第80話『渚の意見交換会』
第80話『渚の意見交換会』
潮風が、穏やかに砂浜を吹き抜ける。
さっきまで戦場だった浜辺には、炭火の香りが漂っていた。
ハマダ軍曹が俺たちの前へ立つ。
「皆さま、本日はお疲れさまでした。」
深く一礼する。
「漁師さんから、海産物をたくさん頂いております。」
「ささやかではありますが、意見交換会の場を設けさせていただきました。」
隊員たちの表情が、ぱっと明るくなった。
俺は小さく笑う。
「みんな、ご苦労だった。」
「せっかくの海だ。」
「満喫してくれ。」
「了解!」
元気な返事が浜辺へ響いた。
◇
「やったっス!」
スタッカートが浮き輪を抱え、海へ駆け出す。
アクセントが肩をすくめた。
「お前、益田育ちなのに浮き輪持参かよ。」
「安全第一っス!」
「隊長様!」
ブリランテが目を輝かせる。
「泳いでもよろしいですか?」
「沖へ行かなければな。」
「はい!」
返事をすると、嬉しそうに駆け出していった。
◇
「きれい……。」
ドルチェは波打ち際へしゃがみ込み、小さな貝殻を拾っている。
「素敵な貝殻がたくさんありますねぇ。」
その横ではリアルダが少し照れくさそうに笑った。
「実は……。」
「私も水着、持ってきました。」
「久しぶりの海です。」
ミスミが微笑む。
「浜田の海は、気持ちいいですよ。」
二人は笑いながら波打ち際へ歩いていった。
◇
「こっちは任せてください!」
ペザンテが黙々と炭を起こしている。
その手際は見事だった。
レガートが笑う。
「おいおい。」
「焼く前に食べるなよ。」
ペザンテは黙って串を戻す。
周りから笑いが起こった。
◇
エネルジコは荷物を見回していた。
「何か必要なものがあれば、すぐ調達してきます!」
「頼もしいですわね。」
カンタービレ軍曹が小さく微笑む。
その隣ではソステヌートが、沿岸方面の音響士たちへ熱心に質問していた。
「海岸での隊形変更は、どのような基準で?」
「なるほど……。」
「勉強になります。」
沿岸方面の隊員たちも、嬉しそうに答えている。
これもまた、立派な合同訓練だった。
◇
「皆さん。」
カンタービレ軍曹が静かに声を掛ける。
「羽目を外し過ぎませんように。」
そう言いながらも、その視線は何度も海へ向いていた。
俺は思わず苦笑する。
軍曹が軍服の下へ水着を着込んでいることには、もう気付いている。
……知らないふりをしておこう。
◇
「カプちゃーん!」
子どもたちが駆け寄る。
「遊ぶコン!」
カプリッチョが元気よく飛び跳ねた。
「今日は、みんなで楽しむコン!」
「わーい!」
砂浜いっぱいに笑い声が広がる。
その様子を見ていたハマダ軍曹が笑顔で声を掛けた。
「たくさん用意しております。」
「海産物も、かき氷もありますよ。」
「やったコン!」
カプリッチョの耳がぴんと立つ。
「今日は頭がキーンになっても気にしないコン!」
その一言に、俺たちは顔を見合わせた。
そして。
「あはははは!」
笑い声が、青い日本海へいつまでも響いていた。
第81話『帰路』
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