第71話『浜田駐屯地』
第71話『浜田駐屯地』
山道を下るたび、潮の香りが濃くなっていく。
窓を開けると、やわらかな潮風が車内を吹き抜けた。
「海コン!」
後部座席で、カプリッチョが身を乗り出す。
「落ちるなよ。」
「大丈夫コン!」
リアルダが前を向いたまま告げる。
「レッド様。」
「まもなく浜田駐屯地です。」
「ああ。」
山並みが途切れる。
目の前いっぱいに、日本海が広がった。
陽射しを受けた海が、静かにきらめいている。
◇
車が浜田駐屯地へ入る。
すでに隊員たちが整列していた。
「気をつけ!」
号令が響く。
一斉に敬礼が揃う。
俺も敬礼を返した。
先頭の男が一歩前へ出る。
日に焼けた肌。
潮風に鍛えられた体つき。
胸には軍曹の階級章が光っている。
「沿岸方面第一トランペット遊撃隊隊長、ハマダ軍曹です。」
「山陰西部方面第一トランペット遊撃隊隊長、レッドです。」
固い握手を交わす。
「ようこそ浜田へ。」
「今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
ハマダ軍曹が後ろを振り返った。
「紹介します。」
「沿岸方面第一トランペット遊撃隊です。」
一人の女性が一歩前へ出る。
「情報士、ミスミです。」
リアルダも一礼した。
「山陰支部情報士、リアルダです。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
短く笑みを交わす。
その後ろには音響士。
さらに後方には、地元ボランティアの音響団が整列していた。
ハマダ軍曹がミスミへ目を向ける。
「海では、情報士が戦いの目になります。」
「風向き。」
「潮の流れ。」
「岩礁の反響。」
「戦況は刻一刻と変わります。」
ミスミが静かにうなずく。
「遊撃隊の一発を生かすのが、私の役目です。」
リアルダは小さく息をついた。
「勉強になります。」
ハマダ軍曹が砂浜へ向き直る。
「では、始めましょう。」
「海岸プログラムを開始します。」
潮風が、二つの遊撃隊の間を静かに吹き抜けた。
第72話『海岸プログラム』
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