第80話『渚の意見交換会』

第80話『渚の意見交換会』


潮風が、穏やかに砂浜を吹き抜ける。

さっきまで戦場だった浜辺には、炭火の香りが漂っていた。

ハマダ軍曹が俺たちの前へ立つ。

「皆さま、本日はお疲れさまでした。」

深く一礼する。

「漁師さんから、海産物をたくさん頂いております。」

「ささやかではありますが、意見交換会の場を設けさせていただきました。」

隊員たちの表情が、ぱっと明るくなった。

俺は小さく笑う。

「みんな、ご苦労だった。」

「せっかくの海だ。」

「満喫してくれ。」

「了解!」

元気な返事が浜辺へ響いた。



「やったっス!」

スタッカートが浮き輪を抱え、海へ駆け出す。

アクセントが肩をすくめた。

「お前、益田育ちなのに浮き輪持参かよ。」

「安全第一っス!」

「隊長様!」

ブリランテが目を輝かせる。

「泳いでもよろしいですか?」

「沖へ行かなければな。」

「はい!」

返事をすると、嬉しそうに駆け出していった。



「きれい……。」

ドルチェは波打ち際へしゃがみ込み、小さな貝殻を拾っている。

「素敵な貝殻がたくさんありますねぇ。」

その横ではリアルダが少し照れくさそうに笑った。

「実は……。」

「私も水着、持ってきました。」

「久しぶりの海です。」

ミスミが微笑む。

「浜田の海は、気持ちいいですよ。」

二人は笑いながら波打ち際へ歩いていった。



「こっちは任せてください!」

ペザンテが黙々と炭を起こしている。

その手際は見事だった。

レガートが笑う。

「おいおい。」

「焼く前に食べるなよ。」

ペザンテは黙って串を戻す。

周りから笑いが起こった。



エネルジコは荷物を見回していた。

「何か必要なものがあれば、すぐ調達してきます!」

「頼もしいですわね。」

カンタービレ軍曹が小さく微笑む。

その隣ではソステヌートが、沿岸方面の音響士たちへ熱心に質問していた。

「海岸での隊形変更は、どのような基準で?」

「なるほど……。」

「勉強になります。」

沿岸方面の隊員たちも、嬉しそうに答えている。

これもまた、立派な合同訓練だった。



「皆さん。」

カンタービレ軍曹が静かに声を掛ける。

「羽目を外し過ぎませんように。」

そう言いながらも、その視線は何度も海へ向いていた。

俺は思わず苦笑する。

軍曹が軍服の下へ水着を着込んでいることには、もう気付いている。

……知らないふりをしておこう。



「カプちゃーん!」

子どもたちが駆け寄る。

「遊ぶコン!」

カプリッチョが元気よく飛び跳ねた。

「今日は、みんなで楽しむコン!」

「わーい!」

砂浜いっぱいに笑い声が広がる。

その様子を見ていたハマダ軍曹が笑顔で声を掛けた。

「たくさん用意しております。」

「海産物も、かき氷もありますよ。」

「やったコン!」

カプリッチョの耳がぴんと立つ。

「今日は頭がキーンになっても気にしないコン!」

その一言に、俺たちは顔を見合わせた。

そして。

「あはははは!」

笑い声が、青い日本海へいつまでも響いていた。


第81話『帰路』
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2026年07月14日