わが国には、長い歴史と伝統をもつ、世界に誇るべきいろいろの工芸がある。しかし、このすぐれた工芸を生む「技」すなわち無形の文化財も、近時、時流に押されて衰亡の危機に瀕している。昭和二十六年文化財保護法が施行され、これらわが国の工芸のうち、歴史上もしくは芸術的に価値の高いものを国として保護することとなり、昭和二十九年七月重要無形文化財指定の制度が設けられた。また国家指定をうけている工芸技術の保護者を中心として、昨昭和三十年八月社団法人日本工芸会が結成されたが、日本工芸会は陶磁、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、其他の工芸作家を網羅した、伝統的な工芸作家の最も大きな集団である。昨年は第二回総合展覧会を催して好評を博したが、 このたびは正会員支部会員の外〈註 この表現は、「第二回展」が、正会員≠ニ支部会員≠フ出展だったということを示しています〉に、会員紹介の作家の作品を厳選して、第三回展をひらく運びとなつた。 出陳の作品は伝統的なわが国工芸のうちでも優れたものであるが歳とともにわれわれは更に水準を高めることを期している。 |
「伝統工芸展」の出展は、 @ [第一回展]旧「無形文化財」認定者のみの公開≠フ場。 A [第二回展]=「日本工芸会」の「正会員」と「支部会員」が出展。 B [第三回〜第六回展」=「日本工芸会」の「正会員」もしくは理事の推薦によって「工芸会」以外にも出展の機会が与えられた。 C [第七回展以後]=一般公募 |
序 本展も回を重ね、皆様の御支援と関係者並びに出品者各位の御尽力により第七回を迎えることになりました。 今回より一般公募を行い、その目的とする趣旨を尊重し、一方現代の要求する新味の面に向って徐々に成果を上げるよう努めております。 幸い本年は文化財保護法十週年〈ママ〉にあたり、また列国議会同盟会議が開催され多くの外来客に鑑賞される機を得たことは誠に意義あることと存じます。 日本の伝統工芸は、今や世界の注目を集めその資料の要求も高まっております。この図録が、それらの要求に受け入れられれば幸いです。 社団法人 日本工芸会
会 長 細 川 護 立 |
●第三回日本伝統工芸展開催要項 出品資格 3 社団法人日本工芸会理事又は正会員一人以上の推せんする作家又は技術者。 出品申込料(一品につき)
A 重要無形文化財保持者 無料 B 日本工芸会正会員 無料 C 日本工芸会研究会員 200円 D 日本工芸会理事又は正会員が推せんする者 500円 |
この「第三回工芸展」に、新兵衛、休和両氏は、2作品ずつを出展され、その2作品ともに入選したのですが、両氏には、入選するかしないかは、当然=A問題外のことでした。 (このことは、現存する、関係者の、複数の「書簡」によっても明らか≠ナす。) 「左」の「写真」は、『第三回 日本伝統工芸展図録』の3頁目≠ノ、「重要無形文化財保持者(俗称 人間国宝)」の石黒宗麿氏の「作品」を挟んで、 大きく′f載された上=12代坂倉新兵衛氏、下=三輪休和氏のいずれも「抹茶茶碗」です。 この『第三回 日本伝統工芸展図録』は、他の回の何れの『図録』とも異なり、『図録』への掲載の仕方に、大きさ=A順番≠ノ差≠ェ見られるという特徴があると、私は考えています。 例えば、1頁目=℃ミ団法人日本工芸会賞の近藤悠三氏と宇野三吾氏の「各1作品、2作品」が、 2頁目≠ノは、「人間国宝」の富本憲吉氏、浜田庄司氏と、当時30歳という若さの[支部会員]ながら、傑出した力≠持っておられ、その後も、国際的な活躍をされた清水卯一氏の「各1作品、計3作品」が掲載されているのです。 私は、この清水氏の「作品」が2頁目≠ノ掲載されていることこそ、この『図録』の編集方針の特異さを確認できる根拠≠セと思っています。 そして、3頁目≠ェ、この「左」なのです。 〈なお、『図録』には、原則的に、一作者=1作品が原則のため、この1作品しか載っていません。〉 |