隊長日誌

タイトル別

2026年05月30日
第17話『断りきれなかった依頼(後編)〜無慈悲なる小学生のフルボリューム〜』
2026年05月30日
第16話『断りきれなかった依頼(中編)〜不器用な雛たちと、京都轟雷流の戦訓〜』
2026年05月30日
第15話『断りきれなかった依頼(前編)〜元・落ちこぼれへの宣戦布告〜』
2026年05月27日
第14話『山の入り口、ふたりの笑顔(中・後編)』
2026年05月27日
第13話『山の入り口、ふたりの笑顔(前編)』
2026年05月27日
第12話『落ちこぼれ少年の春と、伝説の超弾幕』
2026年05月25日
第11話『フォルテパニック!~高級スイーツと、届かないウインク~』
2026年05月25日
第10話『秘密のオービエと、ステューデントモデルの罠』
2026年05月25日
第9話『事務ミスでド田舎の戦隊へ配属されるの巻』
2026年05月25日
第8話『落ちこぼれ隊長と、上から目線の猫』
2026年05月22日
第7話『最強の狂詩曲(ラプソディ)』
2026年05月21日
第6話『絶対防衛線の崩壊と、最強の指揮官(マダム)』
2026年05月21日
第5話『絶対零度の査察前線(後編)』
2026年05月21日
第4話『絶対零度の査察前線(後編)』
2026年05月18日
第3話『じゃじゃ馬の電撃作戦と、密輸の連鎖債務(スイーツ協定)』
2026年04月24日
第2話『不敵な野良上がりの進言と、4つの選択肢』
2026年04月24日
第1話『戦場に響け、正義のファンファーレ』
2026年03月31日
第0話『ウルセンジャー誕生秘話』

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第17話『断りきれなかった依頼(後編)〜無慈悲なる小学生のフルボリューム〜』

(出典:グーグルAI)※ストーリはフィクションですが、
現実世界で実際に出動した時の想いでもちりばめています。


第17話『断りきれなかった依頼(後編)〜無慈悲なる小学生のフルボリューム〜』


午前中の「落ちこぼれの雛たち」への密着パートレッスンが終了し、
午後からはマーチングバンドの真骨頂、全体合同練習の時間が始まった。

広大な体育館のフロアを所狭しと使い、子供たちが一糸乱れぬ動きを見せる。

MM(マーチング・ムーヴメント)、ドリル、そしてフォーメーション移動を伴う演奏

――すべての戦術訓練が、小学生とは思えないほどの精度でそつなく、機械的に進んでいく。

「見事な規律ですね、隊長。まるでアカデミー(士官学校)時代の過酷な行軍訓練を見ているようだ」
エリート街道を歩んできたバックすらも、その全国レベルの洗練された動きに、感嘆の息を漏らしている。

「……嗚呼。全くだ。あの地獄のような学生生活のトラウマが蘇って、俺の胃にまた穴が空きそうだナ……」
思い出したくもない過去のしごきに、俺はすっかりしょんぼりさん(戦意喪失)だ。

「……ところでバック。午前中のラッパ合流レッスンで、
例の『若き天狗たちの鼻っ柱』は、予定通り木端微塵にへし折ってやったんだろうな?」

俺が小声で戦況を問うと、
バックはビシッと背筋を伸ばし、ニカッと白い歯を輝かせながら、
親指を立てて「バッチグー」のサインを返してきた。

どうやらエリート一級品の音術で、
マセたガキどもを完全に圧倒してきたらしい。

「それにしても、ちみたち……
子供たちとの『極秘体力トレーニング』、本当にお疲れ様だったな」

俺は、死んだ魚のような目でパイプ椅子に転がっている特級猫と、
泥だらけのギャルを睨みつけた。

午前中、校庭へ遊びに来た近所の子供たちに「もふもふの刑」に処され、
ピンクの肉球がすり減るまでぷにぷにされ、
必死に逃げ回る(という名の追いかけっこ)をしてライフをゼロにされたマルカート。

そして、金管バンドにフルートは不要だからと外へ放り出した結果、
子供たちとガチのドッジボールやサッカーに興じ、全身泥まみれになって帰ってきたスレッタ。

二人の規格外の隊員へ、俺は精いっぱいの皮肉を込めた感謝の言葉を投げかける。

そんなこんなで、いつも通りの統率の取れなさを発揮しつつも、
俺たちは特等席に陣取り、全国クラスの爆音生演奏を肌で感じていた。

だが、この平和な鑑賞会が、このまま穏やかに終わるはずがなかったのだ――。


「ガハハハハッ!! 音楽戦隊ウルセンジャー、今日こそは生きては帰さんぞ!!」
「おやびん、今日こそギッタギタのメッタメタにしてやるでやんす!」
「キキーッ! キキーッ! キキーッ!」

