第72話『海岸プログラム』

第72話『海岸プログラム』


浜田の海は穏やかだった。

波が岩礁を打ち、白い飛沫が静かに消えていく。

俺たちは砂浜へ横一列に並んだ。

「それでは、海岸プログラムを始めます。」

ハマダ軍曹が一歩前へ出る。

「海での戦いは、山とは別物です。」

「まずは一発、ご覧ください。」

トランペットが静かに構えられる。

次の瞬間。

音響弾が岩礁へ当たり、鋭く反射した。

乾いた音が沖へ伸びていく。

「見事だ……。」

思わず声が漏れた。

ハマダ軍曹が穏やかに笑う。

「岩礁は海の盾です。」

「反響を利用しなければ、音は海へ逃げます。」

リアルダとミスミが、それぞれ端末へ目を落とす。

「風速、毎秒六メートル。」

「潮位、平常。」

「反響率、良好です。」

ミスミが顔を上げた。

「隊長。」

「今なら撃てます。」

「分かった。」

ハマダ軍曹が俺を見る。

「レッド隊長。」

「お願いします。」

俺はトランペットを構えた。

息を吸う。

放たれた音響弾は、途中でふわりと流れた。

岩礁をかすめ、そのまま海へ吸い込まれる。

「……難しいな。」

「海ですから。」

ハマダ軍曹は穏やかに答えた。

「普通の感覚で撃てば、風が持っていきます。」

リアルダが端末へ視線を落とした。

「レッド様。」

「補正します。」

「右へ二度。」

「仰角、一度。」

その横で、ミスミもうなずく。

「同じです。」

二人の情報士が顔を見合わせ、小さく笑った。

「もう一度。」

俺はトランペットを構える。

「右へ二度。」

「一度、上。」

リアルダの声だけを聞く。

息を吹き込む。

音響弾が岩礁へ当たる。

乾いた反響音。

沖の標的へ、まっすぐ伸びていった。

命中。

アクセントが拳を握る。

「さすが隊長!」

ハマダ軍曹が静かにうなずいた。

「海では、一人では戦えません。」

「情報士。」

「音響士。」

「音響団。」

「全員で、一発を届ける。」

俺はトランペットを下ろした。

山とは違う。

だが、その一発には同じものがあった。

仲間を信じること。

潮風が静かに吹き抜ける。

波は何事もなかったように、岩礁へ寄せていた。


第73話『ウルセンジャー』
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2026年07月14日