第140話『ツヨイ』

第140話『ツヨイ』


「誰が太いのよ!」

「いや」

「音が――」

「太くありません!」

女は。

俺の手を引いた。

「タケハラです!」

「タ、ケ、ハ、ラ!」

「……はい」

「よろしい!」

タケハラが振り返る。

白い士官制服。

トランペットを構えた。

「さて――」

大きく息を吸う。

ベルの周囲へ。

太い♪が集まる。

「お返しね」

ヒュン――!

ドゴォォォォン!!

「ぐっ!」

一体が。

大きく吹き飛んだ。

「おおー!」

ブリランテが目を丸くする。

「ふっといですよー!」

「太くない!」

「音の話ですよー!」

「却下!」

「厳しいな……」

◇

ヒノエウマの使いが。

静かに手を上げた。

五体が散る。

右。

左。

距離も開く。

「……?」

タケハラが構えた。

大きく息を吸う。

その瞬間。

ヒュン!

「っ!」

かわす。

集まり始めた♪が散った。

反対側。

ヒュン!

「きゃっ!」

肩をかすめる。

「タケハラ!」

「平気!」

もう一度。

大きく息を吸う。

ヒュン!

「っ!」

また。

撃てない。

「……何、コレ」

タケハラの笑みが消えた。

◇

右から。

ヒュン!

かわす。

左から。

ヒュン!

「っ!」

「タケハラ様!」

「後ろです!」

リアルダが叫ぶ。

ヒュン!

「きゃっ……!」

脇腹をかすめる。

タケハラが。

一歩よろめいた。

「……コイツら」

息を整える。

顔を上げた。

「ツヨイ」

◇

「タケハラ!」

「分かってる!」

トランペットを構える。

「一発――」

一歩。

踏み込む。

「入れればいいんでしょ!」

ヒュン!

「っ!」

かわす。

走る。

向きを変える。

さらに。

ヒュン!

「しつこい!」

その時。

一瞬だけ。

射線が開いた。

「今!」

大きく息を吸う。

太い♪が。

ベルの周囲へ集まる。

「放つ!」

ヒュン――――!!

ドゴォォォォォォン!!!

河川敷が震える。

土煙が上がった。

「……!」

その向こう。

ヒュン!

「えっ」

ドゴォォォーン!!

「キャーッ!!」

タケハラが。

大きく吹き飛んだ。

「タケハラ!」

河川敷へ。

叩きつけられる。

「っ……」

起き上がろうとする。

だが。

身体が動かない。

絶望という空気が。

戦場を満たしはじめた。


第141話『山陰の守護神』
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2026年08月29日