第16話『ラミア』

第16話『ラミア』


鳥が。

一斉に飛び立った。

「来ます!」

道路の先。

一人の女が歩いてきた。

長い青髪。

黒と紫の衣装。

まるで。

散歩でもしているみたいに。

「あら。」

足を止める。

「こんにちは。」

「…………。」

ブリランテが小さく頭を下げた。

「……こんにちはですよー。」

「おい。」

女が笑った。

その周囲を。

歪んだ♪が漂っている。

リアルダの表情が変わる。

「ラミアです。」

「アラクネ遠征軍の副官……!」

カンタービレ軍曹が目を細めた。

「……随分、派手ですわね。」

「そう?」

「隠す必要なんてないでしょう?」

「お供は連れてないのかしら?」

「必要ある?」

ラミアは笑った。

俺はベルを向ける。

「止まれ。」

「あら。」

ラミアが足を止めた。

「私は、ただ散歩してるだけよ。」

「調査をかねてね。」

手のひらの上で。

紫色の♪が揺れる。

「でも……。」

ウフっ♪

「ちょっと遊んであげても。」

「いいかしらね。」

紫色の♪が。

一気に集まった。

「左翼、防御弾幕!」

低音が重なる。

レガート。

ドルチェ。

エネルジコ。

♪が広がり。

五線が結ばれる。

ズゥンッ!!

防御陣が大きく歪んだ。

「くっ……!」

その間に。

右翼が。

ラミアの背後へ回る。

ソステヌートが放つ。

ヒュンッ!

ラミアが左を向いた。

背後。

「今ですよー!」

ブリランテ。

「タカタカタカタカッ!」

ヒュン!

ヒュン!

ヒュン!

ラミアが振り返る。

その瞬間。

「……ソコ。」

グラヴィオーソ。

ヒュンッ!

青い髪が。

数本、宙を舞った。

「…………。」

ラミアの笑みが消える。

「……鬱陶しい。」

手のひらを上げた。

ズゥンッ!!

防御陣が揺れる。

ガタガタッ!

住宅の窓が震えた。

もう一発。

ズゥンッ!!

バキンッ!

道路に亀裂が走る。

瓦が一枚。

道路へ落ちた。

カシャン。

俺はラミアを見る。

「軍曹。」

「はい。」

「左翼で引きつけてくれ。」

「どのくらいですの?」

俺は。

ニューヨークモデルを握り直した。

「三秒。」

「三秒だけでいい。」

カンタービレ軍曹がベルを上げる。

「皆さん。」

「参りますわよ。」

「了解!」


第17話『隙を作れ』
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2026年07月04日