・・・夕焼けの告白。やばい、ばれた!?・・・





 最近大学はコンビニの美少女バイトについての噂でもちきりだ。
 「夜間学校の生徒らしいよ? 」「そっか昼間もいるモンな!」「苗字が無時だろ?あんまりないよなぁ」
 「苦学生らしいぜ!携帯持ってないんだってよ」「なになに?何の話? 」「ちっ女には関係ねーよ」「なによそれー」
 「私知ってるよ。あのセブンのバイトのこの話でしょ? 」
 「お、話しわかるねぇ!? 」「あの子ぶち(すごく)かわいいやん。まあ、私ほどじゃないけどぉ? 」
 「言ってろよブスー」「あはは」
 
 まいったな。あいつはこの事に、気づいているのだろうか?いや、多分気づいてはいないだろう。零奈の存在がこの街でだんだん大きくなってきている。
 「おい亮太はどう思うよ?あの子」
 ギクッ。話を振られた。まさか同棲してるとは言えない。
 「あー、可愛いんじゃないか?」まぁ素直な意見だ。
 「だめだめ、こいつあの子の話になると急に無口になるから」
 ふーん、と1人の女がこっちを見た。
 「まさか西塔くん、あの子について何か知ってるんじゃないの?もしかして従姉妹とか? 」
 
 げっ、何を言い出すんだこの女。当たってないにしろ、勘がよすぎる。
 俺に疑惑を向けたこの女は風見鶏美空(かざみどり みそら)という名前だ。ショートカットが男くさいが、隠れ美人としてなかなかの人気である。
 「おー!そんなことは夢にも思わなかった。亮太、まさかお前ー! 」
 「んなわけねーだろお? 」
 「だよな。あの子とおまえの血が繋がってるわけねえよなぁ」
 一瞬動揺したが、なんとか男連中には隠し通せた。でも、美空がこっちに疑いの目を向け続けていたのを、俺は見逃さなかった……
 
 授業が終わって、俺は帰り道の立体交差点を歩いていた。
 「おーい西塔くん!一緒に帰ろうよー! 」
 振り返ると美空がいた。
 「お前が俺と帰るなんて、大学始まっていらいだな」
 「2人きりになるのはね。ほら、最近はやらないけどよく君の部屋でみんなでパーティしてたじゃない」
 んー……すっかり忘れてた。そんなこともあったな。うんうん、あの頃はよかった。交差点のちょうど半分まできたところで、  美空は振り向いてこう言った。
 「でね? 話は変わるけど最近のあなたについて!」
 ……なんですか?
 「みんなに隠し事してない?」
 してないと言えば嘘になる。してると言えばしてる。でも言えたモンじゃない。言わないぞ、俺は。
 「私見たのよ。あなたの部屋に噂のあの子が入っていくところ! 」

 げ!! なんてことだ。しっかりと目撃者がいた!どう言い訳をすればいいんだ?
 同居してたこと隠した理由……なんて言えばいい? 下手な言い訳しても無駄だ、こいつには効果がない。
 「……」
 話が浮かばない。美空がこちらを穴が開くほどじっとみている。
 もう頭の中は真っ白だ。
 「あ……それはなっあいつは……あぁっ!?」

 俺の声に美空が振り向く。
 そこには零奈が立っていた。どうやら買い物の帰りらしく、スーパーの袋を持っていた。
 「あなたが……無時さん?」
 美空が聞く。
 「? 君はなんで私の名前を知っているんだ?」
 「私、亮太君の友達の風見鶏美空って言うの。あなたは亮太君とどういう関係なの?」
 零奈はきょとんとしている。
 「質問には答えて欲しい。何故、君は私の名前を知っている?」
 ……美空は少し戸惑っているし、零奈もちょっと困惑気味だ。この2人、性格的に合わなそうだな〜

 「あなた、この街で結構有名なのよ。コンビニでバイトしてるでしょう? それで苗字くらいは知ってるのよ」
 「私はあなたがコンビニに来たところを見てはいないが……」
 零奈はものすごーく不振な顔つきである。
 「え? あなた訪れた客の顔全部覚えてるって言うの?」
 「当然だ。私の記憶の限りでは、あなたはあのセブンイレブンには私がバイトしているときは、訪れていないはずだ」
 美空はかなり戸惑っている。
 「……その通りよ。でも噂で聞いたから知ってるの! あなたは、亮太君とどんな関係なの!? 」
 零奈は少し目を上向け、次の言葉を考えている。
 「私と亮太は……同棲しているだけだ」
 !! また誤解招くようなことをペラペラと!! こいつは!
 少しは、少しは誤魔化すようなことはしないのかね!? 零奈君!!
 「へぇ、へぇ〜、へー、同棲? なんで? 亮太君、彼女、未成年よね?」
 美空の顔がヒクヒクしている。いや、怒るところじゃないだろ? 俺の彼女ってわけじゃないんだしお前……

 「……親戚の子なんだ……」
 かなり苦し紛れの嘘。俺って嘘つくの下手なんだよなぁ。
 「だったら、なんで今まで隠してたの?おかしくない? 」
 そうですよね! おかしいですよね!? だってしょうがないじゃないかぁ……
 「そうだぞ亮太。嘘をつくことはない。君、私と亮太は赤の他人なんだよ」
 バカかこいつは! 零奈は隠すことをしない! 訳分からないところでバカ正直!
 「か……帰るぞ!!」
 「あ……おいっ」
 俺は零奈の手を引いて逃げるように走り去った。いや、ようにじゃなくて、実際逃げてた。

 俺はアパートまで走ったのでついた頃には息が切れてた。
 しかし零奈は平然としている。なんだこの体力差は。
 「あのなぁ、おまえ自分のことなんであんなにペラペラ喋るんだよ?ばれていいのかよっ自分の事……」
 零奈は、ああそのことかって感じで空を見ている。
 「夕陽が綺麗だな。昔母と見ていたのを思い出す。ちょうどこんな感じで……影が長くてな……時がスロウに過ぎていた」
 「人の話を聞けよ」

 零奈が俺の顔を見た。びっくりするくらい整った眉と目が定規のようにきっちり見つめてくる。
 「亮太、隠すのは止めたんだ。普通の子はきっとそんなに自分を隠したりして生きてはいないだろう?本当に大事なこと以外は、もっとオープンにしていくことに決めたんだ」
 「それでいいのか?組織とか何とかって言うのは」
 「いいんだ。見つかったときはその時だし。でも私は嘘をつきながら生きていきたくない。」
 お前はいいかもしれないが、俺はそれでとばっちりがくるんじゃないか? ええい知るか! 俺だってその時はそのときだ!

 「あのな、それで……私は君が女と歩くのを見ているとなんだか、悔しくなった……」

 はいそうですか…………て、え? なに? なんだって?