平和な体育館の空気を切り裂き、
お約束のセリフと共に「悪のみなさん」が大勢で乱入してきた。

どこで聞きつけたのか、揃いも揃って大層な勢いだ。

「おやおや……。
今日はただの『子供たちのお守り任務(ボランティア)』だと聞いて有給をとってきたんだがな。
まさかこんなところで残業が発生するとは」

俺は腰のトランペットに手をかけ、
士気を高揚させるために不敵なハッタリをかます。

すかさず、助手席から無理矢理ついてきたエリートが状況をスキャンした。

「隊長、敵の数は10。個体ランクはすべてC。近接戦闘特化型です。なお、有効調律周波数は442ヘルツとなっています」
バックがいつもの冷徹さで、瞬時に敵の戦術分析を完了させる。

「よし。野郎ども、まずは『鶴翼(かくよく)の陣』で包囲し――」

俺がいつものように軍事的な陣形を指示し、展開しようとした、その瞬間だった。

――ズドガアアアアーンッ!!!!
――ドドドドドドドッ!! バンバンバンッ!!
――プォーーーーーーーッッッッ!!!!

体育館の空気が物理的に震動するほどの、凄まじい大音響が爆発した。

(な、なんだ……!? 敵の増援か?
それともBランク以上の親玉が潜んでいたのか……!?)

俺たちに一瞬の緊張が走る――

ことは、まったく無かった。

俺たちの正面でポーズを決めていた悪のみなさん総勢10名は、
振り返ることすら許されなかった。

なぜなら彼らは、背後に控えていた「日本最高峰の小学生マーチング部隊」から、
一切の容赦のない、背面へのすさまじい超至近距離・集中砲火(フルボリューム)を浴びたからだ。

天狗の子たちの圧倒的な爆音ドリル。

そして、午前中に俺が『轟雷流の教え』で艶を与えた落ちこぼれの雛たちの、
迷いの消えた魂のロングトーン。

それらが完全にシンクロした無慈悲な音響弾が、無防備な悪の背中に直撃したのだ。

……(ゴクリ)。

想像しただけでも、音術師として全身に鳥肌が立つほどの生き地獄。

悪のみなさんは、ウルセンジャーが指一本触れる間もなく、
文字通り「音の壁」にすり潰されて消え去っていった。

かくして、我が音響部隊の看板に傷がつくこともなく、
牟礼南小学校への特別出動は無事に幕を閉じたのだった。


「……隊長。戦いはやはり、圧倒的な『数(火力)』ですね」
子供たちの規格外の砲撃戦に目を輝かせ、興奮冷めやらぬ様子で語るバック。

俺はオンボロ車のハンドルを握りながら、
「ふっ、戦場は教科書通りにはいかないという事だよ」と、
さも自分が仕組んだかのように渋い声で答えておいた。

「あーあ! また『悪のみなさん』と戦う機会がなかったじゃーん!」
午前中、あれだけ泥んこになりながら遊んで体力を消費したくせに、
本戦(演奏)がなくて不完全燃焼だと助手席で怒っているストレッタ。
「そのうち、Sランクと会敵できるさ」とさりげなく流す俺。

「我が輩はもう、クタクタにゃん……。
人間の子供のパワーを舐めていたにゃ。肉球はおもちゃじゃないにゃん……」
いつの間にか俺の膝の上に丸くなって、幸せそうな寝言を言っている特級猫。

秘密基地へと引き返す夕暮れの車内。
フロントガラス越しに差し込むオレンジ色の夕日を浴びながら、
バックミラーに映る隊員たちのくだらない雑談に耳を傾ける。

「……ま、こういう平和な解決も、悪くはないな」
誰にも聞こえない声でそう呟く。

激しい音響戦闘のあとに訪れる、
この、いつもと変わらないくだらない時間が、

俺は世界で一番好きかもしれない。

(断りきれなかった依頼・完)


音楽戦隊ウルセンジャー、小説版の世界観とキャラクター設定はこちら
https://www.c-able.ne.jp/~y-info/contact1.html

2026年05月30日

第16話『断りきれなかった依頼(中編)〜不器用な雛たちと、京都轟雷流の戦訓〜』

(出典:グーグルAI)※ストーリはフィクションですが、
現実世界で実際に出動した時の想いでもちりばめています。


第16話『断りきれなかった依頼(中編)〜不器用な雛たちと、京都轟雷流の戦訓〜』

防府市牟礼南小学校への行軍は、俺のナビ無しのオンボロ私用車だった。

秘密基地から県道184号線を東へ、牟礼・江泊方面へと進み、
防府環状線(県道58号線)に入って南東方向へ進路を取る。所要時間は約15分。

軍事的な専門用語を抜きにして簡単に言えば、
「広い道から、びっしり住宅が詰まったクソ狭い道への突撃」だ。

「隊長、状況を簡単に捉えすぎです。やはり僕がナビゲーターとして同乗して大正解でしたね」
助手席で『フフン』と鼻で笑いながら、
無理やり道案内役を勝って出たバックが、こちらを見下ろすような視線を送ってくる。

