第66話『女子会』

第66話『女子会』


益田駅前。

駅前通りにあるレストラン。

窓際の席では、三人の女性が楽しそうに食事をしていた。

「美味しいですね〜。」

ドルチェが嬉しそうに笑う。

リアルダも微笑みながら頷いた。

「はい。」

「久しぶりに、ゆっくり食事ができます。」

グラヴィオーソは紅茶を口へ運ぶ。

「たまには、こういう時間も悪くないわ。」

戦場では見せない。

穏やかな時間だった。



「そういえば〜。」

ドルチェがフォークを置いた。

「運動会の会戦。」

「終わったあとなんですけど〜。」

リアルダを見る。

「レッド隊長の手。」

「ずっと握ってましたよね〜。」

リアルダの手が止まる。

「……。」

グラヴィオーソも思い出したように笑う。

「そうだったわね。」

「離そうとしなかった。」

ドルチェは悪戯っぽく身を乗り出した。

「もしかして〜。」

「レッド隊長のこと、好きなんですか〜?」

リアルダは少しだけ目を丸くした。

そして。

困ったように笑う。

「違います。」

静かな声だった。

「私は……。」

少しだけ窓の外を見る。

駅前を歩く人たち。

笑い声。

平和な夜。

「北方戦線では。」

その言葉に。

二人の表情も静かになる。

「朝まで一緒に話していた方が。」

「夕方には、帰ってこないことがあります。」

ドルチェも。

グラヴィオーソも。

何も言わない。

「運動会の会戦では。」

「皆様。」

「生きて帰ってきてくださいました。」

リアルダは少し照れながら笑う。

「本当に嬉しくて。」

「……つい。」

「手を握ってしまいました。」

静かな時間が流れる。

やがて。

ドルチェが優しく笑った。

「リアルダさんらしいですね〜。」

リアルダも笑う。

「音術師様は。」

「国家の財産ですから。」

その口癖は。

いつもと同じなのに。

今日は少しだけ優しく聞こえた。



「ところで〜。」

ドルチェが空気を変えるように笑う。

「トランペット隊の男の人たちって。」

「浮いた話、全然ありませんよね〜。」

グラヴィオーソが苦笑した。

「確かに。」

「レッド隊長は隊長業で忙しいし。」

「ソステヌートは教範ばかり読んでる。」

「ペザンテは食べることしか考えてない。」

ドルチェは吹き出した。

「本当ですね〜。」

リアルダも小さく笑う。

「皆様。」

「任務に真面目ですから。」

「恋愛どころではないのでしょう。」

「もったいないわね。」

グラヴィオーソが肩をすくめる。

「悪い人たちじゃないのに。」

「そうですね〜。」

ドルチェが頷いた。

「特にレッド隊長は。」

「優しいですし〜。」

リアルダは静かに微笑む。

「はい。」

「とても。」

その笑顔に。

恋愛感情はなかった。

尊敬。

信頼。

そして。

無事に帰ってきてくれることへの願い。

それだけだった。



食事を終え。

三人は店を出る。

夜風が心地よい。

「このまま帰るには。」

ドルチェが伸びをした。

「少し早いですね〜。」

「どこか寄る?」

グラヴィオーソが尋ねる。

ドルチェは思い出したように笑う。

「そうだ〜。」

「この近くに。」

「ミリタリー好きが集まる、隠れ家みたいなバーがあるって聞いたんです〜。」

「バー?」

リアルダが首を傾げる。

「ええ。」

グラヴィオーソが頷いた。

「私も聞いたことがある。」

「駅裏にある、小さなお店。」

「名前は……。」

少し考える。

そして。

「あった。」

「レギオン。」

リアルダはその名前を静かに復唱した。

「レギオン……。」

「少しだけ。」

ドルチェが笑う。

「寄ってみませんか〜。」

三人は。

駅裏へ続く細い路地を歩き始めた。

まだ知らない。

その小さなバーで。

思いもよらない"夜間訓練"の続きが待っていることを。


第67話『情報士乱入』
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2026年07月06日