第12話『落ちこぼれ少年の春と、伝説の超弾幕』

(出典:グーグルAI)※ストーリはフィクションです


第12話『落ちこぼれ少年の春と、伝説の超弾幕』

※今回はレッド隊長の士官学校入学秘話です

国内の音響防衛エリートたちが集結する最高学府――国立音響防衛士官学校(アカデミー・オブ・レゾナンス)。
春の麗らかな陽気の中、入学試験の全日程が終わり、合格の是非を決める事務手続きが厳かに行われていた。

「――校長、この男に免じて、どうかもう一度だけ書類に目を通してはいただけんでしょうか……!」

校長室。
士官学校の生きる伝説であり、現在は教鞭を執る『特級トランペット使い』のフォルテ教官は、筋骨隆々とした巨体を小さく縮め、しどろもどろになりながら事務長と校長に頭を下げていた。学生の前では鬼と恐れられるこの漢も、上司の前ではめっぽう弱いのである。

校長は手元の書類を一瞥し、深い溜息をついた。
「フォルテ君。このレッド君というのは、筆記試験も体力試験も我が校の門をくぐる以前の問題なのだがね。戦場では実力のないモノから死んでいくのだよ。能力のない者の入学は認められん」

「えっとでありますね……それはですね……はい……」
フォルテ教官の額から冷や汗が流れる。しかし、彼にはここで引き下がるわけにいかない絶対の理由があった。

(『わての道場の出身者が試験に落ちるなんて、そんな不名誉な事はないドスよねぇ?』)数日前、京都の名門・轟雷流のシルキー師範から受けた、ドスの効きまくった京都弁の電話が脳裏をよぎる。気配だけで直立不動になるトラウマ級の脅迫だった。

さらに、追い打ちをかけるように当の母親(スカーレット)からも微笑みながら釘を刺されている。
(『フォルテ教官、わたしのかわいこちゃんを悲しませる事はしないよね〜? もし落ちたら、私、悲しくてこの職場やめちゃうかも、ウフフ……』)
赤ちゃんを諭すような極上の柔和な笑顔。だが、国に数人しかいない特級打楽器使いに職場をボイコットされたら、国家の防衛網は一瞬で崩壊する。実質、これ以上ない国家レベルの脅迫であった。

「……彼には、推薦状があります! 国立音響防衛隊のエース・スカーレット特級打楽器使い、轟雷流のシルキー師範、そしてこの俺、フォルテの名前が揃っているのです!」

「……はぁ。そこまでの大物が揃って頭を下げては、落とすわけにもいかんか」

こうして、大人たちの高度な(?)政治的思惑と脅迫の末、レッドの士官学校入学は奇跡的に決まったのである。


「よかったわねぇ、レッド。あなたがいっぱい頑張ったから、神様がご褒美をくれたのよ」

桜の木々がうららかな春風に揺れる、国立音響防衛士官学校の入学式当日。

久しぶりに会った息子の小さな手を優しく包み込むように繋ぎ、巨大な正門をくぐる一人の女性がいた。
彼女こそ、国内の誰もが知る音響防衛隊のエース、スカーレット。
総重量がとんでもなく重く、セッティングするだけで大人の腰を粉砕するはずのヤマハ最高峰ドラム『PHXシリーズ』のケースを、まるでピクニックのお弁当箱でも持っているかのように軽々と片手で携え、終違終始ニコニコ顔でご機嫌に歩いている。

「えっ……あの、新入生の付き添いできている、めちゃくちゃ綺麗な女性って……」
「おいおい嘘だろ、あれって『長州の虎』ことスカーレット様じゃないか!?」
「うわぁ、本物初めて見た……! 後で絶対にサイン貰いに行こうぜ!」
「っていうか、その隣にいる男の子が息子さんか!? (ゴクリ)一体どれだけ恐ろしい天才エリートなんだ……!」
「ヒソヒソ……ヒソヒソ……」

式場へと続く並木道では、集まった全国のピチピチの新入生たちが、顔をパッと赤らめながら羨望のまなざしを二人に注いでいた。

すると今度は、彼女の来校を事前に聞きつけていた現役の教官たちが、制服のシワを正して慌てて駆け寄ってきた。

「スカーレット特級打楽器使い殿! ご無沙汰しております!」
「あの節は北方戦線で命を救われました! 私、ドサンコ上級チューバ使いです!」
「スカーレット殿、ぜひ本日は、我々にも音響戦闘術のご指導をいただけないでしょうか!」

普段は学生たちを震え上がらせているコワモテの教官たちが、まるで憧れのヒーローを目の前にした子供のように、目をキラキラと輝かせて直立不動で敬礼している。

「もうぅ、みなさん大袈裟さんなんですから~ウフフ」

スカーレットは首をちょこんと傾げ、いつもの赤ちゃんに話しかけるようなおっとりした口調で笑うと、レッドの頭を優しく撫でた。
「レッド、あなたも学校で頑張ったら、すぐにでもお母さんの様に人気者になっちゃいますよぉ〜」
周囲からの熱烈な視線とエリートたちのガチ敬礼の嵐に、幼いレッドは萎縮を通り越して早くもめまいがしてきていたが、母親のスカーレットはどこまでもマイペースだった。

