第22話『君が放った、あの一音』

第22話『君が放った、あの一音』


「……コン・ブリオ。」

俺がそう呟くと、青年は静かに微笑んだ。

「久しぶりだね。」

「レッド。」

そのまま右手を強く握る。

力強く。

それでいて、どこか震えるような握手だった。

「元気そうで安心した。」

「……まあな。」

「君のことは聞いていたよ。」

「山陰へ配属になったそうだね。」

「ああ。」

短いやり取り。

それだけなのに、店内の女性たちは羨ましそうな視線を送ってくる。

「ねぇ。」

「あの人、お知り合いなの?」

「すごい……。」

「士官学校のお友達かしら。」

ブリランテは隣で目をぱちぱちさせていた。

(隊長様……。)

(こんなイケメンと知り合いだったんだ……。)

リアルダも少し驚いた表情を浮かべている。

「レッド様。」

「士官学校のお友達ですか?」

「ああ。」

「同期だ。」

「同期!?」

二人の声が見事に重なった。

コン・ブリオはようやく二人へ視線を向ける。

「初めまして。」

「コン・ブリオです。」

静かに会釈する。

その仕草だけで、周囲から小さな歓声が上がる。

「きゃー!」

「紳士!」

「素敵!」

ブリランテは完全に目がハートになっていた。

「ボ、ボクはブリランテです!」

「よろしくお願いします!」

「私はリアルダです!」

「山陰支部で情報士をしています!」

「よろしく。」

コン・ブリオは優しく微笑んだ。

そして。

再び俺を見る。

……まだ手を握っている。

「……。」

「……。」

俺は苦笑した。

「コン・ブリオ。」

「そろそろ。」

「手を離してくれないか。」

「ん?」

彼は不思議そうな顔をした。

「失礼。」

そう言ってようやく手を離す。

ブリランテはリアルダの袖を引っ張った。

「リアルダさん……。」

「はい?」

「今の見ました?」

「見ました。」

「……。」

二人は顔を見合わせる。

小声で。

「もしかして……。」

「はい?」

「そういう関係ですか?」

「えぇぇぇっ!?」

思わず吹き出しそうになる。

「違う。」

「断じて違う。」

「そうなんですか?」

「違う。」

俺が即答すると、

コン・ブリオだけが小さく笑った。

「ふふっ。」

その笑顔を見たブリランテは、

(余裕がある……。)

(やっぱり怪しい……。)

などと勝手に勘違いしている。

やれやれ。

昔から変わらない。

こいつは人をからかうのが好きなんだ。

店内の喧騒が少し落ち着いた頃。

コン・ブリオは静かに口を開いた。

「僕はね。」

「レッド。」

「卒業試験で。」

「君が放った、あの一音を忘れたことがない。」

その言葉に。

俺は思わず視線を逸らした。

「……大げさだ。」

「大げさじゃない。」

静かな声だった。

「君は覚えていないかもしれない。」

「でも。」

「僕は、一生忘れない。」

店内の空気が少しだけ変わる。

リアルダも。

ブリランテも。

その意味は分からない。

けれど。

この二人の間には、自分たちの知らない何かがある。

それだけは伝わってきた。

俺は照れくさそうに頭をかいた。

「そういう話は。」

「また今度にしてくれ。」

「そうだね。」

コン・ブリオも微笑む。

その瞬間だった。

――ビィィィィィィィッ!!

店内へ甲高い警報音が鳴り響く。

リアルダの表情が一変する。

耳元の通信機へ手を当てる。

「レッド様!」

「敵性反応です!」

「この建物の一階!」

「急速接近!」


コン・ブリオの笑みが静かに消えた。

店内へ緊張が走る。

次の瞬間。

入口のガラスが轟音とともに砕け散った。


第23話『B/Cランク会敵』
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2026年07月04日