士的な応対であった。
 一方日本でのことを思い出してみると…あまりよい思い出がない。「職員の人数が少なくて忙しいので、ちょっと待ってくれ」と言われたり、やっとかけつけてくれても機械の使い方が分からず、他の職員に聞きに行くなど、お粗末な対応に今まで何度立腹したことか。二年前、JR九州のある駅では、機械の動かし方が分からないスタッフのお陰で30分近く立ち往生して、結局トイレに間に合わなかった経験まである!(その駅舎には、車いすで使えるトイレが1階にはないため!)お金をかけて機械を準備しても、職員の人権意識や実務研修がきちんと行われていなければ、全く役に立たないのだ。やっと少しずつ整い始めた設備も、とりあえず形だけ…これが日本の現状であるとあらためて感じた。



 デパートの中で、エレベーターを探してウロウロしていると、一人の青年が声をかけてきた。「どこへ行くのか?何を探しているのか?」…食品を買いに行くと答えると、「僕もそちらへ用があるから」と案内してくれた。片言とも言えない英語でしばらく会話して、記念に写真を撮って別れた。嬉しかった!
 バンクーバーは彼のようにフレンドリーな人が多い。「この電動車いすは、見たことないぞ。どこの国の製品?」「どのくらいのスピードが出るんだ?」「どこから来たの?」なんて風に、旅の間に何度も聞かれた。
 人口200万人の都市だから、日本で言えば名古屋市と同じくらいの規模。名古屋には二年前に一度だけ行ったことがあるが、そのときには車いすを使う人や、杖をついたお年よりなど殆ど見なかった。それに比べてバンクーバーでは、車いすの人がなんと多いことか! すれ違えば、気軽に声をかけてくれる。「どこから来たのか?」「カップルなのか?」「よい旅を!」…と。そのふれあいはとても温かった。残念でならないのは、私たちの語学力の弱さ。本当ならば、権利意識や日常生活の様子、バンクーバーのバリアフリー度に満足しているか…など聞きたいことは山のようにあるのだが…。次回はもっと勉強して行かなくては、と決心するところだ。

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