第3話『じゃじゃ馬の電撃作戦と、密輸の連鎖債務(スイーツ協定)』
(出典:グーグルAI)※ストーリーはフィクションですが、
楽器紹介等、音楽の話はノンフィクションです
第3話『じゃじゃ馬の電撃作戦と、密輸の連鎖債務(スイーツ協定)』
「——は? ちょっと待って、ありえないんだけど! マジで意味不!」
音楽戦隊ウルセンジャーの秘密基地作戦室の重い扉が、凄まじい勢いで蹴り開けられた。
現れたのは、チームの斬り込み隊長であり「中級フルート使い」のストレッタ隊員だ。
彼女は、目が眩むほどピカピカに輝く24Kゴールド(総金製)の超高級なムラマツフルートをぶん回さんばかりの勢いで、俺に掴みかからんばかりに怒鳴り込んできた。
「おいおいスレッタ、突入作戦は見事だがな。毎回ブチ壊される作戦室の扉の修理代は、一体どこに回せばいいんだ?」
「そんなのパパの給料から天引きしてよ! っていうか隊長、聞いてよ!! うちのあの父親(フォルテ司令官)、信じられる!? 仕事が忙しいのはわかるけどさ、プライベートで大やらかししてくれたわけ!」
強気なギャル姉さんの超早口なマシンガントークが、前線のガトリングガンのように炸裂する。
その凄まじい音圧の風圧に被弾したのか、さっきまでチキンを貪り食っていた特級打楽器使いのマルカートは、完全に口を挟むタイミングを失い、文字通り「借りてきた猫」のように気配を消して丸くなっていた。
「あいつ、ウチとママに完全に内緒で、最高級のハンドメイドトランペット『ヴァン・ラー(Van Laar)』を勝手に買いやがったの!! パパがケースを必死にクローゼットの奥に隠してんの、ウチが一瞬で見抜いて、ソッコーでママ(ピアノ)に密告してあげたわけ。もうね、我が家のリビング、完全にシベリア並みに凍りついてマイナス100度だから!
ママなんか無言で、見たこともないような冷徹な視線をパパに送り続けてるし、ウチもマジで引いてる。お財布事情っていう超大事な家庭内規律を破るとか、司令官のくせに一番規律破ってんじゃん、マジ意味不!」
彼女は、実家の家庭内紛争の怒りをそのまま秘密基地にぶちまけていた。
「……そ、そうか。それは大変だったな……」
平静を装おうとしたが、俺の膝はガクガク、ブルブルと情けなく震え始めていた。
先日電話で、自分をトカゲの尻尾切りにしようとした司令官へ「ヴァン・ラーの件、奥様にチクりますよ?」と脅しをかけたのはこの俺だ。
だが、それはあくまで冗談のつもりだった。
まさか本当に娘に隠密行動(ステルス)を察知され、司令官の家のリビングがシベリア極寒地帯に変貌する大惨事になっているなんて。お人好しで小心者な俺は、正座させられて冷え切っているであろう司令官の身を案じずにはいられなかった。いや、それ以上に恐怖していた。
なぜなら――この俺も今、我が家の絶対権力者(嫁様)に完全内緒で、新型マウスピース『ヤマハ・オービエ』を購入し、すでにこの手元に極秘調達(密輸)してしまっているからだ。明日は我が身である。
俺は自分のギルティから視線をそらすため、うっかり手元にあったオービエをいじりながら、話題を変えようとした。
「ま、まぁ司令官の件は民事不介入としてだ……。しかし不思議だよな。マウスピースってのは普通、リムが小さかったりカップが浅かったりした方が、高音(ハイトーン)が出やすくてバテにくいはずだろ?
なのにこのオービエは、リムが大きいのに不思議と高音がスルスル抜けるんだよな……」
言い終えた瞬間、作戦室の空気がピキリと凍りついた。
ストレッタの鋭い視線が、俺の手元にある銀色のパーツにロックオンされる。
「……ねぇ隊長。それ、何? いつもの16c4じゃないじゃん」
「あ」
「――は!? あんたもかーーー!!!(大爆発)」
秘密基地が物理的に揺れるほどの、ギャル語大口径爆撃。
「ちょっと隊長まで何やってんの!? パパに続いて隊長まで嫁サマに内緒で極秘調達とか、男ってマジでどいつもこいつも物欲の塊じゃん! ありえないんだけど!
