第122話『右翼』

第122話『右翼』


「今日。」

ラリサが。

俺を見る。

「防衛隊右翼から。」

「ずいぶん遠くまで。」

「音が届いていましたわね。」

「……。」

また。

俺の番が。

回ってきそうだ。



「レッドさんの。」

「音ですの?」

「たぶん。」

俺は。

CALPISを一口飲んだ。

ラリサが。

少し首を傾げる。

「たぶん?」

「右翼から。」

「遠くまで撃ってたのは。」

「俺だから。」

タケハラが。

すぐに口を挟む。

「隊長。」

「もっと自信持ってくださいよー。」

「事実を言っただけだ。」

ドルチェが。

くすっと笑った。



ラリサは。

俺を見ながら。

ゆっくり言った。

「連合軍左翼本陣に。」

一拍。

「吸い込まれるように。」

「着弾していましたわ。」

「そうですか。」

「ええ。」

ラリサが。

少し目を細める。

「それに。」

「普通の音響弾とは。」

「少し。」

「輝きが違いました。」

「……?」

「包み込むような。」

「温かい音でしたわ。」

「そうかな。」

俺には。

よく分からない。



「レッド様の射撃は。」

リアルダが。

代わりに口を開く。

「コン・ブリオ様の誘導と。」

「私の計算があれば。」

「かなり正確です。」

「風速。」

「反響率。」

「障害物の位置。」

「その辺りを。」

「全部合わせていますので。」

「なるほど。」

ラリサが。

小さく頷く。

リアルダは。

少し考えてから。

付け加えた。

「ただ。」

「たまに。」

「音を外されます。」

「最後のはいわなくていい。」

一瞬。

静かになって。

みんなが笑った。

「事実です。」

「そこは。」

「黙っててくれ。」

タケハラが。

肩を震わせている。

「隊長。」

「そこは自信持たないんですね♪」

「持てるか。」



ラリサが。

小さく微笑んだ。

「楽器も。」

「特別なのですの?」

「まあ。」

俺は。

少し考える。

「ニューヨークモデルだから。」

「……。」

コン・ブリオが。

黙って俺を見る。

「何だよ。」

「いや。」

「何でもない。」

「?」



ラリサは。

それ以上。

追及しなかった。

代わりに。

ドルチェへ。

目を向ける。

「それと。」

「右翼には。」

「ずいぶん。」

「柔らかな防御の音も。」

「ありましたわね。」

ドルチェが。

目を細める。

「あら。」

「そこまで。」

「分かりましたの?」

「高台から。」

「何度か。」

「見えましたわ。」

ラリサが。

手を軽く広げる。

「激しい音を。」

「正面から。」

「受け止めるのではなく。」

「包むように。」

「流していた。」

ドルチェが。

柔らかく笑う。

「ウフフっ。」

「わたくしの。」

「得意分野ですの。」



タケハラが。

頬杖をつく。

「でも。」

「右翼って。」

「本当に。」

「派手でしたよねー。」

「そうか?」

「そうですよ。」

「隊長の音響弾は。」

「山ンバ軍の本陣に届くし。」

「ドルチェさんは。」

「火点を潰そうとした。」

「あの山ンバ軍の猛攻を。」

「受け流すし。」

「リアルダさんは。」

「ずっと何か叫んでるし。」

リアルダが。

すぐに反応する。

「情報伝達です。」

「叫んでいたわけでは。」

「ありません。」

「聞こえてましたよー。」

「必要な音量です。」

「はいはい♪」

「タケハラ様。」

「はい。」



ラリサが。

楽しそうに。

そのやり取りを見ている。

やがて。

視線を。

コン・ブリオへ戻した。

「一つ。」

「気になっていることが。」

「何でしょう。」

「防衛隊右翼から。」

「遠くへ届く音がある。」

「それは。」

「分かりました。」

一拍。

「でも。」

「どうして。」

ラリサが。

コン・ブリオを見る。

「その音を。」

「あの時。」

「撃たせたのです?」

「……。」

店の空気が。

少しだけ変わった。

俺も。

コン・ブリオを見る。

そういえば。

俺も。

ちゃんと聞いていない。

コン・ブリオは。

グラスへ目を落とす。

そして。

いつものように。

静かに笑った。

「ふふっ。」


第123話『理由』
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2026年08月19日