■BC州障害者連合会訪問、旅の終わりに、旅行会社情報

 "障害を持つ人たちの連合会"の看板はシンプル。気づかずに通り過ぎそうになった。



 書いてもらった住所のメモを片手にブロードウェイ通りを探して歩いた。バンク―クーバーは碁盤の目状の街なので初めてであっても迷うことなく分かりやすい。「あった!」そこは雑居ビルの2階である。
 エレベーターを降りると、会社のように、入り口左側と正面に受付カウンターがあり、男性職員がいる。想像と少し違う。もっとアバウトな雰囲気を勝手にイメージしていたので緊張。



 事務所に入り、勇気を出して大きな声で「ハロー!」と挨拶。しかし、そんな来訪者は滅多にいないのか、冷静に「何のようだ?」「アポイントは?」と聞かれてしまった。市役所で伝えたことと同じことを一生懸命再度伝えた。
 奥から電動車いすに乗った女性スタッフが出てきて、私たちの対応をとても丁寧にしてくれた。彼女の名前はロビン。十分な英語が話せず申し訳ない、資料をいただければそれを日本に持ち帰り勉強する…と伝えると、「気にしないでいい。今はインターネットがあるから、これから連絡を取り合おう」と言ってくれた。そして、あれやこれやと抱えきれないほどの資料を持ってきてくれた。



 フロア内のそれぞれの担当者に交渉して、「あの資料はあげてもいい?」「印刷してあげて」などと優しく対応してくれた。届く資料を「これは交通システムについて」などと説明してくれた。



 事務所内では、法律相談も行われているらしく、弁護士もいるようであった。掲示板には、交通問題・住宅問題などの各課題ごとに整理された資料が貼り出されており、今までの取り組みや実績が読み取れるようになっていた。また、障害の種別ごとの課題も掲示されていた。AIDSも一つの項目として貼り出されているのを見て、この連合会で一緒に取り組んでいるのだと分かった。



 左からキャロルさん、ロビンさん。いただいた資料は、掲示板に貼り出されているものを中心に、その他特別に印刷してもらったものもある。これらの資料をもとに、権利意識と障害者運動の歴史を学ぶつもりだ。次回訪問するときには、日本での活動報告など、こちらからも何かプレゼントしたいものだ。




 バンクーバーには日本のような自動販売機は、街角には殆ど置かれていない。フェリーの中や、空港でお菓子とコーラの販売機を少し見かけただけである。ただし、新聞の販売機はいたるところにある。新聞配達という文化はないのだろう。朝は、みんな新聞片手にカフェへ入って行く。
注目したいのは、新聞自販機の高さである。全てが上の写真の形態。だから車いす利用者にとっては便利!でも、それが万人にやさしいユニバーサルデザインかどうかは???



 バンクーバーの中心部、ロブソンストリート。ここにはブティックや人気ブランドのショップがならぶ。路上駐車する場合には、2時間までなら合法、パーキングチケットを購入して、フロントガラスに貼り付けておくように指示してある。路上であっても、障害者用には、優先的な駐車スペースが確保してある。



 日本では、障害者が利用する車については、事前に警察へ届出をして、"駐車禁止除外指定車"という、お札をもらう必要がある。それをフロントに置いておけば、路上駐車が認められる仕組み(ただし、道路交通法の定める駐車禁止場所には止められない)。その点がバンクーバーとどう違うかは残念ながら確認できなかった。
 ただ、車いすマークの標示された駐車スペースは非常に多かった。法的な規制があると思うので今から調べてみようと思う。



 レストランの駐車場。車いすマークの標示が5台分くらいあった。日曜日の昼時だったからか、店内には、車いすに乗った老人や、杖をついた老人などが家族や友人と一緒に食事に訪れていた。100人くらい入りそうな店内の広さ、1割くらいは何らかの障害を持った人であったように思う。
 街へはもちろん、歳をとっても気軽に食事に行ける場所があること自体、この国の豊かさをあらわしている。



 午後8時半に夕暮れを迎える。太陽の高さで行動する習慣があるので、ふと時計を見て「えっ、もうこんな時間?!」と驚くことが何度あったことか。ビジネスマンたちは、定刻にきっちり仕事を終えて、午後6時にはパブでビールを片手にアイスホッケー・地元バンクーバーカナックスの試合で盛り上がっている。
 日本の中だけで培われてきた自分の価値観とは、なんとちっぽけなものだったのだろう。そのひとつひとつを考え直す必要があると思い知らされた旅であった。



 百聞は一見にしかず…「桜が満開の春。バンクーバーは花がいっぱい!」と聞いていたのに、周囲の山には雪が降り、連日10℃以下の気温の中ブルブルとふるえていた。これも行ってみなければ分からないこと(笑)。街で出会った多くの人たちに感謝! 今度来るときは、話し掛けられても落ち着いて堂々と返事ができるようにがんばります。


DATA (4泊6日) 実質的現地滞在時間・3日半
移動の詳細 移動手段
2002.4.14 山口市内自宅〜福岡空港国際線は自家用車。駐車場、駐車料1日1000円(障害者500円)
      福岡空港国際線〜国内線間移動(ANAスカイアシストなど、利用する航空会社へ申し込んでおけば、
      移動の手伝いをお願いできる。無料シャトルバス、スロープ付。車いすのまま乗車可能)
      福岡空港国内線〜名古屋空港国内線 全日空便
      名古屋空港国内線〜国際線移動ANAスカイアシストへ申し込んでおけば、移動の手伝いをお願いできる。
      スーツケースなども全て運ぶのを手伝ってもらった。無料シャトルバス、スロープ付。車いすのまま乗車可能)
      名古屋国際空港〜バンクーバー国際空港夕刻PM5時30分発 エアーカナダ便
2002.4.19 名古屋国際空港PM3時半着 エアーカナダ便
      以下、往路と同様に。PM9時30分山口市内自宅着。

旅行手配:潟`ックトラベルセンター(名古屋市中区錦2-19-25)
       ハートTOハート事業部(障害者や高齢者などへの旅行サービスを専門的に手がけている部門)
       TEL:052-222-7611 FAX:052-222-1223

       http://www.heart-to-heart.ne.jp/


こぼればなし
 帰国した途端に、夢から覚めた。名古屋空港の国際線―国内線間を走るシャトルバスでのこと。近年日本にも、少しずつ低床型のバスが走りはじめた。乗務員の操作によってスロープがかけられ、私たちは車内に乗り込む仕組。1台目の乗務員はスロープの出し方を知らずに悪戦苦闘。仕方なく次の便を待ったが、なんと2台目もまた同じ。職員が機械の使い方を知らないことは、駅などでも経験したことがあるので、"またかぁ…"と慣れてはいたが、このときは帰国直後、しかも2台連続。さすがにショックであった。ハード面のバリアフリー化をすすめることは、厳しい財政下では大変なことであろう。しかし、せっかくお金をかけ、また技術開発して使いやすい設備が整っても、ソフト面が伴わなければ、その設備もないものと同じだ。ソフトの教育には時間がかかる。人の意識も簡単には変わらない。サービス産業に携わる人たちへの研修には、ぜひ障害当時者が参加し、生の声を伝えていく制度が必要ではなかろうか。ときには生き様を語り、暮らしを伝え、どのようなサービスを求めるかを説くことによって、意識改革が進み、人権尊重の土壌が生まれる。VIP待遇されない一市民の障害者が、それぞれの地域の中で快適に暮らせる社会を作らねばならない。

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