第73話『ウルセンジャー』

第73話『ウルセンジャー』


海岸プログラムが一段落した。

隊員たちは楽器を手入れし、それぞれ潮風を楽しんでいる。

「塩が残ると、あとが大変ですよ。」

ハマダ軍曹が笑いながら布を動かす。

「海しか知りませんから。」

俺もケースを開き、ニューヨークモデルを丁寧に拭いた。

ラッカー仕上げのベルが、陽射しを受けて黄金色に輝く。

その時だった。

「あっ!」

砂浜から子どもの声が聞こえた。

「ウルセンジャーだ!」

一人が叫ぶと、あっという間だった。

「レッド隊長!」

「ブリランテちゃん!」

「がんばって!」

子どもたちが砂浜を駆けてくる。

ブリランテが嬉しそうに手を振った。

「こんにちは!」

「こんにちはー!」

元気な声が返ってくる。

俺も軽く手を振る。

「元気そうだな。」

「うん!」

「今日も悪のみなさんをやっつけるの?」

思わず苦笑した。

「今日は合同訓練だ。」

「訓練?」

「海で戦う勉強だよ。」

子どもたちは目を輝かせる。

「ウルセンジャーも勉強するんだ!」

「するさ。」

「毎日な。」

ハマダ軍曹が小さく笑った。

「この子たち、西部方面第一遊撃隊の大ファンなんですよ。」

「ここまでですか。」

「ええ。」

「運動会の会戦以来、ずっと。」

砂浜には笑顔が広がっていた。

少し離れた場所で、その様子を見ていたカプリッチョが首をかしげる。

「ウルセンジャー?」

近くにいた男の子が胸を張る。

「知らないの?」

「正義の音で悪を倒すヒーローだよ!」

「みんなを守ってくれるんだ!」

カプリッチョは腕を組んだ。

「ふーん……。」

金色の尻尾が、ゆっくり揺れる。

その目が、いたずらを思いついたように細くなった。

「……おもしろそうコン。」

俺はその横顔を見て、小さく息をついた。

何かを思いついた時の名代様は、大抵ろくなことにならない。

潮騒だけが、静かに浜辺へ寄せては返していた。


第74話『名代の教え』
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2026年07月14日