ギルティすぎる!」
「ひっ、違うんだスレッタ! これは戦術的な防衛費の前倒しであってだな……!」
あたふたしながら必死に弁明する俺。
だが、特級トランペット使いの父親から凄まじい英才教育を受けて育った彼女は、フルート使いのくせにトランペット知識が専門家並みに豊富だった。
彼女は腰に手を当て、フンと鼻を鳴らすと、爆発しながらも一瞬でロジカルな解析モードに入った。
「あのさぁ! オービエはリム内径が大きくても、カップの底の形状(Vカップ)に秘密があるから息の通り道がスムーズになるわけ! だからハイスペックなニューヨークモデルのラッパ(機体)への息の連動性が極限まで高まって、高音域が楽に出せるの!
しかも隊長、自宅で嫁サマにバレないように『プラクティスミュート(消音器)』をつけてコソコソ練習してたでしょ?
ミュートの強い抵抗に耐えて吹いてたおかげで、結果的に効率の良い、無駄のない吹き方が身についたってわけ! 音術(戦闘力)の足りない隊長にしては、奇跡的な大正解(アタリ)だけどね!」
フルート使いとは思えない完璧すぎる専門的指摘に、俺と「借りてきた猫」のマルカートは、ただただ圧倒されて「おお……」と頷くしかなかった。
「……でさ、隊長?」急にストレッタの声のトーンが変わり、ニヤニヤとした悪魔のような笑みを浮かべて、俺にじりじりと距離を詰めてきた。
「ウチ、パパの密輸をママにチクった功労者じゃん?
なのにパパのせいでリビングがシベリアになって、ウチまでとばっちりで超ストレス溜まってんだけど。……ねぇ、隊長がこれ極秘調達したこと、嫁サマには内緒にしてあげる。その代わりさ……」
ストレッタは短いスカートを揺らし、少しだけ顔を赤らめながら、俺の顔を覗き込んできた。
「防府駅前のあの高いカフェの、極上スイーツ特盛で奢ってよね! あと……そのオービエ、ウチにも試奏させて。私 の 唇 で 確 か め て あ げ
る か ら!」
「!!?」
ド直球なスイーツの要求(恐喝)と――そして、まさかの「試奏(間接チス)」の要求。
だが、家庭内紛争(リビングのシベリア化)を何より恐れる妻帯者の俺に、そんな複雑な乙女心を受け止める余裕など1ミリもない。
もし嫁様に「隠密ショッピング」と「ギャルとの間接チス」の二重罪がバレたら、俺の人生は一瞬で完全沈滅(ピアニッシモ)だ。
「こ、今度な……! そのうち、機会があったらな……!」
俺は完全に目が泳ぎ、あたふたしながら話を濁して距離をとった。
するとストレッタは、あからさまに不満そうな顔をして、ぷいっと後ろを向いた。
「ちぇー、ケチ! 顔真っ赤にしてビビり散らかしちゃってさー、マジつまんないの! フルート使いの肺活量なめんなよー!」
ストレッタはツンとした捨て台詞を吐き捨てると、金製フルートを抱え、再びドアを激しく叩きつけて作戦室を出て行ってしまった。
静寂が戻った作戦室で、俺はどっと出た冷や汗を拭いながら、デスクの上に深く突っ伏した。
「悪のみなさん」の討伐任務、過酷なアンパンマンの完全攻略、ギャル隊員への高額なスイーツハラ、そして我が家の絶対権力者(嫁様)への隠蔽工作……。
「やれやれ……。討伐作戦より難しい『家庭平和維持作戦』だというのに、どんどん問題が山積していくぞ……」
終わりの見えない連鎖債務(カルマ)のループに、俺はただただ、頭を抱えて絶望するのだった。
次回、第4話『絶対零度の査察前線(前編)』はコチラ
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音楽戦隊ウルセンジャー、小説版の世界観とキャラクター設定はこちら
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