第138話『私達と違って』

第138話『私達と違って』


高津川。

カンタービレが左翼を見る。

「ドルチェ、防壁を」

「分かってますわ」

淡いピンクの防御弾幕が開く。

ヒノエウマの使いが手を上げた。

「参ります」

ヒュン!

ドン!

防壁が弾く。

「右翼――」

トランペットを構える。

「俺についてこい!」

「了解!」

「行くっス!」

ブリランテが前へ出る。

「牽制するですよー!」

タカタカタカタカ!

ドドドドドド!

敵が散る。

「リアルダ!」

「射線、共有します!」

「アクセント!」

「了解!」

ヒュン!

ドン!

「スタッカート!」

「行くっス!」

ヒュン!

ドン!

アクセントが息を整える。

「前にコイツらと戦った時より……」

スタッカートも構え直す。

「身体が動くっス」

「ああ」

鬼住の顔が浮かんだ。

「おっちゃん達の方が強かったからな」

◇

左翼。

「チャッピー!」

「ピピ! 右カラ来マス!」

「……ソコ」

ヒュン!

ドン!

グラヴィオーソの狙撃が入る。

ソステヌートが空を見る。

「風向きが変わりました」

「ピピ!」

チャッピーが補正する。

「……ソコ」

ヒュン!

敵が身をかわした。

「……」

グラヴィオーソの眉が。

わずかに動く。

右翼。

「まだまだですよー!」

タカタカタカタカ!

ドドドドドド!

「今だ!」

ヒュン!

ドン!

一体がよろめく。

「よし!」

ヒノエウマの使いが。

こちらを見る。

「……貴方達」

「?」

「愛されているのね」

ヒュン!

かわす。

「ウルセンジャー」

ヒュン!

「ウルセンジャーって」

「何の話だ!」

一瞬。

女の表情が沈んだ。

「私達と違って……」

「……?」

影踏みが杖を上げる。

「フフフっ」

ヒュン!

ヒュン!

「ドルチェ!」

ドン!

ドン!

防壁が揺れる。

「まだ、大丈夫ですわ」

「チャッピー!」

「ピピピ!」

「右!」

アクセントが振り向く。

ヒュン!

ドゴォォォーン!

「ぐっ!」

「アクセント!」

スタッカートが援護に入る。

「下がるっス!」

反対側。

ヒュン!

「隊長!」

ペザンテが前へ出る。

ドン!

「っ……!」

「まだ、いけます」

「……」

何か。

変だ。

◇

ブリランテが構える。

「牽制するですよー!」

タカタカタカタカ!

今度は。

敵が散らない。

「えっ?」

歪んだ防壁が開く。

ドドドドドド!

その陰から。

ヒュン!

「ブリランテ!」

ドゴォォォーン!

「きゃっ!」

河川敷を転がる。

「だ、大丈夫ですよー……!」

ソステヌートが眼鏡に手をかけた。

「対応されています」

「……」

左翼。

ヒュン!

ヒュン!

左右から。

ドルチェの防壁が叩かれる。

ドン!

ドン!

♪が砕けた。

「まだですわ!」

すぐに修復する。

その瞬間。

反対側。

ヒュン!

ドン!

五線が切れる。

カンタービレの表情が変わった。

「修復する場所まで……」

「……ソコ」

ヒュン!

外れる。

もう一度。

「……ソコ」

ヒュン!

また。

ソステヌートが呟く。

「射線も読まれています」

「……」

ヒノエウマの使いは。

静かにこちらを見ていた。

◇

「なら――」

俺はトランペットを構える。

「みんな!」

息を吸う。

「三秒――」

使いの目が。

俺を捉えた。

「――させません」

「!?」

ヒュン!

かわす。

すぐに。

反対側。

ヒュン!

「くっ!」

集まり始めた。

橙色の小鳥が散った。

「……!」

もう一度。

構える。

一羽。

二羽。

ヒュン!

ドン!

「ぐっ!」

また。

散る。

三秒どころか。

一秒も作らせてくれない。

「……そうか」

使いを見る。

「広島と――」

一拍。

「前の戦いで」

「俺達の戦い方を……」

「……」

使いは答えない。

ただ。

小さく微笑んだ。

◇

ヒュン!

ヒュン!

ドン!

ドン!

防壁が軋む。

「左翼!」

カンタービレが叫ぶ。

「和音を崩さないで!」

「はい……!」

「ピピ!」

ブリランテが。

唇を拭う。

「まだ……」

トランペットを構える。

「まだ、やれるですよー!」

ヒノエウマの使いが。

一歩前へ出た。

「良い部隊ですね」

「……」

後ろの五体を見る。

その目が。

少しだけ柔らかくなる。

「だからこそ」

「この子達にも――」

一拍。

「負けさせるわけにはいきません」

影踏みが笑う。

「フフフっ」

杖を上げた。

「そろそろ」

「お終いにしますか」

六体が構える。

ヒュン!

ヒュン!

ヒュン!

「防げ!」

ドン!

ドン!

ドゴォォォーン!!

耳の奥が鳴る。

唇が痺れる。

「隊長!」

「構うな!」

「リアルダ!」

「計算中です!」

「チャッピー!」

「ピ……!」

顔を上げる。

土煙の向こう。

巫女姿の女性が。

静かに。

俺達を見ていた。


第139話『レッド君♪』
https://www.c-able.ne.jp/~y-info/posts/blog407.html

ウルセンジャー小説ガイド
https://www.c-able.ne.jp/~y-info/contact1.html

2026年08月29日