「うん……! 僕、がんばるよ、お母さん!」
京都のシルキー師範の元での、あの気配を感じただけで直立不動になる地獄のスパルタ修行生活から、ようやく抜け出せたという極上の解放感。
そして、これからの学園生活へのささやかな期待。

何より、久々に肌で感じるお母さんのあたたかい手の温もりに、
レッドの胸は「これ以上ない幸せ」でぽかぽかと満たされていた。

「あら?」
「遅刻してきた子がたくさんいるわね」

「えっ、どしたのお母さん」


『――ウーウーウーッ!!』


引き裂くようなサイレンが式場に鳴り響く。

同時、光学迷彩を解除した「悪のみなさん」の突撃部隊が、黒煙の如き遮蔽煙幕(スモーク)とともに校庭へ強行降下を展開。
彼らは綿密な情報戦に基づき、防衛網の隙を突いた超近接奇襲を仕掛けてきたのだ。

目的はただ一つ。障壁となる「将来の音術師」たちの芽を、この場で完全殲滅すること。

「前線崩壊! 敵襲、敵襲ッ!!」
「レーダーは何をしていた! 外郭防衛線が突破されただと!?」
「接敵(エンゲージ)! 駄目だ、楽器の周波数同調(チューニング)が間に合わな――!」

国家防衛の心臓部へのまさかの強襲に、指揮系統は一瞬でマヒ。
怒号と爆音の中、敵の放つ指向性エネルギー攻撃が次々と着弾し、未熟な新入生や防弾装備のない教官たちがなぎ倒されていく。

「ハハハ! 迎撃体制すら整わぬか、烏合の衆め!」
「完全に奇襲は成功した。戦術的勝利は我らのものだ!」
「積年の恨み、この制圧作戦で晴らさせてもらうぞ!!」

敵の指揮官が勝利を確信し、冷酷に全弾掃射の命令を下す。
式場は一瞬にして、硝煙と悲鳴が渦巻く地獄の戦場と化した。

「おのれ、不法侵入者どもめッ! 迎撃(インターセプト)を開始する!」
最前線の防衛戦力として、フォルテ教官が肉体という名の重装甲を震わせ、猛烈な突進で現隊へ急行する!

――しかし。鬼教官が迎撃の音響弾を装填すべく、トランペットのマウスピース(歌口)へ息(エネルギー)を叩き込むより、さらに一瞬早く。


周囲の気圧が、異常に跳ね上がった。


『――ふるえなさーい、一斉掃射(フルバースト)。烈陽鳳凰・連撃陣』


「――オオオオオオオオオオオオンッ!!!」


鼓膜を容赦なく破壊する、超低周波のソニックブーム。
爆炎の向こう、スカーレットが愛機(重音響兵器)『PHX』のトリガーを静かに握っていた。

先ほどまでの母親の気配は完全に消滅。
戦場に君臨するのは、一国を焦土に変えかねない最強の「特級重音響兵器乗り」としての絶対的な殺気だ。
これぞ、彼女の誇る飽和音撃の極致。空間を質量兵器のごとく埋め尽くす、超重量級ドラムによる「弾幕の壁」が、ゼロ秒で周囲360度に展開された。

黄金に輝くその音響防壁は、襲い来る敵の対空砲火やレーザーをすべて熱量変換し、完全に無効化(インターセプト)していく。

刹那、彼女の腕が視認不可能な速度でブレた。

――カァンッ!!!

超音速で振り抜かれたスティックが空気をマルカート(明確)に破砕した瞬間、鳳凰の輪郭を持った高密度衝撃波が、音速の誘導弾となって敵の全隊列へ直撃!まさに圧倒的な火力制圧。

フォルテ教官が現場に突入した時には、あれほど精緻な奇襲計画を練ってきたはずの敵の精鋭たちが、文字通り“全滅(キルゾーンにて完全粉砕)”し、物言わぬ肉塊のように地面に転がっていた。


「……ふぅ。ウフフ、作戦完了(ミッションコンプリート)ねぇ」

スカーレットはすぐにいつもの柔和な笑顔に戻ると、頬に手を当てて小首を傾げた。

「『悪のみなさん』も、貴方のお祝いにわざわざ来てくれたのねぇ。賑やかで嬉しいわね、レッド」

「えっ……? お、お祝いなのかなぁ……?」
引きつった笑顔で冷や汗を流すレッド。

その横で、ようやく追いついたフォルテ教官が「バカな、一瞬で片付けただと……!?」
と直立不動のままガタガタと震えていた。

何はともあれ、規格外の母親の愛と弾幕に守られながら――
レッド隊長の、のちの「陽のエネルギー」のルーツとなる士官学校生活が、穏やかに(?)幕を開けるのであった。


第13話『山の入り口、ふたりの笑顔(前編)』はコチラ
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音楽戦隊ウルセンジャー、小説版の世界観とキャラクター設定はこちら
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2026年05月27日