エリートの余裕というやつは、いつ見ても神経を逆撫でしやがる。

「この近くには旨い焼肉屋があるにゃー。打ち上げが楽しみだにゃー」

後部座席から響く暢気な声に、俺はバックミラー越しに釘を刺した。
「オイオイ、待てマルちゃん。今日は正規の防衛出動じゃない。
つまり、軍事予算(経費)は1円も出ないぞ」

「私はねー、今日たまたま、すっごく暇だっただけだからねー!」
その隣で、窓の外を眺めながらチラチラとこちらに視線を送ってくるスレッタ。

もちろん、その不器用なアピールは、
娘を溺愛するガチムチの司令官と、俺の嫁様の事が脳裏に浮かび完全に無視だ。

「……そもそも俺は、『落ちこぼれの心は、落ちこぼれにしか分からない』という信念のもと、
単独での潜入任務に踏み切ったはずなんだがね。
アカデミー優秀組の君たち(特級野良猫以外)の出番はない。しっ、しっ」

狭い住宅道路をすり抜け、小学校の敷地内にオンボロ車を滑り込ませた俺は、
エンジンを切りながら、手でシッシッと追いはらう仕草を見せて精一杯の皮肉を返した。

だが、バックは悪びれる様子もなく、愛機Bachのケースを抱えて不敵に笑った。
「上手な子の鼻っ柱を折るつもりが、
逆に隊長の鼻がへし折られたら、ウルセンジャーの看板に消えない泥が塗られます。
ここは隊長の代わりに、僕が一流の音ってやつで、
天狗になったガキどもの鼻っ柱を叩き折ってやりますよ。ドヤッ」

バックの『ドヤッ』という余計な一言に、俺の心が激しくざわつく。
……誰か、あの世間知らずの天才坊っちゃんに教えてやってくれ。
『冷静で正確すぎる分析は、時として凡人の心を完全にすり潰す』という、残酷な戦場のリアルをな。

「能書きはいいから、とっとと片付けて宴会にゃー!」

あくびをしながら車を降りるマルカートの後ろ姿を見ながら、俺の中に邪な作戦が浮かぶ。
……このままこの特級猫を校庭に置き去りにして、元の野良猫生活へ強制送還してやろうか。

「あ、見て! 遊具がたくさんある! 久しぶりにブランコとかで遊んじゃおっかなー!」

はしゃぐスレッタの言葉に、俺は心の中で激しく突っ込んだ。
(お前は今日一日、作戦が終了するまでその遊具広場の陣地を死守してろ、
絶対に校舎に入ってくるなよ!金管バンドにフルートは必要ないからナ)

こうして、統率の取れているようで全く取れていない凸凹音響部隊は、
名門・牟礼南小学校の校門をくぐった。


「皆さん、こちらがレッド隊長です。国立音響防衛士官学校を
……その、なんとか、ギリギリで出てらっしゃいます。
皆さまと同じで、なかなかトランペットの腕前が上がらず、とても苦労されたお方なんですよ」

音楽室に並べられたパイプ椅子に座り、不安そうにこちらを凝視していた子供たちの前で、
先生が俺を紹介した。

「はっ、はい……。本当に、奇跡的に、なんとか生きて卒業できたレッドです……」

先生は最大限の気遣いで「落ちこぼれ」という直接的な単語こそ避けてくれた。
だが、いざ公衆の面前で自分の不名誉な経歴を突きつけられると、急に恥ずかしさが込み上げてくる。

過酷だった士官学校時代の記憶がフラッシュバックし、自信を削ぎ落とされた俺は、
いつものキザなブラックジョークを叩き出す余裕すらなく、
うつむき加減に答えるのが精一杯だった。


こうして、全国レベルの名門に存在する「落ちこぼれトランペットの雛(ひよこ)たち」を指導する特別任務が始まった。

「ッ、ブッ、ブォー……」「スーッ、プッ、プスプス……」「ブッ、スカー……」

子供たちが一斉に放った音は、
お世辞にも音楽とは呼べない、ひどく荒削りなものだった。

だが、俺の耳にはそれがただの雑音には聞こえなかった。
それは、かつて幼い頃の俺が、泣きながら出していた音と全く同じだったからだ。

劣等感を抱え、自分を信じられず、
何を目的に戦えばいいのか分からない、迷子の音――。

「よし、じゃあ、ちょっと俺の音を聴いてくれ」
俺が手本として、基本中の基本である低い『ド』の音をまっすぐに響かせてみる。

「オオーッ! すげえ!!」
その瞬間、子供たちの間に小さなどよめきが起こった。

戦場ではエリートたちに囲まれ、久しく忘れていた「羨望の眼差し」を全身に浴び、
俺は防弾チョッキの裏で思わず赤面してしまった。

「……いいか、君たち。音術師(おんじゅつし)は、イメージできないモノは表現にできない。
これは、俺がみんなと同じくらいの年齢だった頃、
京都の過酷な道場で、骨の髄まで叩き込まれた戦訓(言葉)だ」

