第141話『山陰の守護神』

第141話『山陰の守護神』


「……もう」

唇をかみしめる。

「打つ手がない……」

その時。

「ワハハハハハハハ!!」

「!?」

「お前たち若造ども!」

「まだ川遊びの途中じゃ!」

「勝手にあきらめるでないわ!」

「……え?」

「フンっ!」

ボォォォォンッ!!

「うわっ!」

「きゃあっ!」

凄まじい低音。

ヒノエウマの衆が。

まとめて吹き飛んだ。

俺達まで。

河川敷を転がる。

「な、何だ……」

顔を上げる。

土手の上。

巨大なチューバ。

その横から。

小さな顔が覗いていた。

「……」

チューバが。

喋っている?

いや。

「……閣下だ」

「誰が小学生じゃー!」

「言ってない!」

「フンっ!」

ボォォォォンッ!!

「うわああっ!」

また。

吹き飛ぶ。

「本日!」

リアルダが転がりながら叫ぶ。

「二回目ですー!」

◇

グランディオーソが。

土手を下りてくる。

「閣下!」

カンタービレが。

身体を起こした。

「軍団長の救援へ」

「向かわれたのでは?」

「フンっ」

「たまには奴も」

「痛い目に遭った方がよかろう」

「……」

グランディオーソが。

ヒノエウマの衆を見る。

巨大なチューバを構えた。

ボォォォォ――。

白い♪が。

次々と浮かぶ。

五線が走る。

一つ。

二つ。

また一つ。

大小の円が。

次々と咲いていく。

河川敷いっぱいに。

白い防御弾幕が広がった。

「……」

リアルダが見上げる。

「綺麗です……」

ブリランテも。

目を輝かせた。

「花火大会ですよー!」

◇

「使い様……」

火馬が立ち上がる。

送り提灯も。

構え直した。

「我々は」

「まだやれます」

ヒュン!

ヒュン!

ヒュン!

音響弾が。

一斉に放たれる。

ドン!

ドン!

ドゴォォォーン!!

白い防御弾幕が。

全て受け止めた。

「……」

俺は。

言葉を失う。

「コレが……」

「閣下の本気……」

タケハラも。

呆然と見上げる。

「本当に……」

「上級使いなの……?」

◇

「使い様」

影踏みが。

静かに告げる。

「先ほどから」

「あの者に術を仕掛けておりますが……」

「……」

「全く効きません」

一拍。

「お下知を」

「……」

ヒノエウマの使いの額に。

汗が浮かんだ。

無数の白い防御弾幕は。

まだ。

咲いたまま。

その中心。

グランディオーソが。

大きく息を吸った。

「……!」

巨大な♪のかたまりが。

大きなベルへ。

収束していく。

グランディオーソが。

ベルを上へ向けた。

「フンっ!」

ボォォォォォンッ!!

空砲。

空気が震える。

川面が。

大きく波打った。

「……!」

「なっ……」

ヒノエウマの衆が。

驚愕する。

「ワハハハハハハハ!!」

グランディオーソが笑う。

「貴様らー!」

「山陰と広島のエースを」

「ここまで追い込んだんじゃ!」

「この辺で」

「よかろー!」

「……俺達が?」

思わず呟く。

「他に誰がいるのよ!」

「いや……」

ヒノエウマの使いは。

グランディオーソを見つめる。

やがて。

構えていた手を。

ゆっくり下ろした。

「なぜ――」

「……」

「なぜ」

「我々を見逃すんです?」


第142話『川遊び』
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2026年08月29日