第2話『不敵な野良上がりの進言と、4つの選択肢』
(出典:グーグルAI)※ストーリーはフィクションですが、
楽器紹介等、音楽の話はノンフィクションです
第2話『不敵な野良上がりの進言と、4つの選択肢』
討伐任務を終え、秘密基地の防音作戦室で音楽談義に花を咲かせる一人と一匹。
「助かったよマルちゃん。今日の討伐依頼は、君のドラムの音圧(弾幕)が無かったら危うく前線が崩壊するところだった」
「フンっ、落ちこぼれ隊長の尻を拭くのが吾輩の義務(シゴト)だにゃん」
戦いを終え、マルカート隊員を労うレッドに、茶色に黒の筋が入った尻尾をユラユラと揺らしながら彼は素っ気なく答えた。
見た目はただの野良猫。だが、常に上から目線で、隊長である俺に対して一歩も引かない生意気な相棒だ。
「でっ、吾輩ににゃにか相談があるんじゃないか? 目の前の資料がさっきから『困った』と悲鳴を上げているにゃん」
先に報酬(戦果アワード)として渡したケンタッキーのフライドチキンを器用に頬張りながら、マルカートが鋭い眼光を向けてくる。
「実は、俺の愛機(ニューヨークモデル)のパフォーマンスを最大化しようと思ってな。ラッパと人間を繋ぐ接点パーツ――マウスピースの新装(ハンティング)を考えているのさ」
「ほぅ……」
マルカートはピンと張り出したヒゲを優しく撫で、冷徹な鑑定士のような目で俺を見つめた。
「隊長。ウルセンジャーが最前線で展開する音響攻撃(ステージ)は、対象がちびっ子(0歳〜20歳)ゆえに、必然的に『ミュージックエイト』などのアニメ曲やポップスが主軸になる。本来であれば、軽い息で素早く反応し、過酷な連符の嵐でもスタミナを温存できるライトモデル(ステューデントモデルなど)の機体を使うのが、作戦遂行上、最も合理的(ロジカル)にゃん」
「……耳が痛いな」
「だが、隊長が構えているのは、強く豊かな息を要求するヘビータイプの最高峰(ニューヨークモデル)。クラシックなら無敵の重戦車だが、ポップス戦線で長時間の防衛線を張るには、今の隊長のアンブシュア(耐久力)では唇が消し飛ぶにゃ。……かと言って、新しいラッパ本体を新調する余裕は、お小遣い制の隊長には万に一つも無いはずにゃん」
相棒の容赦ない戦術分析が、俺の財布(コア)に直撃する。
「その通りだ……。だからこそ、本体の買い替えという莫大な軍事予算を組まずに、マウスピースの形状変化によるウエイトや抵抗の調整だけでパフォーマンスの限界値を引き上げる。これが今の俺にできる、最も現実的で合理的な判断なんだ」
「フン、貧乏なりに知恵は使ったというわけにゃ。で、狙っている兵器のコードネームは?」
「フォルテ司令官に、ヤマハの『オービエモデル』を紹介されてね」
「ほーぅ」
マルカートのノドが、ゴロゴロと深い音を立てて鳴った。
「現在の実戦装備である『ヤマハ 16C4』に近いリム内径(サイズ)を持つマウスピースを、いくつかピックアップしてみたんだ。君の野生の勘と頭脳で分析してほしくてね」
そう言いながら、俺はデスクの上に4本の精密パーツの資料を並べた。
ヤマハ 16C4(※現在の実戦標準装備。無骨な相棒)
ヤマハ オービエモデル(※司令官の推薦兵器)
バック 1-1/2C(※豊かな音色の王道パーツ)
ティルツ 1-1/2C(※ヨーロッパ戦線仕込みのダークホース)
マルカートは、自分の愛機であるドラムセット――『Donner(ドナー)DED-80』を見遣りながら、並べられた資料を肉球で撫でた。
「さすがは司令官殿にゃ。ハイスペックなニューヨークモデルと、圧倒的に力不足な隊長の戦闘力を吟味すると、選択肢は『オービエ』一択にゃん。これなら高音域の弾幕(ハイノート)を維持しつつ、ラッカー仕上げの牙をコントロールできるにゃ」
「よし、君がそう言うなら間違いないな!」
俺はマルカートの小さな頭を撫でながら、戦友への感謝を表した。
「マウスピースも昔に比べりゃ高額(ミリタリー・ラグジュアリー)だからさ。俺のお小遣いじゃ一発の誤射(買い失敗)も許されない。一番信頼してる君の太鼓判が欲しかったんだ」