俺は雛たちにそう告げると、できるだけ丁寧に腹式呼吸のメカニズムを教え込み、
一緒に『ド』の音を吹き鳴らした。
何回も、何回も、ただ真っ直ぐに音を伸ばすロングトーンの訓練。

「よし。じゃあ次は、君から一人ずつ『ド』の音を吹いてごらん」

最初に指名された子供は、恥ずかしそうに顔を赤らめ、モジモジしながらマウスピースに唇を当てた。
そして、息を吹き込んだ瞬間――。

「えっ!? うそっ!!」
音楽室に、子供たち自身の驚愕の声が響いた。

彼らが最初に放っていた迷子の音とは、明らかに違う。
ほんの少しだけ芯が通り、艶(つや)を帯びた「意志のある音」が、確かにそこにあった。

「音術師は、イメージできないモノは表現にできない」

俺はレッスンの冒頭で述べた、
俺を育ててくれた流派――京都轟雷流の教えを、彼らの目を見つめながらもう一度復唱した。

(……本当は、天狗になっている上手な子たちが率先して、
この子たちと並んでロングトーンをしなきゃいけないんだ。技術の優劣で壁を作るんじゃなくてな)
(あぁ……そうか。だから先生は、格式高い社会人バンドじゃなく、俺をここに呼んだのか)

俺は心の中で、その答えに辿り着き、静かに自問自答した。

落ちこぼれの痛みが分かる俺だからこそ、この防壁(カースト)を壊せる。
こうして、現役落ちこぼれ隊長による、泥臭く熱いレッスンは続いていくのだった――。

(続く)


第17話『断りきれなかった依頼(後編)〜無慈悲なる小学生のフルボリューム〜』
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2026年05月30日

第15話『断りきれなかった依頼(前編)〜元・落ちこぼれへの宣戦布告〜』

(出典:グーグルAI)※ストーリはフィクションですが、
現実世界で実際に出動した時の想いでもちりばめています。


第15話『断りきれなかった依頼(前編)〜元・落ちこぼれへの宣戦布告〜』

『――人口減少率ワーストの秋田は5年で8.1%減少。増加は東京と沖縄のみ……』

ここは、音楽戦隊ウルセンジャー秘密基地。

俺の傷だらけのデスクに置かれた、いつ買い替えたかも忘れた古いラジオから、
日本の人口減少幅が過去最大を更新したというニュースが無機質に流れ落ちる。

ここ最近――いや、前世紀からずっと耳にタコができるほど聞かされてきた、使い古された絶望の数字だ。

「……フン、国家の最高幹部どもが頭を抱えるレベルの難題だ。
うちのような、地方のしがないローカル音響部隊が向き合うべき前線(問題)じゃない」
深刻極まりない問題だが、今の俺にとっては完全なる他人事だ。

うちは地域密着、愛と平和を届けるハートフルなボランティア団体なんだ。
天下の国難を背負う義理もなけりゃ、そのための予算だって1円もありゃしない。

俺はそう自分に言い聞かせながら、固く目を閉じた。

先の激戦で負った心身の傷を癒やすため、
そしてこれ以上、世知辛い現実の防弾を浴びないために、
しばしの休息(現実逃避)へと沈み込むことにした。


「……いや。大変遺憾ながら、本件は丁重にお断りさせていただきます」

秘密基地の作戦会議室。俺の対面に座る、いかにも人当たりの良そうな中年の男性に対し、
俺は軍人としての礼節をギリギリ保ちながら、丁寧かつ明確に拒絶の意思を示した。

男の名は、この防府市が全国に誇る最強の小学生音響部隊「牟礼南小学校マーチングバンド」の最高指揮官
――すなわち、担当の教諭だった。

その彼が、事もあろうに我がウルセンジャーに対し、
未来の音響戦士たちのお守り(指導)をしてほしいと、直々に前線基地まで乗り込んできたのだ。

穏やかな口調、低い姿勢、そして滲み出る謙虚さ……。

俺がよく知っている、筋肉と威圧感だけで構成されたアカデミーのガチムチ司令官とは、
爪の垢を煎じて飲ませたいほど正反対の態度である。

だが、先方も全国の修羅場をくぐってきた指揮官だ。
簡単に退く気配はなく、部屋には重苦しいプレッシャーが充満していく。

「……先生。失礼ですが、俺(私)の経歴をご存じの上でのご依頼ですか?」

「ええ。こちらも不躾ながら、事前に調べさせていただきました。
何でも、あの国立音響防衛士官学校(アカデミー)きっての“永遠の初級使い(落ちこぼれ)”だとか……。
フォルテ司令官という方が、実になめらかに、嬉しそうにお話ししてくださいましたよ」

「――ッ!? じゃあ、なおさら無理でしょうが!」
俺は思わず、上官風のポーカーフェイスを剥ぎ取られて声を荒らげた。
あの筋肉親父、裏で余計な情報をばら撒きやがって……!