「どうせ極秘調達(ステルス・ショッピング)ににゃるんじゃろ? 安心していいにゃ。嫁様にバレて家庭内紛争が起きた場合は、吾輩が肉球弾幕で防衛線を張っている間に隊長は逃げるにゃ」
「恩に着るよ、マルちゃん」
俺は頼もしい相棒を見つめた。
それにしても、不思議な猫だ。
彼はどこからか拾ってきたこの Donner 安価な電子ドラムを叩いている。ハッキリ言って戦闘には不向きなスペックな装備のはずなのに、実戦(ステージ)が始まれば、寸分の狂いもない神がかった完璧なビート(音響の弾幕)を刻んで味方を完全にプロテクトするのだ。
「しかし、マルちゃんのドラム捌きはいつ見ても見事だな。そんな装備でもそつなく戦闘をこなす。正直、最高峰のラッパに振り回されてる俺からすれば、うらやましい限りだよ」
するとマルカートは、ピンとヒゲを揺らし、不敵にニヤリと笑った。
「ふふん、『弘法、筆を選ばず』にゃ。
どんな鈍器(ボロ楽器)だろうと、叩く者がプロフェッショナルなら一級の兵器に変わるにゃ。
それに……吾輩は目立つのが大嫌いでにゃ。このくらい地味で安い装備の方が、いろいろと都合が良いのにゃん……」
その鋭い瞳の奥に、一瞬だけ「何か」を警戒するような、野生の鋭い光が走ったのを俺は見逃さなかった。
「よし! ならば最高の相棒に、特製の『最高報酬(戦果ディナー)』をご馳走してやろう。
名付けて『鮮魚の生パフェ』だ!」
マルカートの全身の毛が、一瞬でピンと逆立った。
「にゃ!? せ、鮮魚の……生パフェだとにゃ……!?」
「そうだ。我が防府市が誇る、瀬戸内海の穏やかな海原――三田尻港や向島周辺の豊かな潮目で育った、獲れたてピチピチの新鮮なアジやサバを豪快に三枚におろす!
そして、その新鮮な生身(フィレ)を、キンキンに冷えたバニラアイスクリームのなかに直接ブチ込むんだ! アイスの絶対零度が魚の旨味を分子レベルで完全に閉じ込め、さらにその上から、濃厚なホイップクリームと焦がし醤油を1対1の黄金比率でブレンドした特製ソースをたっぷりとかける!
一口ほおばれば、その美味さのあまり、昇天間違いなしだ!
……モチロン、俺は絶対に食べないけどね」
「昇天……!? 冗談じゃにゃい!! 昇天にゃんて絶対したくないにゃーーー!!」
マルカートは必死の形相で椅子から飛び上がると、机の上で激しく肉球を叩きつけて抗議した。その取り乱し方は、いつもの冷静な参謀の姿からは想像もつかないほどガチだった。
「あ、あんな所は二度とゴメンだにゃ! 吾輩は天国に帰る気はさらさらにゃい! 絶対に戻りたくにゃいのにゃーーー!!(激怒)」
「お、おいおい、そんなに怒るなよ。ただのパフェの話じゃないか……」
俺は慌てて両手を挙げて降伏のポーズをとった。
猫のくせに魚の話がそこまで地雷だったとは……
「た、隊長! 吾輩は確かにこの見ためのせいで『猫=魚』と思われがちだけど、本当に好きなのは魚(Fish)ではなくて、圧倒的に肉(Meat)にゃーー!
ここ最重要項目にゃ! 吾輩の事、何も分かってにゃいなにゃー!」
「了解、マルカート隊員。これより作戦を変更、作戦コード『極上カルビ焼き尽くし戦線』へと移行する。任務のあとは、特上肉を煙が立つまで焼き尽くそうじゃないか」
俺の言葉を聞いた瞬間、マルカートは先ほどのパニック顔から一転、その鋭い瞳をキラーンと輝かせ、ビシッと肉球を額に当てた。
「レンジャイ!(了解)」
今日一日、悪のみなさんの討伐任務を含めて、マルカートの一番気合の入った「レンジャイ」を聞いた気がした。
彼の真の目的が、正義のためではなく「任務のあとの美味い焼肉(打ち上げ)」であることは明白だったが、まあいい。この頼もしい相棒と一緒なら、どんな困難な戦場だって、笑顔で乗り越えられる気がするから。
次回、第3話『じゃじゃ馬の電撃作戦と、密輸の連鎖債務(スイーツ協定)』はコチラ
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音楽戦隊ウルセンジャー、小説版の世界観とキャラクター設定はこちら
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