ウルセンジャーもこの田舎町で少しは名が売れてきたせいか、
最近は「悪のみなさん」の討伐といった本来の防衛任務以外に、こうした毛色の違う依頼が増えつつある。
だが、こればかりは話が別だ。

「いいですか、先生。この防府市は小中高と吹奏楽が異常なほど盛んで、
それを母体とした格式高い社会人の吹奏楽団がいくつもあります。
そちらの精鋭たちに話を持っていかれるべきだ。
俺のような初級ラッパ吹きより、彼らの方がよっぽど一級品の技術を持っていますよ」

俺は一刻も早くこの重苦しい会談から敵前逃亡したい一心で、
話の核心――いや、もっともらしい正論をまくし立てた。

「ええ、それも重々、よく存じております」
先生は、すべてを見透かしたような、諭すような優しい笑顔で応じた。

「ですが、うちの『上手な子たち』は、放っておいてもいいんです。
問題は……どうしても上手になれない、取り残された子供たちのほうでして……」

先生の表情が、にわかに曇る。
聞けば、全国レベルという高い壁の陰で、上手な子とそうでない子の間に深い溝(ディスタンス)ができているらしい。
小学生ならではの残酷なカースト制度。
その中で声を上げられず、音楽を楽しめなくなっている子を救いたい、それが指揮官(先生)としての願いだった。

「大変失礼な物言いを、どうかお許しください。ですが……
落ちこぼれてしまった子の痛みには、
元・落ちこぼれのレッド隊長が、世界で一番寄り添ってくださるのではないかと思いまして……」

先生はポケットからハンカチを取り出すと、
額の大汗を拭いながら、まるで祈るような、絞り出すような声を響かせた。

「……先生。訂正してください。

俺は元じゃなく、『今でも十分現役の落ちこぼれ』ですよ」

俺の自虐的な、乾いた笑い声が静かな秘密基地に虚しく響く。

「それから、もう一つ」先生が少しはにかむように、だが確かな眼差しで付け加えた。
「上手な子たちは、すっかり天狗になってしまっています。
どうか、彼らの鼻っ柱を思いきりへし折ってやってはいただけないでしょうか」

――鼻っ柱を折る、か。

先生の言葉が、俺の脳裏の奥底に眠る古い記憶の引き金を引いた。

幼少の頃、京都の道場で、狂暴なまでの才能を持つ後輩や同輩、先輩たちから、
文字通りボロ雑巾のように扱われた辛い日々。
楽器の世界には、技術の上手下手だけで人間性まで格付けされる、
冷酷なカーストが確かに存在するのだ。
かつての自分が流した涙の味が、口の中に蘇る。

……チッ。他人事だと、自分に言い聞かせたはずだったんだがな。

長い、重苦しい沈黙が基地を支配する。
古いラジオから流れる無機質などうでもいいニュースをかき消すように、俺は大きく息を吐き出した。


「……よし。その依頼、ウルセンジャーが引き受けましょう」


戦場(ステージ)は、格式高き名門・牟礼南小学校へ。

(つづく)


第16話『断りきれなかった依頼(中編)〜不器用な雛たちと、京都轟雷流の戦訓〜』
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2026年05月30日

第14話『山の入り口、ふたりの笑顔(中・後編)』

(出典:グーグルAI)※ストーリはフィクションですが、
現実世界で実際に出動した時の想いでもちりばめています。


第14話『山の入り口、ふたりの笑顔(中・後編)

俺の愛車であるオンボロ自動車に、
大人3人と特級猫1匹、そしてそれぞれの武器である重い楽器たちをこれでもかと詰め込み、秘密基地を出発した。

まず目指すのは、ウルセンジャーの拠点である防府市が誇る、延長56 kmの一級河川――『佐波川』だ。
その佐波川の源流である山口県と島根県の県境に位置する三ツヶ峰(標高970 m)を目指し、車はひたすら上流に沿って北東へ向かう道をどんどん突き進んでいく。

北上していくにつれて、窓の外の景色からは少しずつ民家が消えていった。
代わりに、雄大な山々のふもとに静かに佇む、美しい田畑の緑が車窓いっぱいに広がってくる。

「……川幅も、だいぶ狭くなってきたなぁ」

並走する佐波川のせせらぎが、上流に近づくにつれて少しずつ細くなっていくのを見つめながら、俺はガタゴトと揺れるハンドルを握り続けた。

しばらく走ると、久しぶりに信号のある交差点が現れた。どうやらこの山間部の中心地らしく、そこへ差し掛かった瞬間、歴史を感じさせる大きな「造り酒屋の看板」がパッと目に飛び込んできた。

「おおっ! ここがあの有名な地酒の店にゃー! 帰りは絶対に寄るにゃん、隊長!」
助手席のマルカートが、窓に肉球を押し当てて目を輝かせている。お酒のことになると、この特級猫のアンテナは相変わらずの超高感度で安定っぷりだ。

「ちょっとマルちゃん、買うのは帰るときよ! それに隊長も、よそ見してないで運転に集中しなさいよね! この先、いつ『悪のみなさん』の待ち伏せがあるか分からないんだから、今のうちに身体をほぐしておきなさいよ!」

後部座席から、スレッタがマシンガンのように口を挟んでくる。お節介で世話焼きな彼女は、最近なんだか俺たちの「お母さん」のようになってきているゾ。

「……それにしても、隊長。本当に心が洗われるような、美しい風景ですね」
スレッタの横で、バックが眼鏡の位置を直しながら、窓の外ののどかな景色を静かに見つめていた。
「おいおいバック、今回の作戦に『大赤字になりますね』って一番大反対してたのは君だろ?」
俺が苦笑いしながらルームミラー越しに突っ込むと、バックは「それはそれ、これはこれです」とフイッと顔を背けてしまった。まったく、相変わらずのツンデレさんだぞ……。

そんな賑やかで少し窮屈な車内に揺られること、約一時間。

オンボロ自動車のエンジンがひと際大きな音を立てて坂を登りきると、ついに目的地の『柚木小学校』へと到着したのだった。


山の入り口、ふたりの笑顔(後編)

「うえっぷっ……」
「……(青い顔で無言)」
「なんだか、車内がとんでもないメロディ(唸り声)に包まれているにゃー……」

オンボロ自動車が柚木小学校の校庭に停車した瞬間、車内から漏れ出たのはそんな瀕死の音だった。
どうやら俺の荒々しい山道運転にケチをつける余裕すらないほど、メンバー一同は見事に「仕上がって(重度の車酔い)」しまっているようだ。

「みんな、顔色がステューデントモデルの罠にかかったみたいだぞ! だが、脳と身体が激しく揺れて、唇までガタガタにほぐれたろ? 本番前の最高の準備運動にはちょうどよかったじゃないか!」

会場の入り口で待っていた親御さんたちの「なんだこの人たちは……」という痛い視線を全身に浴びながら、俺は精一杯のポジティブさでみんなを励ました。

「あの……こッ、コレを……。何もない山奥の場所で、大したおもてなしもできず申し訳ございませんが……」
すると、申し訳なさそうに親御さんの代表の方が、竹皮に包まれた温かいお手製のおむすびとお茶を差し出してくださった。

「おっと、お心遣いは無用ですよ! 我々ウルセンジャーの報酬は、皆さんの『笑顔』ですから! ニカッ★」
俺はすかさずバックミラーの前で毎朝鍛えている営業スマイル(白い歯光る100点満点のやつ)を浮かべ、脳内に完全インプットされているボランティア定型文をハキハキと返した。

「くんくん……! 隊長、徳地は水が綺麗で寒暖の差が激しいから、お米さんが格別に美味いのにゃのにゃー!」
現金なもので、お米の匂いを嗅ぎつけたマルカートは一瞬で車酔いから完全復活し、いつでも出撃できる体制を整えている。

「うわぁぁ♪ めっちゃ美味しそうじゃないのー!」
単純なスレッタも、おむすびの湯気に目を輝かせて完全復活。用意はOKのようだ。

「……何だか、京都の実家で母が作ってくれたおむすびを思い出しますね」
バックは眼鏡を少し曇らせながら、遠い故郷の母(あのシルキー師範である)を懐かしみ、静かに余韻に浸っている。

「それにしても、見渡す限り山、山、山だにゃー! 故郷を思い出すにゃー……。このへんの竹林にも、白い大きなクマ(パンダ)とかいるのかにゃー?」
「えっ、マルちゃん、君の故郷って一体……?」
謎が多すぎる特級猫の初めて明かされるルーツ(?)に俺が耳を傾けていると、「隊長、そろそろ時間です」と促され、俺たちは小学校の講堂へと足を踏み入れた。

ギィ、と歴史ある木造の扉を開けて講堂に入ると、広々としたステージの真ん前に、ぽつんと2つのパイプ椅子が並べられていた。
そこには、ちょこんとお子さん2人が緊張した様子で座って待っている。

「たッ、隊長……! 2人って聞いてましたけど、これ……」
いつもは冷静な作戦立案係のバックが、あからさまに動揺した様子で俺の耳元へ囁いてくる。

「ちょっとー! 待って、聞いてないよぉ、こんなの!」
スピードスターのスレッタも、相変わらず口から漏れ出るリアクションの速度が最速だ。

「我が輩はおむすびさえあれば、観客が何人でも満足にゃん」
マルちゃんだけは、スネアドラムの横で悠然と毛繕いをしている。

お子さん2人に対して、保護者の方が5人。

ここまでは、そうだ、そうだろ、想定内の人数だ。過疎化の進む田舎の閉校式なら、あり得る比率だ。……しかし。

なぜか木造の講堂の奥には、そこを埋め尽くさんばかりの大勢のお年寄りたちが、所狭しと座っていたのだ!

「いやぁ、最近は若いもんが出ていって誰も帰ってこんけぇ、小さい子と触れ合える機会が滅多にないほっちゃ(ないのだ)」
「ウルセンジャーさんが来るっちゅうけぇ、みんなで楽しみにして来たんよぉ」
山口の、のどかな方言を使うコミュニケーション能力爆発のおじいちゃん、おばあちゃんたちが、わらわらと笑顔で俺たちに詰め寄ってくる。

「隊長さん、そろそろ開演をお願いします」
保護者の方が、優しく演奏開始の合図を告げた。メンバーたちが「どうするんだ」という視線を俺に一斉に送ってくる。

「みな!急で作戦変更だ! ステージの上から見下ろす『鶴翼の陣』は中止! 全員ステージから地べたに降りて、子供たちと輪になる『和(なご)みの陣』を展開するぞ! 後半のプログラムはお年寄り向けの懐かしい曲も混ぜる!」

「レンジャイ!!(了解)」

本番のスイッチが入った瞬間、隊員たちは一切の無駄口を叩かない。全員の目が、これから届ける「音」だけに集中している。

フルートの軽快な旋律と対旋律、スレッタのマシンガンレッスンで鍛えたトランペットの響き、そしてマルちゃんの正確無比(マルカート)なドラムのビートが、昭和レトロな講堂にじんわりと鳴り響いた。

俺たちはステージを降り、2人の子供たちのすぐ目の前で楽器を奏でた。
一緒に歌い、一緒にステップを踏み、手拍子を合わせる。
後半戦には、後ろにいた大勢のお年寄りたちも次々と輪に加わり、講堂全体が文字通り、一つの大きな音楽交流の場へと変わっていった。

愛機(ヤマハ・ニューヨークモデル)から放たれる俺の音色(音響)は、
いつもならピッチ(音程)が迷子になって行き先が不安定になるのがお約束だ。

……だが、今日この瞬間だけは違っていた。

柚木の皆さんの笑顔と温かい拍手に導かれるように、俺のベルからは聴く者の心をじんわりと満たし、
包み込むような、圧倒的な「陽のエネルギー」がこれでもかと溢れ出していた。
音楽で心が通じ合うとは、まさにこのことだ。

曲の合間、マウスピースを唇から離した俺は、隣に立つ相棒へ少し照れ隠し気味に話しかけた。

「おい、バック。今ならあの『Sランク』の偉大なるご婦人がご来襲されても、優雅にダンスのお相手くらいはして差し上げられそうな気分だな」

「……ええ。本当に、そうですね」

いつもなら「隊長、現実逃避はそこまでにしてください」と冷徹な突っ込みをミリ秒単位で入れてくるはずのバックだった。
だが、眼鏡の奥の瞳を和らげた彼は、木造講堂を包むおじいちゃんやおばあちゃんたちの温かい拍手と熱気に深く感銘を受けた様子で、俺の軽口を優しく、穏やかにいなしたのだった。
その横顔には、いつものエリートのトゲはひとかけらも残っていなかった。


「隊長さん、本当にありがとうございました……」
「子供たちも、最後に最高の思い出ができました」
「久しぶりにみんなでワイワイ触れ合えて、本当に楽しかった。ありがとうねぇ……」

演奏が終わると、中には涙を浮かべながら、シワの刻まれた温かい手で俺たちの手を握りしめてくれる方もいた。
「いえ……こちらこそ、ありがとうございました」
お人好しで涙もろい俺は、そんなおじいちゃんたちの姿に思わずもらい泣きしてしまい、視界がじんわりと潤んでいくのを止められなかった。


「あーっ、あっ! 結局、楽しみに(?)してた『悪のみなさん』は一匹も来なかったわねー!」

防府への帰り道。
夕焼けに染まる佐波川を横目に、助手席のスレッタが両手を首の後ろで組みながら、伸びをして大きな声をあげた。

「徳地のお米、つやつやのプルプルで本当に最高だったにゃー。我が輩、もうお腹いっぱいで眠いにゃん……」
マルちゃんは膝の上で丸くなり、幸せそうに喉を鳴らしている。

「……隊長」
バックシートから、バックが静かな声で話しかけてきた。バックミラーを見ると、彼は眼鏡を外して、少し赤くなった目元をそっと拭っていた。
「僕……大赤字だなんだと文句を言いましたけど、ウルセンジャーに入隊して、本当に良かったと思います」

「……ああ。そうだな、バック」

オンボロ自動車のガタゴトという心地よい振動の中に、今日出会った人々の、つやつやのおむすびのような温かい笑顔が重なる。
お金は一銭も稼げなかったけれど、俺たちの胸の奥には、世界中のどんな高級マウスピース(オービエ)よりも輝く、本物の「正義のエネルギー」がパンパンに充填されていたのだった。

(おわり)


第15話『断りきれなかった依頼(前編)〜元・落ちこぼれへの宣戦布告〜』はコチラ
https://www.c-able.ne.jp/~y-info/posts/blog16.html

音楽戦隊ウルセンジャー、小説版の世界観とキャラクター設定はこちら
https://www.c-able.ne.jp/~y-info/contact1.html

2026年05月27日

第13話『山の入り口、ふたりの笑顔(前編)』

(出典:グーグルAI)※ストーリはフィクションですが、
現実世界で実際に出動した時の想いでもちりばめています。


第13話『山の入り口、ふたりの笑顔(前編)』

「山口県」は、その名の通りもともと山が多い土地だ。
山の入り口と書いて「山口」と読む――そう言っても過言ではないほど、険しい自然が連なっている。

その山口の中でも、さらに山深く、緑に遮られた奥深くに「それ」はあった。

――柚木(ゆのき)小学校。

昭和の面影を色濃く残す、木造のレトロな佇まいが美しい小学校だ。

そこからの依頼内容は、「今年度で閉校となるため、最後に残った子供たちの思い出作りに、ぜひウルセンジャーさんに演奏に来てほしい」というものだった。

「……はい、承知いたしました。隊員たちと一度相談いたしまして、折り返しご連絡させていただきます」俺はいつものように、リアル恐妻(嫁様)にも聞かせられないような、丁寧な余所行きの声で受話器に返答をした。

『――続いてのニュースです。日本の人口309万人減 減少幅が過去最大、東京近郊も軒並み減……』

電話を切り、秘密基地のデスクに腰を下ろすと、古いラジオから流れる暗いニュースが耳に飛び込んでくる。俺はそれを、なんとなく聞き流すようにして書類に目を落とした。

「それで隊長、今回は何人の生徒を相手にするんですか?」
最近、チーム内で自然と作戦立案係(兼スパルタレッスン担当)のポジションに収まりつつあるバックが、ノートを片手に問いかけてきた。

「あそこにゃ、美味い地酒があると噂の場所にゃー。楽しみだにゃん」
ソファの上で丸くなっている一匹の特級猫(マルカート)は、相変わらずマイペースに毛繕いをしている。

「……2人だ」
俺は努めて冷静な口調で答えた。
「それから、今回の報酬は無し(交通費の支給も厳しいとのこと)だ」

「ちょっとおおおー! だめ駄目ダメよー、そんなの!!」
バックが異論を唱えるより一瞬早く、スレッタが横からマシンガントークで割り込んできた。

「彼女の言う通り、同じ山口県内とはいえ距離がありすぎます。往復のガソリン代に移動時間、それに拘束時間を含めた全体のコストを計算すると……完全に大赤字になりますね」
バックが眼鏡の奥の瞳を光らせ、冷徹な現実を数字で伝えてくる。

「バックの言う通りよー! たった“2人分”のステージのために大赤字なんて、正気の沙汰じゃないわよー!」
スレッタがフンスと鼻を鳴らし、バックの背中を全力で後押しする。

――そう、我が『音楽戦隊ウルセンジャー』は、崇高な理念に基づき結成されたボランティア団体だ。

人件費は当然無料だが、通常はイベントの規模に応じた補助金や、最低限の交通費をいただくことで何とか運営が成り立っている。したがって、移動距離が遠く、対象となる人数が少ない小規模な活動ほど、活動すればするほどベース基地の財布が干からびる「大赤字の罠」が待っているのだ。

だからこそ、こうした採算の合わない田舎の地域には、音響防衛の公的団体が一切存在しない。
そもそもウルセンジャー自体、教育委員会からの無理難題な依頼に対し、お人好しな俺が「断りきれずに押し切られて」結成してしまったという知りたくない現実があるのだ。

だが――。ラジオから流れたニュースが、どうしても頭から離れなかった。

「よし! 決まりだ! みんな、久しぶりに大自然の中で森林浴にでも行くぞ!」俺はいつもの優柔不断さを脱ぎ捨て、強引に話を前に進めた。

「おっ、森林浴のついでに美味しいお酒をゲット(GET)して、ついでに柚木小学校に行くにゃん! 隊長、話がわかるにゃあ!」
親友のマルちゃんが、待ってましたとばかりに俺の背中をポンと叩く。

「はぁ……。本当に、隊長には困ったものですね」
バックは呆れたように深い溜息をついたが、その表情はどこか嬉しそうで、まんざらでもない様子だ。

「ふんっ、勝手にあたふたしてればいいじゃない! もう、知らないんだから!」
スレッタはなぜかぷいっと顔を背け、頬を膨らませて怒っている。

こうして、山奥の小さな学校、たった二人の子供たちの笑顔を守るための、ウルセンジャーの「赤字覚悟の出動」が決まった――。

(つづく)

第14話『山の入り口、ふたりの笑顔(中・後編)はコチラ
https://www.c-able.ne.jp/~y-info/posts/blog15.html

音楽戦隊ウルセンジャー、小説版の世界観とキャラクター設定はこちら
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2026年05月27日
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